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ループラインの軌跡  作者: リノ バークレー
38/72

7-3(38)

「ところで課長、お話って何ですか?」

「お~ そうだったそうだった」

「実は少し業務形態が変わる事になってな……以前はスタッフ 

全員でアイデアを出し合ってその度会議してたんだけど宮下くんが

来る来月からは小さなグループごとにアイデアを考え、それぞれ

プレゼンする方式に決まったんだ」

「そうなんですか」

「いやもちろん最終決定は全体会議に委ねられるんだが以前の

ままでは知育玩具にしても中々画期的であったり、目新しいものが

出なくってね、残念ながら」

「大変ですね」

「やっぱりみんなミスしたくないって言うか責任を取りたくない

からつい他人任せになったり無難なところで収めようとするん

だな、これが」

「へぇ~ そういうもんなんですかね。私にはちょっと分からない

ですけど」

「その点、宮下くんは以前ちょくちょく企画持ってウチの部署に顔

出してたでしょ」

「はい、その節はご迷惑お掛けして……、反省してます」

「いやいや別に責めてる訳じゃないんだ」

「あの後、柴田部長からこっぴどく叱られました」

「ハハッ、そっか~ まぁ確かにキミのあの行動は私もどうかなと

思ったよ実際。ウチのスタッフも各自企画、開発にそれなりの

プライドを持って業務に当たってるわけでそれをいきなり部署を

飛び越えて勝手に企画や商品サンプル持って来られたら

いい気はしないの、分かるよね」

「はい、出すぎたまねしてすみませんでした」

「ごめんごめん、つい説教くさくなっちゃって」

「いえ全て私が悪いんですから」

「ところがね宮下くん、ウチの部長がキミのこと見てたらしく、

キミの周りを気にぜず型に(はま)らない行動がえらく気に入った

ようで今回の移動に(つな)がったんだ」

「えぇ―― そうだったんですか」

「だから来月部長に会ったらお礼言っときな」

「ハイ!」

「それと…… 既に各グループのメンバーは決定済みでね。

宮下くんには一応グループリーダーとして頑張ってもらい

たいんだがやってくれるね」

「えっ! リーダ― 私がですか?」

「そう、キミがリーダー」

「私でいいんですか?」

「あまり深く考えなくていいよ、たまたまグループ内でキミが

年長さんだったから」

「…………」(な~んだ、そういう事か)

「どうかした?」

「いえなんでもないです」

「とにかくキミには期待してるんだから」

「あ、ありがとうございます! 命一杯頑張らせて頂きます」


 その後僕は課長とお別れし、足元が少しふらつくほど酒に酔った

状態ながらも上機嫌でいつもの電車に乗り込んだ。


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