ファイの思い
一応ここで一旦終わりにします。
リョージは冒険者である。
前世はファンタジーなゲームが好きな普通の人だった。
それが、目覚めてみたらファンタジーな世界の住人になっていたのだ。
前世の記憶が戻ると、
リョージは混乱した。
新しい自分と、昔の自分の間で自我が揺れた。
それまで仲の良かった家族とも疎遠になり、一人部屋に引きこもった。
そんななか、リョージが縋ったのが冒険者という存在だった。
自分がかつて好きだったゲーム。
それは剣と魔法の冒険の世界。
あれと同じだと考えることで、
リョージは前世と今世の自分を統合することに成功したのだ。
とはいえ、まだリョージは不安定であった。
ゲームになぞらえて行動することで自分を守っていた。
ソロプレイをしていたのにもそういう意味があった。
そんなことなど知らない周囲は、
ただただリョージを否定した。
若気の至りだと一蹴した。
それは、優しさでもあったのだけど、
リョージはますます意固地になっていった。
そんななか、ただ一人味方でいたのがファイであった。
ファイは、当初からリョージのやりたいようにさせていた。
ソロでやっていくのに必要そうな知識を与え、
サポートし続けた。
そのおかげで、ある意味世間知らずのリョージはこれまで生き残って来られたのだ。
リョージは、理解者に出会ったことを感謝していた。
そして、ファイに対して絶対的な信頼も抱き始めている。
ファイの行動の裏も知らずに。
「…リョージさん…」
眠るリョージを見てファイは思う。
ここまで、長かった。
最初にリョージを見たときに、これは運命だと思った。
人間に、いや、
世界に興味など持っていなかった。
そんなファイが、初めて抱いた感情。
ファイは、自分の持てるすべての力を使って、
リョージに近づいた。
リョージに近づくものは排除してきたし、
これからもそれは変わらない。
そして、本番はこれからだと思う。
本人に気づかれないように、
ファイは一人画策する。
眠るリョージは、今ファイがどんな顔をしているのかなんて、
見られるはずがない。
リョージは、気付かないうちに、またファイによって囲われていくのであった。
区切りがいいので、一応いったん終わります。
話自体は続くので、書いたらまた読んでくださると嬉しいです。
ここまでお付き合いくださってありがとうございました。
途中ブクマが増えていったり、評価ポイント入れてくださったり、感想コメントいただいたりしたのも嬉しかったです。
今後ともお付き合いくださると嬉しいです。ありがとうございました。




