強羅ウサギとの攻防
俺は、冒険者だ。
冒険者は、冒険者ギルドに登録する。
登録すると、ギルドが発行するクエストを受けることができるのだ。
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「またお前か・・・」
「ブモォ・・・(モグモグ)」
本日3回目の強羅ウサギとの邂逅。
リョージは心が折れかけていた。
「うーん、やっぱりその辺の果物じゃだめなのか・・・?」
「ブッモ・・・?」
捕獲対象のドルーナである、ピッチちゃんの好物。
それは、高級食材『ロウメの実』だった。
好物で釣ろうと作戦を立てたリョージだったが。
ロウメの実を用意することは無理なので、
その辺の木に生っている果実で代用したものの、
罠にかかるのは強羅ウサギばかり。
それでも一度だけ、ドルーナがかかったこともあったのだ。
(対象でない野生のドルーナだったが)
だから、方向性は間違ってないと思うのだが・・・。
何かヒントはないかと、再びクエストの依頼書を見るリョージ。
「えーと・・・、『ピッチちゃんは、美人が好き』・・・。
だめだ、これじゃないな・・・。
他には・・・何か・・・、ああ、これか・・・」
『ピッチちゃんの大好物』の欄には、続きがあった。
「『魚肉ソーセージ』、ねえ・・・」
街でこれを読んでいれば、買ってこられたのだが、
それを今言っても仕方がない。
リョージが持っている食料は、携帯食料と水だけだ。
ソーセージなんて持ち合わせてはいない。
だから、最初から無視していた情報だったのだが。
「・・・ん? 待てよ・・・。肉・・・」
リョージの目の前には、
モシャモシャと果実をむさぼるモンスターがいる。
こちらのことを気にするでもなく、のんきに咀嚼している強羅うさぎ。
(・・・ゴクリ)
ここは、ドルーナの生息地で、強羅ウサギの巣もある。
もしかして、ドルーナって強羅ウサギを食べてるんじゃないか・・・?
そんな結論に至ったリョージ。
ぎらついた目で獲物を見つめる。
ふと、何かを感じたのか、頭を上げた強羅ウサギ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
両者の視線が交錯する。
見つめ合う人とモンスター。
「(・・・じりっ)」
にじり寄るリョージ。
「ウ゛・・・?」
後退する強羅ウサギ。
【戦闘BGM開始♪】
野生の強羅うさぎが飛び出してきた!
「と、とりゃぁーーーーー!!!」
リョージは強羅ウサギに飛びかかった。
「ブモォーーーーーーーー!!!」
強羅うさぎは、回転しながらそれを避ける。
「べふっ」
リョージは地面に激突!
顔面に10のダメージ!
「ヴモー・・・w」
強羅ウサギは、ニヒルな笑みを浮かべ、
その場を立ち去った・・・
~~~~~~~~~【戦闘BGM終了】
「くっそぉ!」
地面を叩いて悔しがるリョージ。
「い、生け捕りにしようと思うから難しいんだよなっ。
そうだ、俺が欲しいのは・・・・・・フフ、アハハハ!!!」
リョージは、空に向かって吼える。
「見てろよ!
次は仕留めてやるからな!」
疲れのせいでテンションがおかしくなっているリョージ。
「待ってろよ! 強羅うさぎ!!!」
すっかり本来の目的を忘れていたのだった。