聞いて欲しい
「げほっ…」
「リョージ先輩っ、大丈夫ですかっ?」
「あー、大丈夫…」
そう言って俺は笑ったけど、結構ダメージが大きい。
夜通し走ってきたこともあって、
ちょっと疲れたみたいだ。
「はぁ…、ちょっと休んでいい?」
あの蔓の化け物みたいなやつは、どうやらまた大人しくなったようだ。
だから、体力回復のために休みたい。
俺は、クロル君の返事も待たずにその場に横になった。
*******
俺は、持っていたヒールポーションをクロル君に渡す。
俺も飲んで、体力回復を待つ。
俺は、夜通し走りながら何本も飲んでたんだけど、
これって続けて飲むと効果が落ちるんだ。
でも、飲まないよりはましだから無理やり流しこむ。
俺もクロル君も何も喋らなかった。
それは、体力回復のためにはよかったのだけど、
あのモンスターのことを考えると眠ってしまうわけにはいかない。
そう思っていたら、ちょうどいいことに、
クロル君がぽつりと言った。
「…僕、先輩に謝らないといけないことがあるんです」
******
「え…?」
「…僕が冒険者になったのは、ちゃんとした肩書が欲しかったからでした」
冒険者になる人は、それぞれ色々な事情がある。
生活の為だったり、夢の為だったり。
そんななかで、肩書が得られるというものもある。
冒険者として成果を上げていくと、
それだけ信用度が上がるということである。
それが、社会的な地位を示すものとして身分証がわりにもなるのだ。
「僕の家は、母親と弟の3人家族でした。
父はいません。…いえ、いなかった、と言えばいいでしょうか」
俺が何かを言おうと口を開くと、クロル君はそれを制した。
「…先輩は休んでいてください。ただ、これは先輩に聞いて欲しいんです。
うるさかったら無理にとは言いませんが…」
そう言ったクロル君に、俺は言う。
「ちょっと寝そうだったから、話してくれてると助かる」
ちょっとおどけてそう言うと、
クロル君はつられてくすりと笑う。
「…そうですか。では、続けます」
クロル君は、ぽつりぽつりと話し始めた。




