ドルーナ捕獲作戦
「ほら、しっかりしろよ!」
「うわぁっ」
クロルに向かって、スネークヘッドが突っ込んでくる。
クロルは、傍にいたパーティーメンバーに腕を引かれ、
ギリギリのところでそれをかわした。
スネークヘッドは、クロルが居た場所に着地。
再び攻撃を仕掛けようとバネに力を溜める。
その一瞬を見のがさず、サイモンが攻撃。
スネークヘッドを切り捨てた。
「ったく、しょうがねえなあ」
「す、すみません・・・」
ゲラゲラと笑うメンバーたちに、クロルは気まずそうに視線を逸らす。
「おーい、そろそろ飯にしようぜ」
「おうよ!」
クロルは、サイモンたちのパーティーに入った。
討伐クエストを一緒に受けるためだ。
ガッシュたちと組んでいる間、一度サイモンに誘われたことがあった。
その時は断ったのだが、その腹いせにと暴行を加えられそうになったのだ。
そのときは、ガッシュが助けてくれた。
サイモンたちよりも、ガッシュの方がランクも実力も上だったのだ。
それから、サイモンは別の街に行っていたようで、
クロルと顔を合わせることは無かった。
ガッシュは、サイモンには近づかないようにと言っていた。
けれど、今はそれを気にする余裕もなかった。
それにガッシュは、もうここにはいないのだし・・・。
そういった経緯があって、クロルはサイモンを恐れていた。
だが、実際に一緒にパーティーを組んでみると、
クロルはサイモンが、ガッシュの言うような要注意人物だとは思えなかった。
「クロル、おめえもしっかり食えよ」
「は、はいっ」
それどころか、戦力にならない自分にも気を配ってくれる。
サイモンについていく者がいるのも分かる気がした。
自分はいい選択ができたんじゃないか、とクロルは内心ほっとしていたのだった。
******
夜。クロルが眠った後・・・
「サイモンさん、なんであんな奴入れたんですか?」
不満を隠そうともしない弟分を
怒るでもなく、サイモンは淡々と言う。
「そうさなあ、これが普通のクエストだったら違っただろうなぁ」
「え? どういうことです?」
「まあ、備えはし過ぎて困ることはねえってことよ」
「うーん、よく分かんないっすけど、
サイモンさんがいいってんなら、それでいいです!」
そんな会話が行われていたことを、寝ているクロルは当然知らない。
******
リョージは自分が仕掛けた罠の前で途方に暮れていた。
「またお前かよ・・・」
罠に入っていたのは、一匹の強羅ウサギだった。
この辺りは、強羅ウサギの生息地でもあるようだ。
「ほら、さっさと家に帰んな」
「ブモッ!」
フィールドで出くわすと、問答無用で襲ってくる強羅ウサギだが、
巣の近くになると違うらしい。
罠の入り口を開けてやると、のっしのっしと草むらへと帰っていく。
「はぁ~、どうしたもんかな・・・」
はぐれドルーナの捕獲に何度も挑戦したリョージ。
そのおかげで、相手からすっかり警戒されてしまったのだ。
ペットとして飼われていたせいか、最初はリョージも近づくことはできた。
だが、今ではそれも難しい。
リョージの姿を捉えると、すぐに逃げてしまうのだ。
そこでリョージが考えたのが、罠作戦だった。
しかし、ターゲットであるはぐれドルーナどころか、ドルーナ自体かからない。
蓋を開けてみれば、入っているのは強羅ウサギばかり。
何かヒントはないかと、ギルドでもらった依頼書をもう一度読んでみる。
今回のクエストの依頼書に書いてある情報。
そこの、『ピッチちゃんの大好物』の欄を見てリョージは閃いた。
そうだ、餌で釣ろう、と。
『ピッチちゃんの大好物』には『ロウメの実』とあった。
ロウメの実は、言って見れば高級食材である。
「・・・そんなもん、用意できるかぁっ!!!」
ってなわけで、
リョージはその辺の木になっている
適当な果実を集めてみることにした。
半日かけて果物を集めたリョージ。
早速罠に設置して、一晩待ってみた。
・・・のだが。
「だから、なんでお前なんだよっ!」
「ブモゥッ!」
やはり、かかっているのは強羅ウサギなのだった。