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待ってろ

 街では、ある男が久しぶりにギルドを訪れていた。


 冒険者である男は、勝手知ったるホームを前にして難しい顔をしている。


 そして、入り口のドアに手をかけようとしたとき、


 ちょうど中から出てくるものがいた。


「お…あんた…」


「ご無沙汰しています」


 丁寧に頭を下げた大男を見て、


 ギルドから出てきたレナードは目を丸くする。


「久しぶりだな、どうだ、調子は」


 笑顔になってそんなことを言うレナードを、


 その男は真剣な顔で見つめる。


「少し聞きたいことがあるんだが…」


 深刻そうな男の顔に、レナードも居住まいを正す。


「まあ、入れよ。茶ぐらいいれるぜ」


 正確に言うと、その男はもうこのギルド所属というわけではないのだが、


 レナードは昔なじみの彼を中へと招き入れる。



******


 リョージは、夜通しフィールドを駆けていた。


 一刻も早くたどり着かなければ、自分を慕ってくれたあの新人冒険者がどうなるか分からないのだ。


 視界が悪い中、リョージは明かりをつけながら走る。


 ほんわりとリョージを包む光のおかげで、辛うじて視界は保たれている。


 それでも、スピードを上げると自身の認識能力を超えて


 足を地面にとられてしまう。


 今夜はあいにくの曇りであり、そういうところも


 自分の行動を邪魔しているように思えてイライラとする。


 普段なら、夜に行動することがないために慣れていないということもある。


 そして、リョージが一番難儀しているのが、


 モンスターのことであった。


「くそっ!」


 リョージの前に夜行性のモンスター”ナイトルード”が現れた。


 街からだいぶ離れてからというもの、


 リョージの知らないモンスターが襲ってくるのだ。


 街の近くに出るモンスターは、大抵こちらから存在を知らせれば


 自分の方から逃げていく。


 そんな大人しい奴らと違って、


 襲ってくるモンスターは攻撃性も高いようだ。


 リョージは、走ることに神経を使いたいのに、


 こういった輩が邪魔をするので


 ただでさえスピードを落としているなかで、


 余計に時間をとられることになる。


 ここら一帯はナイトルードの縄張りであり、


 夜は火を焚いてやり過ごせばなんてことはない。


 昼間に出るモンスターは雑魚だから、


 ここを通る者は、夜はキャンプで一夜を明かすのが定石だ。


 かく言うサイモンたちも、


 そうして日程を組んでいた。


 

 リョージは、行く手を阻むナイトルードを退けると、


 先を急ぐ。


 そんなことを、何度も繰り返したあと、


 ようやく襲撃の間隔が空いてきた。

 

 空は明るくなってきて、どうやら夜は終わったようだ。


「…待ってろよっ」


 リョージは、ヒールポーションを飲み干すと


 一気に走りを加速する。


 目の前には緑が多い茂るジャングルがある。


 この先の洞窟に行けば、クロルを助けられるかもしれない。


 いや、助けるんだとリョージは自分を鼓舞して、


 前を見据えていたのだった。

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