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旧友の思い

 ちゃっかりと、リョージと食事の約束を取り付けたファイ。


 その内心はルンルンとスキップでも踏みたいところだったのだが、


 リョージの前でそれは見せまいと自制している。


 だから、リョージはそのことに気づいていない。


 元から鈍いリョージだったから、気づくはずもなかったのだが、


 そう言ったことまで分かっているレナードは、


 内心感心しながらそれを見ていた。


 リョージのこの鈍さが、ファイを助けている部分もあるのだと、


 レナードは二人のことを少し分かった気がした。


 正直、ファイがリョージという青年に執着しだしだのには


 理解が及ばなかったのだが、


 リョージなら、と実際に接してみて初めて感じるところがあったのである。


「では、書類にサインをしますか」


「はい」


 リョージとファイは、同じ書類にサインをする。


 その書類は、リョージとファイが共に同じパーティでクエストを受けたという証明のようなものである。


 リョージは、元々はパーティを組むことに対して抵抗を持っていた。


 だが、新人冒険者のクロルと組んだことで、


 自分は大丈夫だと思えたのだ。


 そう思えるようになったのはファイの功績であり、


 その思いを抱えるようになった原因の一旦はファイにもあるのだが、


 リョージは後者には気付いていない。


 

「よし、承認したぞ」


「ありがとうございました」


 こうして、手続きが終わった。


「では、夜待ち合わせしましょう」


「はい、楽しみです」




 リョージとファイは一旦別れた。


 そして、ギルドの職員専用の部屋へと戻ったファイ。


「フフ、リョージさんと…」


「おい、俺にも感謝しろよ」


「ああ。…フフ、楽しみだ」


 ファイは、獰猛な目つきで舌なめずりをする。


 それが、空腹から来るものではないことは、


 レナードは分かっていた。


「それにしても、お前がなぁ」


「何がだ?」


「いや、お前が誰かにそういう思いを持つってさ。


 正直意外だったわけよ」


「そうか?」


「ククッ、あいつらが知ったら驚くだろうな」


 レナードは遠い過去に思いを馳せる。


 だが、ファイはあまりそう言うところで感傷的にならない男である。


 その頭は、もう今夜のことに切り替わっていた。


「フフ、リサーチが役に立つときが…」


「…ほどほどにな」


 レナードは、リョージに対して同情的なものを感じたりもしたが、


 自分の身が一番かわいいので、


 それは言い出さなかった。


 それに、ファイが意外にも紳士なことを、


 ここしばらくの様子から分かっていたというのもある。


 そのことを知ったのは、長い付き合いの中でも本当に最近のことなのだが。


(まあ、うまくやってくれよ…)


 昔の仲間の将来に、朴訥な青年がどう関わっていくのか。


 最初は心配したものの、


 実際に会った感じだと、何か特別なものをリョージには感じる気がするのだ。

 

 かなり癖が強い旧友との相性も、案外悪くはないんじゃないかとレナードは思ったりしたのだった。

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