お別れ
リョージとファイは、街へと戻ってきた。
冒険者ギルドへ着くと、クエスト完遂手続きのために
ファイが窓口の向こうへと入っていく。
「少しお待ちくださいね」
「はい」
こうして、窓口にはリョージと、籠に入ったドルーナが残された。
「お前ともお別れだな」
「フシュ」
リョージは、何となく感慨深げな気持ちになる。
このクエストは、少々てこずった。
それを思うと、何となくピッチちゃんに対して思うところもある気がする。
が、それは何というか嫌な物ではなく、
手を焼かせてくれたという少し微笑ましく思えるものだったのである。
実際に、苦労させられたのはピッチちゃんではなく、
強羅だったというのもある。
それに、今回のクエストでリョージは得るのもがたくさんあったのだ。
「リョージさん、お待たせしました」
「はい。…じゃあな、達者でやれよ」
「シュッ」
ピッチちゃんは、もうファイの方に夢中である。
リョージは苦笑しつつも、ピッチちゃんらしいな、と思った。
別れ際にこちらに視線を向けたピッチちゃんが、
少し寂しそうな顔をした気もして、
だが、きっとそれは自分ががそう見えただけだろうと思い直した。
冒険者が、依頼主と直接会うことはないし、
きっと、ピッチちゃんと会うのもこれが最後だろう。
リョージはただピッチちゃんが飼い主の元で幸せに暮らせばいいと、
そう思って、のんきなはぐれドルーナを見送ったのだった。




