現金なやつ
リョージとファイは、街へと向かっていた。
籠に入ったピッチちゃんを連れてである。
「ふぅー、帰ったら何食べようかな」
「ふふ、よかったらご馳走しますよ」
「本当ですか。嬉しいな」
そんなことを和やかに話しながら歩いている二人。
ピッチちゃんは、籠の中で美味しそうに魚を食んでいる。
「あ、」
そんな時、ふいにリョージが声を上げた。
「どうしました?」
ファイの言葉に、リョージはぶんぶんと首を横に振る。
「い、いえ…」
リョージは、ずっと考えていた。
どうして、ピッチちゃんがあんなにも簡単に捕まったのか。
それがようやく分かったのである。
答えは、ピッチちゃんの捕獲クエストの要項にあった。
そこには、確かピッチちゃんの好きな物が書いてあった。
食べ物でなく、他にまだ書いてあったこと。
それは、「ピッチちゃんは、美人が好き」ということだった。
「美人…ファイさん…」
「え?」
「あ、いえ…何でもないです」
確かに、ファイは男であるが相当目鼻立ちが整っている。
髪も長いし、性別など問題にならないくらいに美人である。
「リョージさん?」
「…何でもないです」
何だか、急に意識してしまってリョージはぶんぶんと首を振った。
どうしたというのだろう。
これまではそんなこと思いもしなかったのに…。
リョージは自身に起こった変化に戸惑いつつ、
それをごまかすためにピッチちゃんに絡む。
「お前も現金だな」
「シュ?」
自分の時には警戒していたのに、ファイ相手だとあの懐きよう。
ちょっとむかついてくるリョージなのだった。




