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お詫びのしるし
「はー、よかった…」
リョージは、籠におさまったピッチちゃんを見てほっと胸をなで下ろした。
「ファイさんが捕まえてくださったんですよね。
ありがとうございます」
そうリョージは言ったのだけど。
「いえ、私は何もしてません」
そうファイは答えたのだった。
「え? でも…」
「私にもよく分からないのですが…。
確か人懐っこいと書いてありましたし、
逃亡生活が疲れたのではないでしょうか」
「は、はあ…」
リョージは、そんなもんかな、と思う。
「まあ、捕まってよかった。
ファイさん、はい」
そう言って、リョージは手を上げる。
「リョージさん?」
「ハイタッチ。はい、任務完了っ」
パシンと軽快な音が辺りに響く。
「ふふ、帰りましょうか」
「はいっ」
リョージたちは、残った魚を他のドルーナたちにあげてその場を去る。
それは、生活を騒がせてしまったことに対するお詫びの気持ちでもあったのだが、
そんなことなどつゆ知らず、久しぶりのごちそうに舌鼓を打ったドルーナたちだったのだった。




