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静かな夜

 夜。


 ファイさんの作ってくれた夕飯をいただいた俺は、満腹になったせいか、眠くなってきた。


「リョージさん、先に寝てください」


 ウトウトとする俺を見かねて、ファイさんがそう言ってくれるが…。


「いえ…、だいじょうぶです…」


 そう口では言うが、俺はもう限界だった。


「す…みません…、やっぱり先に寝ます…。


 途中で起こして…」


 自分で思っている以上に疲れていたのだろうか。


 言葉を言い終わる前に、俺の意識は遠のいていった。



******

*****

***

**



 目が覚めたとき、まだ外が暗いことに安堵した。


 俺はファイさんがかけてくれたのであろう毛布から抜け出す。


 野営地から少し離れたところにファイさんはいた。


 月が出ているおかげでその姿をはっきりと見ることができる。

 

 ファイさんは、岩に腰掛けて遠くを見ていた。


 辺りは音もなくとても静かだった。




「ファイさん」


 俺が声をかけると、ファイさんはこちらをゆっくりと振り返った。


「リョージさん、まだ寝ていらして大丈夫ですよ」


 ファイさんはそう言うが、そういうわけにもいかないだろう。


「いえ、ファイさんのおかげでゆっくり休めました。


 そろそろ交代しましょう?」


 俺がそう言うと、ファイさんは少し考えたあとでこう言った。


「実は私、少し目が目がさえてしまいまして。


 落ち着くまでしばらくここにいてもよろしいでしょうか」


「それはいいですけど、大丈夫ですか?」


 もしかして、体調でも悪いのかと思って聞いてみたけれど。


「はい」


 ファイさんはにっこり笑って、俺の隣に腰を降ろしたのだった。



******


 俺とファイさんは、何を話すでもなくただ時間だけが過ぎていく。


 その時間が俺は苦ではなかった。


 静かな月の夜。


 昨日も、一昨日も同じ夜のはずだった。


 だけど、今日は少し違った。


 ファイさんが現れて、一緒に探索をして釣りをして…。


 今日のことを振り返っていて俺は思い出す。


 川に落ちた後、ずぶ濡れになった俺たち。


 だけど、ファイさんはいつの間にか乾いていて。


 俺はそのあと寝ちゃったんだけど、起きたらちゃんと乾いてたんだ。


 俺の頭も、着ていた服も、手に持っていた上着も。


 自然乾燥で乾いたはずもないから、やはりあれはファイさんの魔法だったのだろうか。


 そのことをファイさんに聞いてみようと思ったとき、ふいにかけられた声で俺の思考は途切れた。


「きれいですね」


 ファイさんは星の浮かぶ夜空を見据えていた。


 そう、この世界の夜空はきれいだ。


 俺の前世の世界も綺麗だったのだろうが、俺の住んでいた場所からは星はよく見えなかった。


 こちらの世界の夜空と、元の世界の夜空が同じなのかそうでないのか。


 それすらも、天体に詳しくない自分には分からなかったけれど。


「…はい、とても」

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