れっつフィッシング
袋からカタツムリ?を取り出したファイさん。
「糸をタルグルに巻き付けます」
ファイさんは、メタリックブルーの殻にぐるぐると紐を巻き付けていく。
「こうして、しっかり、結びます・・・。よしっ、リョージさんもどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
俺は、ファイさんからメタリックレッドのカタツムリをもらう。
ファイさんの言い方からすると、このでんでん虫が『たるぐる』なのだろう。
「えっと、たるぐる、に糸を巻き付けるんですよね」
俺が確認するように言うと、
「ええ、そうです」
ファイさんがふわりと笑ってくれた。
うん、やっぱりこれがタルグルなんだな。
俺はファイさんに倣って、糸をタルグルに巻き付けたのでした。
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「さて、では釣りを始めましょうか」
ファイさんと俺は、河原のでっかい岩に腰掛けます。
「はい・・・」
ファイさんは、やはり釣り針をつけなかった。
これじゃあ、タルグルを魚が食べても引っかからないと思うんだがどうなんだろうか。
針がついてるから、魚を吊り上げられるのだと思うんだけど・・・。
それに、糸の長さも短い。
足元の水に垂らすくらいしかないのだ。
「リョージさん、見ていてくださいね」
ファイさんは、そう言うとおもむろに竿を振りかぶった。
そして、ぶんっと勢いよく竿を振る。
すると、糸がするすると伸びていき、川の中ほどあたりに到達する。
ぷかぷかと浮かぶメタリックブルーの殻。
「この糸は、微弱な魔力を流すと伸びる性質があるんです。
それで、もう一度流すと・・・」
ファイさんが、竿を戻しながら魔力を流すと、
白い糸はぐわっと縮んで戻ってきた。
ファイさんは、タルグルをキャッチする。
「魚がかかったら、こうやって戻してください。
何度もやると、反応しなくなるのでその都度糸を交換します」
「ちょっと難しそうですね」
「そうですね、でもリョージさんならすぐできますよ」
うん、ファイさんって人を乗せるのが上手いなあ。
「じゃあ、僕もやってみます」
まだわかってないこともあるけど、まあ何とかなるだろう。
俺は川に向かって竿を振りかぶったのだった。