根本的なところが
「・・・なるほど、罠を仕掛けていたわけですね」
リョージはファイに、これまでの経過を報告した。
「はい、それがなかなかうまくいかなくて・・・」
リョージは、ドルーナが食べそうな果実を集めて罠に置いた。
しかし、罠にかかるのは強羅うさぎばかり。
ドルーナがかかったこともあったが、それは一度だけ。
「うーん、ロウメの実はさすがに用意できませんね」
「そうですよね・・・」
ロウメの実は滅多に見つからない希少性の高い果実だ。
だから、あったとしてもとても庶民が手を出せる金額ではないのだ。
「あとは、魚肉ソーセージですか・・・」
「ファイさん、お持ちでは・・・ないですよね」
「ええ、すみません」
ファイは申し訳なさそうな顔をしているが、申し訳なく思っているのはリョージの方だった。
だって、魚肉ソーセージを普段から持ち歩いている人なんてそうそういないだろう。
ああ、酒好きの人はつまみに持ってるかもしれないって?
だが、それは前世の世界での話だ。
この世界の魚肉ソーセージは、少し形状が異なる。
気軽に持ち歩けるような形にはなっていないのだ。
「うーん、どうしましょう。
代わりになるかと思って、強羅ウサギを捕獲しようとしたんですけど」
「・・・ドルーナは強羅は食べないと思いますよ」
ファイの言葉に、リョージはため息をつく。
こういうところで、前世持ちの弊害が出る。
前世を過ごした世界と、この世界では共通する部分もある。
だが、この共通する部分と見せかけて違うという今回のようなパターンもある。
おかしな間違い方をするリョージに向けてくる大人たちの目を思い出し、
リョージは気分が沈む。
だが、そんなリョージの気分を変えたのはファイだった。
「・・・魚肉ソーセージなら、河ですかね」
「え?」
「うーん、ドルーナが魚を食べるというのは、あまり聞いたことがないのですが・・・。
魚肉ソーセージを食べるというのなら、魚を用意した方がいいのではないでしょうか」
「・・・ファイさん」
「・・・はい?」
リョージはがしっとファイの手を掴むと叫んだ。
「それです!」
「は、はいっ?」
ファイはリョージのテンションの変わりように少し驚いて固まる。
だが、リョージはそんなことをお構いなしにファイの手をぶんぶんと振る。
「ありがとうございます!」
「あ、いえ、私もドルーナに関して詳しいわけではないので分からないのですが・・・」
「いえいえ、俺一人でいたら気づかなかったですからっ」
リョージは疲れもあって、魚肉ソーセージの原材料について考えが浮かばなかった。
ファイの言うように、それはドルーナがあまりにも魚を食べそうにない外見をしているせいでもあったのだけれど。
「・・・お役に立てたならよかったです」
「よーし! 川に行くぞー!待ってろ、ドルーナ!」
元気になったリョージの様子を見て、ファイは嬉しそうにほほえんでいたのだった。