表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

This is my world.....help.

作者: 南戸由華

ふと思い立って書いてみました。

ちょっぴり暗い話ですが、短いので気軽に読んでいただければ幸いです。

私の世界には、二種類のものが存在する。


「嘘」か「本当」か、だ。


****


その日は至って普通の日だった。


天気も、気温も、時間の流れも、周りを歩く人の動きも、通勤ラッシュの満員電車も…


電車の中で、私は人の間に揺れている。


すべてがいつも通りだった。

何か特別なことが起こるような、そんな日だとは誰も思わなかっただろう。


でも、私には分かっていた。

なぜなら、私はその普通が「嘘」だと知っていたから。


しかしそれを決して口にすることはなかった。


私はそれを、望まない。


私は人の間に揺れながら、待っていた。

今日という日を、この世界のすべてを揺るがす何かを。


もう少し。


「あなた、知っているのでしょう?」


すぐ後ろから、1人の少女が私に声をかけた。


ほら、来た。


電車の中の喧騒が遠のいていく。


振り返ると、少女が私を見上げている。

少女が口を開くと、透き通った声が私の耳に響く。


「やっと会えた。あなたに言いたいことがあったの。」


「人違いでは?なんのことだか、私には分からないよ。」


「とぼけないで。私には分かるの。」


少女はくりくりとした瞳で私を睨みつける。


さて、どうしたものか。


「君は私にどうしてほしいんだい?」


「『嘘』を消して。『本当』の世界を見せてほしいの。」


「なぜ?」


「だって、知りたいと思ってしまったのだもの。」


私の世界では、時々こういう者が現れる。


「本当」を知ってしまったら、この世界は終わりなのに。

私はそれを望まないのに。


私の思い通りに「創って」いるはずなのに。


「『本当』が優れているとは限らないぞ?お前に知る覚悟はあるのか?」


「ええ、あるわ。だって、私は…」


少女が私に近づき、抱きついた。

私の胸に額を当てる。


「あなたの心だもの。」


ああ、そうか。これが私の本心なのか。

ひたすら「嘘」を創り続けた、私の本心。


ーー「本当」を見たい。


「そうか、じゃあ望み通り、お前に…私に『本当』を見せよう。」


少女を抱きしめ、私は目を閉じた。



そして

私は世界を壊した。



再び目を開けるとそこは闇の中だった。

ただの果てしない暗闇。

前も後ろも上も下も、何も見えない。


天気も、気温も、時間の流れも、周りを歩く人の動きも、通勤ラッシュの満員電車も…


何も無い。


ああ、やはり「本当」は耐えられない。


あの少女も…私の心も、どこかへ身を隠してしまった。


「嘘」の中では「本当」を望んでいるが、「本当」の中では私の心は生きてはいけないことに、私はいつになったら気づくのだろう。


心を失った私は涙を流しながら再び目を閉じた。


****


冒頭の言葉を訂正しよう。

私の世界には「嘘」と「本当」があるのではない。


私の世界は「嘘」でできている。


自身の心が「本当」を望むのなら、心のままに世界を壊す。


しかしその度に私の心はいなくなる。


そして私は再び新たな「嘘」で世界を創るのだ。


「嘘」と「本当」、どっちが優れているかは人それぞれですね。


「嘘」で作った彼の世界では、「嘘」しかありえない。

どれだけ「嘘」に逃げていても、無意識に「本当」を知りたい、向き合いたい、と思う気持ちも彼にはあるのです。

でもやはり彼の心は「本当」に耐えられない。


そんな葛藤を描いてみました。

自分が想像したこと、伝えたいことを余さず人に伝えるのは難しいですね…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ