This is my world.....help.
ふと思い立って書いてみました。
ちょっぴり暗い話ですが、短いので気軽に読んでいただければ幸いです。
私の世界には、二種類のものが存在する。
「嘘」か「本当」か、だ。
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その日は至って普通の日だった。
天気も、気温も、時間の流れも、周りを歩く人の動きも、通勤ラッシュの満員電車も…
電車の中で、私は人の間に揺れている。
すべてがいつも通りだった。
何か特別なことが起こるような、そんな日だとは誰も思わなかっただろう。
でも、私には分かっていた。
なぜなら、私はその普通が「嘘」だと知っていたから。
しかしそれを決して口にすることはなかった。
私はそれを、望まない。
私は人の間に揺れながら、待っていた。
今日という日を、この世界のすべてを揺るがす何かを。
もう少し。
「あなた、知っているのでしょう?」
すぐ後ろから、1人の少女が私に声をかけた。
ほら、来た。
電車の中の喧騒が遠のいていく。
振り返ると、少女が私を見上げている。
少女が口を開くと、透き通った声が私の耳に響く。
「やっと会えた。あなたに言いたいことがあったの。」
「人違いでは?なんのことだか、私には分からないよ。」
「とぼけないで。私には分かるの。」
少女はくりくりとした瞳で私を睨みつける。
さて、どうしたものか。
「君は私にどうしてほしいんだい?」
「『嘘』を消して。『本当』の世界を見せてほしいの。」
「なぜ?」
「だって、知りたいと思ってしまったのだもの。」
私の世界では、時々こういう者が現れる。
「本当」を知ってしまったら、この世界は終わりなのに。
私はそれを望まないのに。
私の思い通りに「創って」いるはずなのに。
「『本当』が優れているとは限らないぞ?お前に知る覚悟はあるのか?」
「ええ、あるわ。だって、私は…」
少女が私に近づき、抱きついた。
私の胸に額を当てる。
「あなたの心だもの。」
ああ、そうか。これが私の本心なのか。
ひたすら「嘘」を創り続けた、私の本心。
ーー「本当」を見たい。
「そうか、じゃあ望み通り、お前に…私に『本当』を見せよう。」
少女を抱きしめ、私は目を閉じた。
そして
私は世界を壊した。
再び目を開けるとそこは闇の中だった。
ただの果てしない暗闇。
前も後ろも上も下も、何も見えない。
天気も、気温も、時間の流れも、周りを歩く人の動きも、通勤ラッシュの満員電車も…
何も無い。
ああ、やはり「本当」は耐えられない。
あの少女も…私の心も、どこかへ身を隠してしまった。
「嘘」の中では「本当」を望んでいるが、「本当」の中では私の心は生きてはいけないことに、私はいつになったら気づくのだろう。
心を失った私は涙を流しながら再び目を閉じた。
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冒頭の言葉を訂正しよう。
私の世界には「嘘」と「本当」があるのではない。
私の世界は「嘘」でできている。
自身の心が「本当」を望むのなら、心のままに世界を壊す。
しかしその度に私の心はいなくなる。
そして私は再び新たな「嘘」で世界を創るのだ。
「嘘」と「本当」、どっちが優れているかは人それぞれですね。
「嘘」で作った彼の世界では、「嘘」しかありえない。
どれだけ「嘘」に逃げていても、無意識に「本当」を知りたい、向き合いたい、と思う気持ちも彼にはあるのです。
でもやはり彼の心は「本当」に耐えられない。
そんな葛藤を描いてみました。
自分が想像したこと、伝えたいことを余さず人に伝えるのは難しいですね…。