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私のママ  作者: 小梅
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ママと電気あんま

うちのママは「おばさん」って呼ばれるのが大嫌い。

私や弟にはもちろんママって呼ばせるし、気がついたらママはママだったし、当然だから私たちには違和感はない。

だけど、ママは私や弟の友達にも「ママ」を強要する。


ある日私が近所の女の子と遊んで帰ってきたら、玄関で長村がウチのママに電気あんまをされて騒いでいた。

「おい長村〜、誰がおばさんだって〜?

ママって呼びなさいって言っただろ〜?

おりゃ〜!!」

「ぎゃははは、ごめんなさい、ごめんなさい〜!」

長村が謝っているのに、ママは素早く長村のわき腹をこちょばしながら、

「おりゃおりゃ〜」と続けた。

長村は笑いすぎて既に涙目だ。


女子対男子戦争で、リーダー的な存在の奴が長村だ。

長村は昼休みになったら、私に向かって

「アジャ2〜!」って叫ぶ。

私はこのあだ名を受け入れつつも、黙ってはいられないから、長村を睨みつける。長村はヘラヘラ笑っているから、その顔にムカついて今日もまやちゃんと追いかけ回す。

長村が挑発して、まやちゃんが捕まえて、私が電気あんまを喰らわして、、、

毎日がこんな感じ。

電気あんまをされている長村は、

「ヤメろー!」という割には全然抵抗しない。むしろ嬉しそうだったな、と思ったのは、私が成熟した大人になってから。

今考えたら、何て遊びをしていたんだろう。

大人の私がその場にいたら、すぐにやめなさいと言っていたと思う。


長村とは女子対男子戦争のせいで、学校にいる間は天敵だ。

だけど放課後になったら、長村は校門のとこにいて、私が出てくるのを待っていた。

ウチでゲームをするためだ。


ウチはパパが単身赴任でたまにしか帰ってこないから、帰って来るたびにお土産という名目で大体のものは買ってもらえる。

まだファミコンを持っている子は少なくて、男子で持っている子は、おぼっちゃまの、

ともやくらいだった。

だから、長村はウチに遊びにくる。


いつの間にか、クラスの男子も何人かついて来るようになって、最近はすっかり溜まり場になっていた。

その中に羽田くんという色白で、ぽっちゃり体型の男子がいる。

私は羽田くんを「羽ちゃん」と呼んでいた。

羽ちゃんは普通の男子とは違って、ゲームには興味はない。バカな男子がゲームをしている最中、ひとり離れてあぐらを組んで目を閉じていた。

「羽ちゃん、何してるの?」と聞いてみたら、「坐禅を組んでいる」と答えた。

「何のために?」

「瞑想して、心を無にする修行。だから、俺に話しかけるな。」

「・・・うん、わかった。」

男子からは「白ブタ羽田」って言われていたけど、羽ちゃんは私のことをアジャ2とは呼ばないし、坐禅を組んで瞑想している姿は、ゲームに夢中な他の男子よりも、何だか頭が良く見えた。


さて、男子はゲームに夢中だし、羽ちゃんは瞑想中。いつも私をバカにする長村は何処に行ったんだろうと思って探していたら、私の部屋で私の箪笥の引き出しを開けている姿を見つけた。

手には私の白いキャラクターパンツ。

「え?なにしてるの、、、?」

「これ、お前のパンツ?」

「そうだけど、、、」

「匂いかいでもいい?」

この時点でおかしいと思えたらよかったけど、私の頭の中では洗剤の匂いしかしないはずだけど、なんで嗅ぎたいんだろうってちょっと疑問に思っただけで、

「いいけど、、、」って言ってしまった。

私の返事を聞く前に、長村は両手でパンツを握りしめて匂いをかいでいた。

隣の居間からは男子がゲームをしながら騒いでいる声が聞こえる。

ほんの数秒だったと思うけど、凄く長い時間に感じた。

その数秒で私が考えたこと。

なんで長村は私のパンツの匂いを嗅ぎたいのか、それが持つ意味は分からないけど、次第に悪い事のような気がしてきて、今この瞬間を他の男子に見られたら、みんなはどう思うのか?と、いうこと。

それを考えたら急に恥ずかしくなってきて、

「もうやめて!」と言いながら、長村からパンツを強引に取り返した。


長村パンツ事件があってから、私は長村を避けていた。最近は私が挑発にのらないから、女子対男子戦争も終息。

学校帰りも、私は羽ちゃんや他の女の子と帰るようにして、長村が校門にいても無視していた。

そんな中で起きたこの出来事。

ようやくママの攻撃が収まって、長村は解放された。

ママは長村に、

「もうおばさんと呼びませんと言って。」

と言った。

長村は涙を拭きながら「わかった」と言い、

玄関から飛び出した。

走って逃げて行く長村に、ママは玄関から顔を出して、「次に呼んだら、パンツ脱がしてやるからな!」と叫んだ。

私はママと目を合わせて、涙が出る位に笑った。

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