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私のママ  作者: 小梅
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ママと人参

ママとは偉大ないきものです。

玄関を開けると、ザラメとバターを焦がしたような、なんとも香ばしい匂いが漂っていた。今日のおやつは何だろう、カップケーキか、マドレーヌ?と考えながら、私は靴を脱ごうと、右足のかかとで反対の靴をふんずけながら、リュックをおろす。

「ただいまー!」

階段近くにリュックを放り投げて、ドアを開けると、薄いグレーの毛の塊が、靴を脱いだばかりの足に絡みつく。

毛むくじゃらの頭をわしゃわしゃと両手で撫でた後に、右の手のひらを鼻に持っていく。

「うわっ、くさっ!!

ママー!!もん太の顔、臭い!」

「知ってるー!おかえり!」

と、爆笑しながらもん太をヒョイっと抱き上げたのが、ウチのママ。

涙のせいで、目の下の毛が腐った雑巾みたいにツーンと匂うこの犬は、ヨークシャーテリアのもん太。

ママはくっさいもん太の顔に自分の顔を摺り寄せて、右手でわしわしと撫でながら、

「今日はマドレーヌを作りました!」と、

なぜかドヤ顔。

「予想が当たりました!」と、当然私もドヤ顔。


ママは身長が153センチしかないのに、凄くおっきく見える。

実際に横幅がおっきいんだけど。

でもママの大きさは、体型のせいだけではないと思う。説明するのは難しい。

とにかくママは、

いかにも「ママ」って感じ。

「お母さん」ではなく、ママは「ママ」なんだ。


私は小学校4年生、名前は百子(ももこ)

あだ名は「ももち」なんだけど、

一部の男子に「アジャ2」って呼ばれた。

2がいれば、1も当然いる。

まやちゃんが「アジャ」で私が「アジャ2」

由来は人気のヒール役の女子プロレスラー、

「アジャコング」だ。

机に入れていた交換日記を、盗み見した男子は女子の怒りを買い、「女子対男子戦争」が始まったのがキッカケ。

まやちゃんは女子の中で一番足が速かったから、走って男子を捕まえるのがまやちゃん。

捕まえた男子に電気あんまを喰らわすのが、私だった。他の女子も何人か参加してたけど、アジャってあだ名は私とまやちゃんだけで、他の子はあだ名すらつけられていなかった。電気あんまなんかを喰らわすのは、私かまやちゃん位だったし。まあ、しょうがないかって何故か納得。でも男子って本当にばか。

明日も絶対に、電気あんまを喰らわしてやるんだ。


話は戻るけど、最近ママはお菓子作りにハマっている。

今日はマドレーヌだったけど、2日前は白鳥の形をしたシュークリームだった。

先週は人参ケーキ。

人参は苦手で、実は「この世に無くてもよかったのにランキング」の上位に食い込む。

バターと砂糖で甘く煮た人参がママの大好物で、ちょくちょく夕飯に出てきた。

ほら、ハンバーグとかの横によくある、あの甘いやつ。

本当は凄く嫌いなんだけど、ママがそれを大好きだし、せっかく作ってくれたんだし、、ってな訳で、1番初めに食卓に出てきた時に「おいしいでしょー?」って言われて、思ってもいないのに「おいしい!」と答えてしまったのだ。それが失敗!

それからすっかり夕飯のレギュラーメンバーにヤツが仲間入りした。

と、いうことで、私が人参が嫌いなんてことは知らないママ。

もっとひどいのは、4つ下の弟の(きよし)も嫌いだってこと。

そうとは知らず人参ケーキを焼いてくれた。

私もたかしも今更何も言えない。

地獄に落ちるのは怖いけど、やっぱりこの日も「おいしい!」って嘘をついた。



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