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ムニキス  作者: 笹釜石
1/3

ある少年の終わり――

僕は今、自宅マンションの最上階――11階のさらに上、つまり屋上に立っていた。

周りはパイプフェンスで囲まれている。

だが、僕の右手にはミゼットカッターが握られている。

税込価格で1000円弱の物だ。

これで金網を切断する。

縁に立つ前に、金網がなくなったことで外の景色がよく見える。

でも僕にはその景色が、いやこの世界が灰色に見える。

こんな世界を19年生きてきた事を僕は誇りたい。

誉めてください。

この19年。僕にとっては一生だ。

50年、90年生きている人もいるけれど、僕はもう耐えられない。


僕にはこの世界が灰色に見える。他人が何を考えているのか、何をしたいのかがわからない。

何も感じない。

僕が何をしたいのかわからない。

でも他人が何を考えているのか知りたいとも思わない。

何も感じようと思わない。


心を持つ者にとってこの世界は辛く、苦しく、厳しい。


僕はもう耐えられない。

それでも震える両足を屋上の縁に乗せる。

急な強風に目を閉じる。


「この先にあるのは孤独だよ」


目の前(、、、)から声が聞こえた。

強風に耐えながら薄く目を開く。

そこにいたのは、自分だった。

自分なのだけど、自分じゃない。


全てを知っている様な顔をしていて、瞳と瞳を重ねると自分の瞳からは悍ましい程の孤独が感じられた。

何も感じなかった僕の心一杯に孤独が押し寄せる。

それでも、


「それでも僕はいくよ」


そう告げた途端、自分の瞳が淋しく閉じられるとさらに強い風が吹く。

その風は自分ごと目の前の景色を吹き飛ばした。

そして目を見開く。


そこにあったのは、僕が見たことのない景色だった。

先程と変わらない景色。だけど変わっている。

灰色だった世界に色が滲んでいく。

目の前に青い空が広がり、白い雲が浮いている。


僕はその景色へと一歩を踏み出した――

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