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発動カセミカ計画その6 自宅黄昏編

 アンドロイドとそれに搭載する人工知能の研究と開発は、100年以上前から続いている。それはなんの進展もなく、何の発展性もなく、ただおこなわれていた

 だがある時、一つの設計図とおぼしきデータと一つの動画がネット上にあがった

 それは多くの研究者が綿密に計算した結果、完璧であると言わざるをえなかったアンドロイドの設計図と、アンドロイドがアンドロイドを分解していくという動画だった

 通称「祖体そたい設計図」と「祖体解体ショー」

 前者は、多くの科学者の人生を変えた。それの研究にとりつかれた者。それを見て諦めた者

 後者は、ある一種のマニアを生んだ。あまりによく出来た中性的で幼い見た目のアンドロイドが、同じ見た目のアンドロイドを解体する

 それは、とてつもない背徳感で、顔の造形があまりによく出来すぎていたが故に、狂気さえ感じる内容だった

 誰が作ったのか?誰がネット上にあげたのか?情報の出所さえも分からず、産業スパイの可能性がささやかれ、それに呼応するように多くのかたりが現れた

 この動画と設計図は自分のパソコンから盗まれたデータだ。と言う個人から、自社で密かに作っていたデータが流出したものだ。と言う会社まで、ある者は裁判まで起こし世間を騒がせた

 それを見たネットのお祭り好き達は、ネット発信であるこの状況を娯楽として楽しみ続けようとした

 設計図と動画のデータをコピーし、国が騒ぎの現況であるこの二つを削除しても再三にわたってアップロードした

 半年後には、この二つのデータどちらかを理由もなくアップロードした者には10年の懲役もしくは100万から1000万の罰金という規制がもうけられ、幾人かがこれによって処罰され、ようやくネット上からこのデータは消えた

 だが、それでも騒ぎは続いた。末期には動画の真似をして人間を解体する狂人まで現れ捕まった

 状況を危険視した国が、発端である「動画と設計図」に関わった者を全力で探したが、現在に至る今でも、これを行った人物と目的については謎のままである。

「祖体設計図」発見より4年後、この国は「祖体設計図」を完全再現したという アンドロイドを発表した。

 今の技術ではどうしてもできないとされていた祖体の設計。

 多くの国が驚愕する中、発表されたのが通称「ゼロゼロ」ただその性能は皆が期待するほどのものではなかった。

 確かに従来の アンドロイドから見れば驚異的な進歩を遂げているが、それだけである。

 祖体設計図を見た研究者から言わせれば、それは完全再現とほど遠いものであった。通称「ゼロゼロ」はその後「劣化祖体」と呼ばれる。

「ゼロゼロ」完成後も多くの者たちが祖体設計図の完全な再現を目指し日夜研究し、それに少しでも近づこうとしている。

 現在に至る今も研究と開発は進められているが、それはゼロゼロと同程度の性能しかない「劣化祖体」の量産にすぎず、それを超える性能のものは、今も作られてはいない。

 現在一千万程度で市販されているアンドロイドは、企業が作った「劣化祖体」の量産機である。



「あ--えっと。貴女は悪の科学者ですか?」

 ソファ-に座る俺の母親の脇にひざまずき、その爪の手入れをしている女性に聞く

「あぁ、まぁそうだ。なにをもって悪と呼称しているかは知らんが正義のなどと呼ばれるより数倍よい。続けろ虫けらが」

「カセミカ計画ってなに?」

「なんだ我が計画の内容さえ知らず妨害していたのかお前は、ゴミが」

「いや巻き込まれただけだ、俺は」

「ふん、取るに足らぬ存在だな、クズが」

 ただただひたすらに偉そうに俺を見下す悪の女科学者、口の方もただひたすらに悪い

「あ-最近、すっごく肩こちゃっうのよね」

「あっ、もみましょうか!」

 なぜか俺の母親には過剰なほど腰が低かったりする

「あの、二人ってどうゆう関係?」

「見て分からんのか愚か者め、先輩後輩の間柄に決まっておろう、このクソが」

「あっ、お茶がぬるい」

「はい直ちに温かい物にとりかえましょう」

「だからどう見ても久々にあった先輩後輩って感じじゃないぞ」

「だから愚か者だと言うのだ貴様は人間の関係など人間の数だけ存在す

 る定番などない型にはめようとゆう考えはやめるのだな、チリが」

「それでもな、まるでパシリ」

「ほう、この私をつかまえてパシリなどとほざくか、そのような口一瞬で二度と叩けぬようにもできるのだぞ、アクタが」

「私、肩もんでほしーい」

「はっ!ただちに」

「やっぱパシリじゃねぇか、て言うか母さんも軽くキャラかわってねぇか?」

 どう考えても過去に何かあったか凄まじい弱みを握られてるとしか思えない。そんな二人の立ち位置と話の流れ

 あと、どんな質問しても最終的に罵られて終わってるのは気のせいだろうか?

「おい、今の私は忙しい。見て分かるだろう。この牛乳拭いた雑巾が」

「忙しいって、母さんの世話か?」

「そうだ。熱いお茶を出し、肩をもませていただき。あと爪の手入れが途中なのだ。だから貴様はツイタチとでも話していろ。ポンコツが」

「あぁ、分かったよ」

「分かったならばさっさと行け、目障りだ、このデク人形が」

 ただただひたすらに口の悪いこの女科学者は広間の窓の方向を指差してから、ぬるくなったお茶の入った湯のみを持って台所へと消えた

「ツイタチか」

 広間には母さんと俺だけだ。母さんにも聞きたいことはあるが、ここに残っているとまたあの女科学者に何か言われそうだし、それにツイタチっていうあのアンドロイドにも興味はある

 俺はそう考えて外へと出る。外ではツイタチが一人、庭で草むしりをしていた

「なぁ、ツイタチだったよな」

「なんだ?」

「もしかしてフルネームは、一月いちがつ 一日ついたちか?」

「あぁ、そうだ。それがマスターに頂いた名だ。マスターは素晴らしい方だ」

「そうか」

 1月1日ってことは正月か、何となく親近感わくな

「話はそれだけか?」

「いや、名前に関連性がありすぎると思ってな、他のアンドロイドも日にちが名前だ」

「そうだな」

「名づけ親が同じなら問題はないんだが、お前の名前は」

「付けたのはマスターだ。そして素晴らしい方だ」

 ふーん、ん?

「だよな、こうなると俺の曾祖父とつながりがあるとしか思えねぇな」

「マスターは過去や人間関係について語られる方ではない。さらに言えばマスターは素晴らしい方だ」

 ん?ん?

「俺もさっき色々聞いたが答えてもらえなかったよ。で、お前に聞こうと思ったんだが、無理か」

「あぁ、無理だ。理由は三つ、マスターが言わないことを俺が話すことはない。俺のデータの中にそんな情報はない。そしてマスターは素晴らしい方だ。以上だ」

 ん?ん?ん?

「そうか」

 話さないと言いつつも結構 話してくれている

 俺のデータの中にそんな情報はない。ってのは、知らないってことなんだろう。そしてコイツは嘘は言わないと思う

 つまり、本当に知らないんだ

 あとコマーシャルがごとく「マスターは素晴らしい方だ」を入れてくるのはなんだ?サブリミナル効果か?ギャグなのか?コイツは無表情なので何を考えてるか本当に分からないから困るな

「悪い、作業の邪魔したな」

「問題ない。それに俺も興味深かった」

「そうなのか?」

「あぁ、マスターは素晴らしい方、俺がマスターについて知っていることはそれが全てだからな」

「そうなのか」

「あぁ、たった一言だが世界の真理だ。お前も覚えておいて損はない。マスターは素晴らしい方だ」

「ふーん」

 まぁ、真理ってそんなもんなのかもな

「あとこれ、母さんから風呂場用の洗剤だって」

「あぁこれは、要請していた補給物資だ。ありがとう。また補給物資の輸送ご苦労様。俺がこうして任務を遂行できるのは、この家の協力があってこそだ。これでマスターからの命令である家の全エリアの清掃が可能となる」

「そうか」

 ただたんにこの家の掃除をこの家の掃除道具でしてもらってるだけなんだが

「これより中断していた風呂場の掃除を開始する。管理者の一人として注意点があれば言ってくれ。可能な限り善処する」

「いや大丈夫、頑張ってくれ」

「わかった。可能な限り頑張ろう」

「いや、そういうことで言ったんじゃないんだが」

 どこまでも真面目な、まさにロボットと言った感じだな

 悪の科学者に作られた真面目なロボットか「おぼっちまんくん」と呼びたいくらいだ。呼ばないけど

 そんなことを考えていると、状況は変わっていた

 歩きだそうとしたツイタチを、いつからいたのかナノカが呼び止めたのだ

 少し前まで敵対関係にあった二人だけに気になる

「貴方、一部駆動系が壊れてますわね」

「あぁ、よく分かったな。先ほどの戦いで負傷した」

 一瞬何を言っているんだと思ったが、ツイタチは肯定した

 壊れている部分。動きがぎこちない部分など俺には分からなかったが、これはさすがに専門分野ということか

「ハツカさんは、加減を知りませんからね」

「そうだろうか?武装を出さなかったあたり、加減はされていたきもする」

「そもそもアイツに武装はついてないんじゃないか?」

「私からは何とも、それより修理させてくださりませんかツイタチさん?勝手に行った熱血バトルの結果とはいえ妹のしたことですもの」

 言ってることは素晴らしいが、電子レンジ以外は直せないだろお前と言いそうになり、やめた

 興味が出たからだ

「ほぉ、それはいいな」

「なんですの、その笑みは?」

「一度お前が修理してるのを、見たいと思ったんだ」

「見学したいとおっしゃるのですの?」

「なんなら助手として手伝ってもいい」

「それは勘弁ですわ」

「なんで?」

 邪魔だと言われた気がして少しムッとするが、そこに二人組みの片割れイツカが来て、耳打ちしてくる

 いつの間にか中庭には、新顔の3体のアンドロイドが集まっていた

「姉貴は、修理中の姿を人に見せたくないんだ。ここだけの話、隠し腕とか出して修理するから」

「修理用のマニュピレーターか?まぁ、ある話だな。で、それを見せたくないと、気にしなくていいだろ」

 耳打ちの姿勢で話してくるイツカだが、声がそこそこでかくて皆に聞こえている。

 俺は一歩離れて聞いている。

「いやー、ドリルとか出すからな。あと顔が真ん中から二つに割れて、第三の目が」

「そんなのまであるのか?」

「ありませんわ。ありませんけど見せませんわ。見せたくありませんわ」

「かたくなだな」

「これはあれだ。姉貴なりの押すなよ押すなよ絶対に押すなよってやつだ」

「あぁ、フリか」

「フリではありませんわ」

「なに言ってんだ見え見えのフリだったぜ。鶴の恩返しの絶対に覗かないでくださいと同じくらいにな」

「あれは、フリじゃないぞ。鶴の奴はマジだ」

「「えっ!」」

 何で姉妹そろって驚いてんだ

 目の前で驚き「あれ絶対にフリですわよね」「あぁ、日本最古のフリのはずだ」などと言っている

 実際1日目でおじいさんがふすまを開けていれば鶴は、とんでもないオチを用意していたのかも知れない。それは誰にも分からない。

 そんな昔話談義をしていると、ずっと無表情な男ことツイタチが口を開いた。

「ありがたい話だが、結構だ」

「え?」

「あら、ですわ。結構とは修理は不要と言うことですの」

「あぁ」

「それは賢明もとい、要らない遠慮ってやつだぜ。姉貴の魔の手にかかりやがれ」

「本音が出てるぞ」

「遠慮ではない。申し出には感謝するが、修理は今のところ不要なのだ」

「どういうことだ?」

「俺のボディは特殊だ。自己再生機能を持っている」

「マジかよ。姉貴いらずじゃねぃかよ。うらやましいぜ。もとい、めっちゃうらやましいぜ」

「なんか言いましてイツカさん?」

「いや別に」

「本当に自己再生するのか?」

「事実だ」

「機械部品ではなく。生体部品で作ってあるのか?」

「その情報は明かせない」

「興味深いですわね。ですが、それなら体を動かさずに安静にしていた方が修復は早いのではございませんの?」

「先ほどマスターに見せたところ、自己再生機能のデータを取るために、そのまま作業を続けるよう言われた」

「なるほど、骨の髄まで研究者だな、あの女は」

「あぁ、マスターは素晴らしい方だ」

 あのマスターが素晴らしいかはさておき、優秀なんだなと思う。

 自己修復機能なんて、それが本当でアンドロイドだけでなく全ての機械に応用できれば、世界が変わりかねない発明だ。

 見るとツイタチは、もくもくと庭での作業の片づけを終え。俺が渡した洗剤を片手に家の玄関へと向かっていた。

 隣にいるイツカを見る。

「ところでお前は掃除を手伝ったりは・・・・・・しないよな」

「あぁしねぇぞ」

 その返答は予想できた。できたからこそ、質問にしなかった

 俺の言葉の途中からすでに「何で俺が?」という顔をしていたからだ

「お前って自称メイドロボだったよな」

「自称はよけいだぜ。ハイスペックメイドロボだぜ」

 あぁ「廃すぺっく」か、それなら仕方ないな。そう思うことにした

 その時、ツイタチがいなくなった庭で、いつまでもたむろしていた俺たちに、一人の女性が現れて声をかけてきた

「何をしているんだ、お前達は?」

「あ、えっと」

 現れたのは、ずっと母さんの世話をしていた。例の女科学者、今きづいたが、俺は彼女の名前を知らない

「えっと、名前聞いていいか?」

「ですかをつけろよ、このデコ助野郎」

 ここで重要なお知らせを1つ。俺の見た目はデコ助ではない

 とは言え、言われてみれば親の知り合いだ、ため口で話す間柄でもないか。相手があまりに口が悪いのでこちらもあわせてしまった

「えーと、すみません。俺は島津 正月です。貴方の名前聞いていいで……」

「ふん、貴様などに名乗る気はない、ドクターと呼べ。ピノキオが」

 もはや語尾につけてくる言葉が、悪口であるかさえ分からなくなってきているが、それでも仲良くなる気がないことだけは分かった

 て、言うか。もう俺もため口でいいんじゃないか?

「まぁ、いいか。で、ドクターさん。母さんの世話はいいのか?」

「問題ない。その先輩がお前と話してこいといったんだ。デク人形が」

 あぁ、なるほど。忙しくしていた彼女が、庭に出てきたのはそれが理由か、本当に母さんの指示は聞くんだな

「それにしても、よくできてるな」

「え?」

 目の前の女科学者がポツリと、俺たちを見てそう言った

 不意をつかれる。彼女の口から出た初めての否定ではない。肯定の言葉に

 まぁ、俺達を見て言いはしたが、俺が褒められたわけではないのはすぐ分かった

「あぁ、俺もそう思う。どうもこいつ等は、島津 賢朗ってやつの作品らしい」

 女科学者が庭に出てきてから静かになったイツカとナノカを紹介するように俺は一歩横へとずれた

 これによりイツカとナノカ、そして離れた場所に立つ女科学者。双方を隔てるものはなくなった

 実際、この3人?の関係性は謎だ。普通に話をまとめると泥棒にはいられた家の家主と、泥棒本人なわけだが……

 それだけと言うのも、違う気がする。賢朗という人物がそう思わせる原因なのだろう

「ふん、まぁいい。私が話をしたいのはお前だ少年。あとハツカと言ったか、アレがいると都合がいいんだが」

「ハツカ?なんかあったのかアイツと?」

「奴にはツイタチと戦った上でのデータが欲しかった。簡単に言えば感想が聞きたかった、だな。で、お前には」

 彼女は笑う。相変わらず見下したような笑みだ

「初対面の時の、お前の逃走劇についてだ。あれは見事なまでの逃げっぷりだったぞ少年」

「それは、どうも」

「ふん、まぁいい。あくまで先輩はお前と話せと言った。貴様の質問に答えろとは言っていない。まず私の質問からだ。いいなゴミくずが」

「あぁ、いいぞ」

 どうせこちらが聞きたいこと聞いても、答えてくれないのは分かってるしな

「でわ、私たちは下がらせていただきますわ。行きましょうイツカさん」

「おう」

「またお会いしましょう正月さん。あと機会があれば、またですわドクター」

「ふん」

 軽くお辞儀をして去って行くナノカと、「じゃなー」と大きな声でいい手を振って去っていくイツカ

 今思ったのだが、イツカの声が妙に大きいのは、耳が片方 壊れたままだからではないだろうか?

 そんなことを思っていると、目の前の女性が話始めた

 それは思いもよらぬ言葉から始まる

「実際、この件に関しては私はお前を誉めているのだ少年」

「逃げたことにか?」

「あぁ、外にはツイタチがいて家の中には私がいた。ツイタチは背の高い男性な上にアンドロイドだ。それは、あの時点ですでに分かっていた。反面私は女性な上に高い確率で人間だと思っていたはずだ。現に私は人間でか弱い女性だよ。さらに言えばその場でアンドロイド三体に自分を守らせる持久戦もできた。にもかかわらずお前は迷う素振りもなくツイタチの方へとかけ出し、危機を脱した。あそこにはどんな思考があった?やけっぱちか?」

「うーん、やけっぱちを肯定したい気持ちは半分あるな、実際あの時は冷静じゃなかった。だからこそあのタイミングで脱兎のごとく逃げれたわけだからな。もし冷静だったら千途のことを考えてあのタイミングで迷いなく逃げれなかった」

「ほう、では残り半分は何だ?」

「アンドロイドのスペック評価だ」

 一瞬だが目の前の女性が驚いた気がした。眉が動いた程度だが、関心を持ったらしい

「聞かせろ」

 彼女はそう言った。俺は一呼吸あけて話し始める

「これはあくまで俺があの時とっさに下したものだ。気分を悪くしないでくれよ」

「もちろんだ」

「あのツイタチってアンドロイドは機敏である。ただし奇抜ではない。人間ができることを人間以上にするタイプつまり万能タイプのアンドロイドだ。AIはそれほど優秀ではない。ここでいう優秀かどうかの判断は、こちらの戦力であるハツカを基準としている。市販のモノより100倍優秀だ」

「なんだそれは?フォローのつもりか?」

「一応な」

「ふん、で?」

「あの時アンタは「ツイタチやってしまえ」と命令した。余りに曖昧な命令だ。人間でも困る。人間に近い万能型つまり多目的型のアンドロイドなら「命令を受諾できません」ってなるはずだ、できることの選択肢が多すぎるからな。でもならなかったツイタチは、すぐさま眼前の俺たちとの敵対を宣言した。あれはあらかじめ命令がインプットされていたんだ。「メモリーチップを強奪した。女性型アンドロイド2体の捕縛、またそれを援護するモノの捕縛、並びメモリーチップの回収」こんなところかな、「ツイタチやってしまえ」ってのは、命令実行のトリガーでしかなかったわけだ」

「なるほど悪くないが、ツイタチへの評価がまだ高いな。先ほどお前が言った命令ではツイタチは迷う。なぜならツイタチにはメモリーチップの特定はできないからだ。だから私が出した命令は「私の家に侵入したアンドロイド2体の捕縛、またそれを援護するモノの捕縛」くらいだな」

「なら悪くなかったわけだ。俺の判断は」

「なに?」

「あの時俺は一度もツイタチにとって標的である2体のアンドロイドの仲間だと言うことを肯定せず。彼女たちと一度たりとも接触せずに逃げ出した。ツイタチの中での命令が「それを援護するモノの捕縛」であるなら俺はどう扱われる?捕縛対象か?限りなく否だ。あらかじめ行われた命令を忠実に実行するタイプならなおさらだ。これがハツカ達のような考えるタイプなら危険だが、俺はそうではないと思った。アンタの言葉も要因の一つだ「お前ももう部外者ではない」だったか?あの言葉であの場にいる全員がツイタチの標的として再登録でもされたかと思ったがそうでもなかった。ツイタチが何の返答もしなかったからだ。アンドロイドが命令了承の言葉を出さないで命令を変更するはずがない。ならアンタのあの言葉は、俺たちあの場にいた人間に対するブラフだと思った。ここであの場での防衛戦の選択肢は俺の頭から消えた。あの時点でナノカとイツカの戦力は未知数な上、協力するメリットがなかったからだ。そして、あの場からの逃亡を選ぶわけだが、ここまで思考して未知数な上になにを隠し持ってるか分からないアンタの方へ逃げるわけないよな。逃げたところで家の中、地下道へ逃げても一本道で出口は一つしかない。なによりあの時のアンタは本気で怖かった。自分を囮にして罠にはめる獣の顔だった。だからアンタの方へ逃げるなんて選択肢ははじめからなかった訳だ」

「悪くない。実に悪くない。だがだ」

「なんだ?」

「もしあの時私が、逃げるお前を見て「その男を逃がすな」とツイタチに命令していたらどうだ?シンプルな命令だ。ツイタチならすぐさま了承しおまえを追いかける。ツイタチの足は凄まじく速いぞ」

「でも、アンタはそれをしなかった。いや、出来なかった。理由は簡単だよな。ハツカがいたからだ」

 そう、これに関しては確信があった。あの状況で、あの場の誰よりも信用でき、だからこそ後方を任せられた

「ハツカは警護用に作られたアンドロイドだ。万能型と違って命令がなくても護衛対象を守るために常に思考して動いている。しかも最重要護衛対象は俺、AIも優秀ときている。さらにだめ押しで「危険が近づいたら俺は逃げる」とアイツに言っておいた。ここまで揃ってれば、たとえツイタチが純粋な戦闘タイプでも先に動くのはハツカだ。あの場でハツカだけは、俺が逃げる前から、俺が逃げるだろうことを察知し考え、その時どう動くべきかをシュミレートしていたはずだ。あの場にアイツがいたから俺は、何も考えずに走れた。そして逃げれたんだ」

「なるほど、確かにあのハツカというモノの動きは早かった。ツイタチも自己防衛プログラムが発動し、こちらとしても状況を見守ることしかできなかった。結果、残り2体のアンドロイドの逃走まで許してしまった」

「俺としても、あの二人がついてくるとは思わなかった。ところで俺が逃げた後、千途はどうしてたんだ?」

「あぁ、あの女ならずっとニコニコしていたよ。ツイタチとハツカとやらの戦いには歓声すら上げていたし、戦いの後は私にサインまで求めてきた」

「相変わらずだな」

 なんて言うか、一番の謎キャラだな千途は

 そんなことを考えていると目の前で、ドクターがタバコに火をつけていた

「学生の前で吸うなよ」

「あまえるな、吸わない理由にならん。これでもよそ様の家の中や先輩の前は我慢していたんだぞ。この吐き捨てられたガムが」

「それはどうも」

 ふぅーと中空に煙が溶けていく

「あと、お前は勘違いしているようだから言ってやる。ツイタチは万能型アンドロイドではない」

「そうなのか?」

「あぁ、アイツは正義執行型アンドロイドだ。そのようにプログラムしてある。だからあの場で逃げたお前を私が「追え」と命じても、ツイタチはどうしたか分からん。悪事に荷担した可能性が皆無に近いお前を追うことに正義がないからだ」

「ふーん、正義ねぇ。アンタって意外と」

「なんだ?」

「なんでもない。科学者の先輩としてこれからよろしくな。先生」

「ドクターと呼べ」

 ドクターと呼ぶのはなんか恥ずかしい。それに、先生と言う響きが一番しっくり来る気がした

 これも縁だなと思う。まだ名前すら知らないのに

「それじゃ、今度はこちらの質問に答えてもらうぞ」

「いいだろう」

 ようやく長かった一日に、黄昏が近づきつつあった

まだつづく

1がつちゅうにおわるとか

その6でおわるとか

かいておきながら、つづきます

こんかい まなんだきょうくん は

あとがきやあらすじにてきとうなことは

かいちゃいけない ですね

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