G・ガール! 6
六
試合は打って守って、打たれて守られての接戦だった。見る方にしてみれば、一番盛り上がる試合だろう。
理沙子の影響で、選手の事も、チームの事もよく知っていた爽汰は、より楽しんで観ることができた。
そして、野球観戦がこんなに興奮できるものだと知ることができて、今日ここに来て本当に良かった、と思っていた。
ここまで同点で来た両者の攻防も、九回表でジャイアンツがソロホームランで一点差をつけ、とうとう九回裏になった。ここで敵チームが無得点ならば、ジャイアンツの勝利になる。
球場中が一球一球を見守る山場を迎えていた。応援団の声援も、このままで終わるなという気合の入ったものになっていく。
バッターボックスには、いよいよ最終回の打者が姿を現した。
「とうとう最終回ね」
一人目は三振。二人目はセンターフライ。三人目がフォアーボールで、一塁に出たが、すでに二死。ここで一発出なければ、試合終了だ。
ここまでくると、ほぼ試合は決まった、という雰囲気が立ちこめてくる。スタンド席では、早くも混雑を避けるために帰り支度をする姿も目立ち出した。
そんな中、ジャイアンツファンの理沙子は、上機嫌でバッターの動きを見ていたが、不意に話しかけてきた。
「青山君」
試合中ずっと、大きな声で声援を送っていた理沙子の声は、少し枯れている。でも、そんな事は気にしていない様子で、理沙子は爽汰に顔を向けた。
「ん?」
爽汰も、楽しい時間を過ごせて満足だった。自然と顔も笑顔になる。
理沙子は、楽しむ笑顔とは少し違う、微笑むような表情にして言った。
「今日……誘ってくれたの、私が祖父の話したからでしょう?」
四人目のバッターはその時点でツーストライクにまで追い込まれていた。
「いや、そう言う訳じゃ……。たまたまタダ券もらえたから……」
「いいの、わかってる」
理沙子は、爽汰の話を遮るようにして言った。
「ただ、ちゃんと言ってなかったから、ありがとうって」
爽汰は、思いもしなかった理沙子の言葉に、なんと言っていいかわからず、もごもごと口を動かしていた。
バッターの響かせた快音は、惜しくもファールボールになって、二階席の方に飛び込んで行った。
理沙子は、爽汰を見ていた目をそらし、あのね、と小さく言って、もう一度爽汰の目を見つめた。
「私、夏休みになってから、なんだかずっと青山君の事考えちゃってて。なんでかなって思ってたんだけど。多分……わかったの」
爽汰の心臓が、口から飛び出てどっかに飛んで行ってもおかしくないくらいに伸縮した時、またもバッターボックスから飛んで来たファールボールが、今度は爽汰と理沙子の席の上空に飛んで行った。そして、二階席の壁にあたり、落ちて来たボールはすぐ脇の通路にバウンドして、もう一度高く上に跳ね上がった。その放物線の先は……。
もう試合の事は頭から離れていた理沙子はまっすぐ爽汰の顔を見ていた。
「私、青山君の事、す……」
ゴン。
爽汰は、一瞬何が起こったのか、さっぱりわからなかった。
「……す、ゴン?」