G・ガール! 11
三
スポーツセンターを後にした二人は、目的もなく、なんとなくさっき橋を渡った川岸に下り、歩いていた。
家に居た所で何も期待はできないが、外にいれば解決の糸口に辿り着けると言う訳でもない。
日差しは時間を追うごとに強く照りつけるが、川で冷やされた風が気持ち良く、幾分暑さをしのげる。
二人はどちらからともなく、川のすぐ側まで来て、砂利の上で足を止めた。
「……どうしようか」
爽汰は言った。
徳二郎は、静かに流れる大河を、目を細めて眺めながら黙っている。
しかし、爽汰は口から焦る気持ちが溢れ出てくる。
「ねえ。なんかいい案ない? 川に飛び込むとか、ボールを頭に当てるとか、そういう危ないことじゃなくて……。そうだな、なんか霊媒師さんとかに頼んでみたらどうかな。あ、でも、霊媒師ってどうやって探したらいいんだろ。電話帳に載って……る訳ないよな……ねえ、じいちゃんどう思う? 聞いてるの?」
徳二郎は、何一つ身動きせずに、ただ川面を見入っている。
「なんだよ……。ここでいつまで川見てたって、石崎さん戻ってこれるわけじゃないんだよ……」
爽汰はすこし不貞腐れて、その場に座り込んだ。腰掛けた下の大小の石からは、ひんやりとした感触が伝わってくる。
「爽汰」
黙っていた徳二郎が、突然声を出したかと思ったら、何やらかがんで足下の石をまさぐっている。
訝しそうな顔で見ている爽汰を尻目に、いくつかの石を拾っては捨てを何度か繰り返した。
「あったあった」
目当てのものを見つけたのか、爽汰ににやっと笑う。
「爽汰、見てろ」
言われるまま、爽汰は祖父が何をするつもりかと見ていた。
右足を一歩引き、拾った石を持った右手を大きく横に構えた。
「そりゃ」
そうかけ声をあげ、右手を水平に動かして、石を川に向かって投げ入れた。
「おおお」
爽汰は思わず感嘆した。子どもの頃よく競った、水切りという遊びだ。
その石は、水面を弾けるように、二回、三回、四回、最後にもう一つ、全部で五回も跳ねて沈んで行った。
「じいちゃん、うまい!」
素直な気持ちでそう言った爽汰は、気づかないうちに立ち上がっていた。
適当な石を手に取り、徳二郎の見よう見まねで投げてみる。
石は、五メートル程先で、ポチャという音と水しぶきをたてて落ちて行った。
「あれえ」
そう言って首をかしげると、わっはっは、と徳二郎は笑った。
笑われて、爽汰はムキになって繰り返してみた。
手首のスナップをきかせてみたり、わざと遅い速度で投げてみたり。
何度も何度も石を投げ入れるが、どうやっても二回までしか跳ねさせる事ができない。
「おっかしいなー。俺、これ昔は得意だったような気がするんだけど……」
徳二郎は、もう一度手元の石を川へ投げ入れた。
今度は六回跳ねて沈んだ。
「覚えてねーが、爽汰。おまえがまだ、小さな小僧だったころ、よくじいちゃん家の近くの川で、競ったっぺよ。どっちが多く飛ばせるかって」
「……あ」
爽汰は思い出した。