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G・ガール!  作者: りき
11/28

G・ガール! 11

 スポーツセンターを後にした二人は、目的もなく、なんとなくさっき橋を渡った川岸に下り、歩いていた。

 家に居た所で何も期待はできないが、外にいれば解決の糸口に辿り着けると言う訳でもない。

 日差しは時間を追うごとに強く照りつけるが、川で冷やされた風が気持ち良く、幾分暑さをしのげる。

 二人はどちらからともなく、川のすぐ側まで来て、砂利の上で足を止めた。

「……どうしようか」

 爽汰は言った。

 徳二郎は、静かに流れる大河を、目を細めて眺めながら黙っている。

 しかし、爽汰は口から焦る気持ちが溢れ出てくる。

「ねえ。なんかいい案ない? 川に飛び込むとか、ボールを頭に当てるとか、そういう危ないことじゃなくて……。そうだな、なんか霊媒師さんとかに頼んでみたらどうかな。あ、でも、霊媒師ってどうやって探したらいいんだろ。電話帳に載って……る訳ないよな……ねえ、じいちゃんどう思う? 聞いてるの?」

 徳二郎は、何一つ身動きせずに、ただ川面を見入っている。

「なんだよ……。ここでいつまで川見てたって、石崎さん戻ってこれるわけじゃないんだよ……」

 爽汰はすこし不貞腐れて、その場に座り込んだ。腰掛けた下の大小の石からは、ひんやりとした感触が伝わってくる。

「爽汰」

 黙っていた徳二郎が、突然声を出したかと思ったら、何やらかがんで足下の石をまさぐっている。

 訝しそうな顔で見ている爽汰を尻目に、いくつかの石を拾っては捨てを何度か繰り返した。

「あったあった」

 目当てのものを見つけたのか、爽汰ににやっと笑う。

「爽汰、見てろ」

 言われるまま、爽汰は祖父が何をするつもりかと見ていた。

 右足を一歩引き、拾った石を持った右手を大きく横に構えた。

「そりゃ」

 そうかけ声をあげ、右手を水平に動かして、石を川に向かって投げ入れた。

「おおお」

 爽汰は思わず感嘆した。子どもの頃よく競った、水切りという遊びだ。

 その石は、水面を弾けるように、二回、三回、四回、最後にもう一つ、全部で五回も跳ねて沈んで行った。

「じいちゃん、うまい!」

 素直な気持ちでそう言った爽汰は、気づかないうちに立ち上がっていた。

 適当な石を手に取り、徳二郎の見よう見まねで投げてみる。

 石は、五メートル程先で、ポチャという音と水しぶきをたてて落ちて行った。

「あれえ」

 そう言って首をかしげると、わっはっは、と徳二郎は笑った。

 笑われて、爽汰はムキになって繰り返してみた。

 手首のスナップをきかせてみたり、わざと遅い速度で投げてみたり。

 何度も何度も石を投げ入れるが、どうやっても二回までしか跳ねさせる事ができない。

「おっかしいなー。俺、これ昔は得意だったような気がするんだけど……」

 徳二郎は、もう一度手元の石を川へ投げ入れた。

 今度は六回跳ねて沈んだ。

「覚えてねーが、爽汰。おまえがまだ、小さな小僧だったころ、よくじいちゃん家の近くの川で、競ったっぺよ。どっちが多く飛ばせるかって」

「……あ」

 爽汰は思い出した。

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