表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

時限爆弾

作者: 恋する猫
掲載日:2014/11/26

今日は、いつも一緒に弁当を食べてる奴が、呼び出しを喰らっていた。

だから僕は、ぼっちだと思われないよう誰も居ないであろう屋上に。

初めて来るので、屋上へ通じるドアの前で意味もなく深呼吸していた。

少しだけドキドキする。

意を決してドアを開ける。

街の景色よりも僕の目がいったのは…

腰ほどまである銀髪を靡かせ、アイスブルーの瞳に涙を浮かべている美少女。

言葉を失い、見入ってしまった。

美しい…

思考が止まったかのように、それしか思えなかった。

手の届かない場所に咲く、美しく咲き誇る一輪の花。そんな印象を持った。

茫然としていると、彼女はこちらに気付いた。

僕は一歩も動けず、ただただ彼女の唇が動くのを待った。

「えっと、ごめんなさい…邪魔でしたか?」

てっきり彼女を見つめる僕に、悲鳴でも挙げるのかと思っていた。

それどころか、謝られてしまった。

「え、いえ、その…僕のほうが、邪魔じゃないですか?」

彼女は目を見開いた。

「いえ、私はここに居座っていたわけですし…」

僕と彼女は目を合わせ、吹き出した。

彼女の薄桃色の唇が、緩やかな弧を描く。

「あの…僕、二年の神谷(かみや)凛斗(りんと)です」

ぎこちなく自己紹介をする。彼女は微笑んだ。

「三年の星崎(ほしざき)瑠奈(るな)です。年下…だったんだね」

「えと…星崎先輩はお弁当ですか?」

年上だと聞き、一層緊張してしまう。

「はい、今から食べようかと」

「じ、じゃあ、一緒に食べませんか!?」

変に噛んだり、声が大きくなったりした。

ああ、恥ずかしい。

「是非。あと、無理して敬語使わなくても…星崎先輩じゃなくて、瑠奈ちゃんとかでも」

「なら、星崎さんで」

流石に先輩にちゃん付けする度胸はない。

気を遣わせてしまったか…?

それから、星崎さんとは他愛ない会話した。

分かったのは、彼女は友達を作らずに毎日一人で屋上にいること。

失って悲しいものは作らないの、と彼女は寂しそうに笑った。

明日もここに来ると約束してから、僕は教室へ戻った。

翌日、友達にちょっと仲良くなった子と一緒に食べる、と言って屋上へ。

楽しく会話していても、聞けないことはあった。

最初に見たあの涙。あれは、何を悲しんでいたのだろうか?

次の日も、次の日も、僕は星崎さんと話した。

いつの間にか、彼女を好きになっていた。

いや、これは一目惚れで、最初から好きだったのかもしれない。

でもそんなこと、どうでもよかった。

星崎さんといられるのが、嬉しくて、幸せで…この時間がもっと続けばいいのに。

それだけを毎日祈った。

ある日、彼女はいった。

「神谷くんは、私と友達?」

少しだけ、悪戯気味に応えた。

「さあ、どうだろ」

「なら、友達にならないで。私とこれ以上親しくならないで」

さよなら、と彼女は走り去っていった。

それから彼女は、屋上に来なくなった。

5日経つと、放課後に僕はとうとう三年の教室へと向かった。

「星崎先輩、いますか?」

先輩は、丁寧に答えてくれた。

「星崎さんは確か、隣のクラスよ」

礼を言って、俺は星崎さんのクラスへ。

「あの、星崎先輩を呼んで下さい」

「星崎さん?ちょっと待ってねー」

星崎さーん!先輩は派手に呼んだ。

周囲からの視線が痛い。

僕は星崎さんの手を掴むと、屋上まで走っていった。

「親しくならないでって言ったでしょ…」

困惑した様子。

「納得出来ないんだ。出来れば理由を…」

そこで言葉を止めたのは、彼女の瞳から透明に光り輝く涙が落ちたから。

「え、あ…えと、ごめん」

取り敢えず、謝った。

星崎さんは涙を拭った。

そして、制服のブラウスを胸の下まで捲りあげた。

「ほ、星崎さん!?」

慌てて目を瞑ろうとして、やめた。

彼女の陶磁器のような肌に、くっきりと線があった。お臍を取り囲むかのように引かれたそれは、扉のよう。

星崎さんはそれを、本当に開けた。

カチ、カチ、カチ。

そこにあったのは時計。

今尚動き続けている。

カチ、カチ、カチ。

「私、時限爆弾なの」

その言葉を、直ぐには飲み込めなかった。

「明日のこの時間、爆発する。規模は半径2メートル程度」

爆発。それは、明日星崎さんは死ぬ、ということ。

「神谷くんと過ごしたこの屋上で、死のうと思う。私─────神谷くんが、好きだった」

嬉しくて、でも悲しくて。僕はひたすらに涙した。

僕も好きだよ。そう伝えたいのに、出てくるのは嗚咽。

僕は慌てて涙を拭った。しかし、それでも涙は溢れ出す。

「泣きたい、訳じゃ…ない、のに」

星崎さんは、静かに僕の背中を撫でた。

「ありがとう、悲しんでくれて。でも、悲まれる程私も死ぬのが辛くなる。だから私は…友達なんかいらなかった」

知らなかった。僕が、星崎さんと親しくなりたいと思うことが、彼女を苦しめていたんだ。

ようやく嗚咽が止まる。

「ごめん。星崎さんを、知らない内に苦しめていたんだね」

星崎さんは微笑んだ。

「謝って欲しかった訳じゃないよ。大好きな君に、知って欲しかっただけ。それだけだから」

じゃあね、と去って行こうとする彼女の背中に、僕は伝えた。

「僕も、星崎さんが好きだ!」

星崎さんは振り返って、それからにっこりと笑った。

とても嬉しそうで、思わず笑い返してしまった。

「ありがとう」

その声は、少し震えていた。


翌日の放課後、僕は屋上に来た。

ドアノブに手を伸ばし、考える。

この行動が、彼女を苦しめていたら。

首を振って雑念を振り払い、ドアを開いた。

屋上の真ん中に、彼女は佇んでいた。

「やっぱり来たんだ。でも、それ以上近付かないで。私はもうすぐ、爆発する」

しっかりとした声を掛けられ、一瞬怯んでしまった。

でも僕は、星崎さんに駆け寄る。

そして彼女を────抱き締めた。

「な、んで…爆発に、巻き込まれたら死ぬんだよ…?死ぬのが、怖くないの?」

「怖いよ。でも、星崎さん……瑠奈を、失う方が怖い」

彼女は静かに目を閉じた。

「あと、5秒」

僕は瑠奈に─────キスを、した。

瞬間、眩い光が僕らを取り囲んだ。

そこから先は、僕には語れない。

このとき、死んでしまったからだ。

でも、後悔はしていない。

大好きな瑠奈と一緒に居られて、よかった。

瑠奈、きっと来世でもまた会おう。

「ええ、必ずよ」


END


初の恋愛小説、楽しんで頂けましたか?

何故星崎瑠奈が時限爆弾だったのかは、知りたい人が居れば教えます。

ありがとうございました


2014.11.26

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ