オアシスにて 後
水晶のような透明感のある身体。光に反射して七色に煌く鱗。紅い宝玉のような眼。
手足のない優美な曲線を描くソレはまさしく蛇。
ただ私の知る蛇とは大きさが桁違いにでか過ぎるのだが…
これは睨まれてるよね?絶対に睨んでるよ!
見上げる視線に見据える紅い目。哀しいかな身動きできない。これが蛇に睨まれると云うことか…!!
って冗談じゃなくこれは食べらる一分前なんじゃないか!?
身動きできず視線もそらせない私は瞬き一つで命が終わる錯覚に見舞われる。
敵か味方かの前に本能が目の前の生物を拒絶していた。
長すぎるように感じた沈黙の睨みあいは水晶の蛇がゆっくり首を擡げたことで終了した。
迫る蛇の顔に未だ動けない私は気絶しそうだ。
チロチロと赤い舌が出入りしてる。今にも大きく口を開けのみ込まれてしまいそうだ。
終わりを覚悟した私はギュッと目を閉じてしまった。
早くこいやぁ!!!っとやけくそ気味に念じて、でも弱気にも痛くしないでほしいと祈っていると下から突き上げるよう風を感じた。
ヒュードドドド・・・
何が起こったのか分からない。だが突然の突風に恐れをなしたのか小さな呻き声のようなものを発して地中深くに潜り込んで姿を隠してしまった。
ひとまず一安心したが何が何だか分からないし、風は突きぬけ続ける始末。何より突風のおかげで私の体は宙に浮いているのだ。しかも巨大蛇よりもはるかに高い所まで。
風は止んでほしいが止めば落下死は免れない!
一難去って再び一難やってきた…
突きあげる風は突然始まり、そして唐突に終わりを告げた。
さっきまで強烈に吹き続けていたのにピタリと止まったのだ。
そこから急激な落下の始まりだ。
「うおえぉおおぉあああああぁぁぁ!!!!!??」
絶叫である。
正直に言おう。その時私は絶叫の上号泣していた。乙女の秘密でちょびっと漏らしたのは黒歴史だ…
あわや激突という寸前でまたも事態は一変する。
ブシャアァー!!!
風の次は水が噴き、突き上がったのだ。
案の定私は空に人に舞い戻り、炎天下でも乾けぬほどずぶ濡れになったのである。
勢いは衰える気配を感じさせずむしろ増しているように思えた。
地上に降りるすべを持たない私は水の勢いから僅かに覗く地上をみて唖然とした。
先ほどまであった砂漠は姿を変え、肥沃な水源へと変貌していたのだ。
このときまで私は勘違いしていた。引き継いだのがオリキャラの容姿だけなのだと。
大地の変貌の一因はまさしく自分だったのだ。