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平凡希望しかし現実苦し  作者: 澤木弘志
第一章 優しき愚者 ~朱ノ篇~
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峡谷前

短いです。進まないです

小さくなった手乗りルビを見て溜息を吐く。

もうどうにでもなれっといったやさぐれ感がふつふつ湧いてくるが仕方ないと諦める。

兎に角先に進まなければと前を見るソル。


眼前に広がる茨森が行く手を阻み、その先には峡谷が見えている。

わずかな隙間から覗いただけなので規模はいまいちわからない。このまま茨森を抜けたとしても峡谷をどうやって越えたらいいのか悩みだす。


(やはり、他の道を探すべきか?)


境界線上に一直線に立ちはだかる茨の道以外にバーレシア王国に向かうとしたら海を渡りペラエス国経由からバーレシア王国に向かうしかない。

そのルートだといくら急いだところで一日、二日ぐらいに国内に行けるとは到底思えない。


スウェンは一体どういう道を進んだのだろうか。




僅かな希望に縋って茨を道沿いに進んでみる。

いくら進んだところで茨は続く。嫌になるほど茨を見ているとある一角だけ変色した茨が連なっている個所があった。


地図で言う所のペラエス国とバーレシア王国の境、唯一永久砂漠と繋がっているペラエス国との国境辺りだ。

鉛色の茨が、褐色に変色しているのだ。形も違い鋭い棘も柔らかいものになっている。

おそらく種類自体が違うのだろう。

何故ここだけと思ったが今は先を急ぐべきだ。考察は後で良い。


腕に巻きつくルビを茨で傷つけないように腕を庇いながら進む。

人が通れるほどの隙間はないが棘も柔らかいこともあり簡単に押しのけることが出来た。

多少の切り傷はできたが難なく奥へと進む。



茨の奥にはやはり峡谷が待ち構えていた。

V字に抉れた深い谷で下が暗くて見えないほどだ。その下を流れている水の音は激しく聞こえるため水の勢いもものすごく速いのだろう。

言うまでもないが落ちたらいっかんの終わりだ。


向こう側に渡る橋もない峡谷だが、一か所だけ蔦が向こう側と繋がっている場所がある。

それがあの変色した茨の向こう側だったのだ。


おそらくスウェンもここから此方側に渡ってきたのだろう。

その時にはすでに怪我も負っていただろうにものすごい根性だ。



近づいてみると蔦は人間大ほどの太さがありこれなら途中で千切れる心配はないだろう。

ただここでも命綱なんてものはなく、自身の腕力の身で進んでゆかなくてはならない。

一抹の不安を抱えながら進みたいところだが、真っ暗な中で進むのは自殺行使そのもの。



夜が明けるまでここで野営をしなければならなかった。




火を起こして焚き火の前に座る。

スウェンがあまり進んでいなければいいのだが、姿を消してもう一日が過ぎる。


ソルは不安に揺れて眠ることが出来なかった。







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