名付ける
ソルは恐る恐るラミュースネルの体に触れてみることにした。
様子からみると先ほどの恐怖は塵と消え、残念な子を見るような感じになっていたからだ。
ラミュースネルの方も期待したようなまなざしで紅い瞳は心なしかキラキラしている。
「…触れても、良いか?」
一応聞いてみた。
わくわく感を隠せぬほどキラキラ瞳で頭を上下に振って了承の意を伝えるラミュースネル。
どうやら此方の言葉を理解しているらしい。
水晶のようにキラキラしている体を触れると見た目通りの冷たさが指先から感じられる。
爬虫類のような冷たさのようでもなくどちらかと云えば鉱石のような冷たさに似ている。なんだか気持が良くて撫で続けるとラミュースネルはもじもじとし始めた。
もしやと思ったが顔を見上げる。
若干顔の辺りが赤くなっている気がする。
(照れたのか!?)
なんとも人間らしい行動を取る蛇だ…
呆れを含んだ二度目の邂逅を終え、一人と一匹は再び向き合った。
懐き具合から移動手段として乗せていってもらえるかもしれないといった期待で見つめるソル。
移動速度がどのような早さなのかは分からないが森を突き抜けるならともかく荒野を渡る分にはソルが走るよりも速いのではなかろうか。
「悪いが少し付き合ってくれないか?」
言葉をかける。
理解したのか、それとも言葉をかけてもらえた嬉しさを優先した結果なのか即答の如く勢いよく上下に頭を振る。
本当に分かっているのか疑問だが一応了承してもらえたようなのでそのまま事を進めることにした。
滑りそうな身体だが僅かな鱗の突起を足で引っ掛けて乗る。
見た目通り大きい体の上から見る景色は家の三階窓から見上げるのと大差ない気がする。むしろ何の手すりもない心もとないこの場所での緊張感は比べるほどではない。
はっきり言って怖い。
時間の余裕が無い緊急事態のため恐怖心を押し殺して西へと向かう。
そこでふと思った。
「…名前…いる?」
名前ないと不便じゃないかと思って聞いてみたところ。
ソルが乗っているのも忘れ思いっきり後ろを振り返りキラキラ光線を放ってくる。
勢いよく振り返った御蔭でずれ落ちそうになるのをしがみついて止まる。
「分かった!分かったから落ち着こう!!」
本当に焦る。
こいつに言葉をかけるときは絶対に乗っていないときにしようと固く決める。
名前をつけると言ってもどうしたものかと悩むソル。
時間もないのに何をしているんだと思われるが提案してしまったに決めないのでは間違いなく落ち込むことが予想されるため仕方なく考える。
ラミュースネル。
蛇。
水晶。
宝玉…
特徴を流し見て名前を連想させてみる。
センスがあるのかどうかは別として呼び続けるなら簡単なものが良い。
となると…
「“ルビ”お前の名前だ」
紅い宝玉のような瞳から連想されたルビーをもじって“ルビ”と名付ける。
自分でも安直だと思いながらなかなか良いかもとソルが自分で満足しているとラミュースネル改めルビは頭から土に突っ込んだ。
一端降りていたため被害はないがあれでもし乗っていた場合間違いなく土に埋まっている。
そこことを踏まえながら気にいらななったのかと戦々恐々としながらルビを見る。
土から半分だけ顔を覗かせ、半分瞳が隠れている中でソルを見るルビは先ほど見たよりも顔が赤くなっている。
全力で照れたらしい。
感情豊かなその姿にソルは疲弊した。
(照れるたびに土に潜らないでくれ…)
切実だった。




