問う真実
スウェンとソルは向き合って食卓に付いた。
スウェンは両掌を合わせ口元に近づける形で祈りの言葉を口にする。遅めの昼食時にもしていた行動だ。
日本的に言えば「いただきます」になるのだろうか?
あの時はスウェンが急いでいたのか早口なうえぼそっと喋るような小さなものだったため聞きもらしていた。
書斎にいけば習慣などの書籍から内容や意味を知ることが出来るが会話のきっかけになればとスウェンに尋ねてみることにした。
「…さっきの言葉はなんだ?」
「さっきの言葉?もしかして“ホウロレル”ですか?」
「“ホウロレル”?食前に口にしていたのはそれか」
「はい。ソル様はご存じないのですか?」
不思議そうに問いかけるスウェン。若干の上目遣いに性別を忘れてときめいた。
ごほんっと咳払いで自分を誤魔化し、様付けに憂鬱になりながらもスウェンに知らないと問い返す。
「“ホロウレル”のホロウは豊穣の神の名前です。食事前に食事に有りつけることへの感謝と祈りをホロウ神に捧げるんです」
「なるほど。だがホロウは分かったがレルはどういう意味だ?」
「レルは感謝や祈りを意味していて元はホロウ神の眷属で有った者の名前だったそうです。レルと呼ばれていた若者が日頃事あるごとにホロウ神に感謝の言葉を告げ、その功から眷属へと召し抱えられました。その行動から“レル”は感謝の意味として知られるようになったとか」
「ほぉ。スウェンは博識なのだな」
すらすらと説明に興じる様からソルは博識だと思い、教師のようにも感じて関心した。
そう告げられたスウェンは首を横に振り苦笑い気味に応える。
「いいえ。コレはただの受け売りで、僕はそのままにお伝えしただけです。博識なんてとんでもない…」
「じゃぁ、誰の受け売りだったんだ?」
「僕を育ててくれた養い親で里の長をしていた方です。里の中でも長い生きで、生き字引としても皆に頼られていて僕が最も尊敬していた人だったんです」
哀しげに養父の事を語るスウェン。
哀しげではあったが尊敬していた人物の事を思い出して少し嬉しそうだった。
ソルはスウェンの表情を見て彼の人がすでにこの世にはいないと察した。その死がいつのものかは分からない。スウェンが逃げることになった時ではないことを祈った。
スウェンは食事を殆ど食べ終え、まだ半分ほど食事が残るソルをみて遠慮がちに尋ねた。
「…あの、ソル様」
「ん?」
ソルはスープを口に運びながら問いかけてきたスウェンを見る。
「あの、お聞きしたかったことがあるのですが…よろしいでしょうか?」
「私で答えられる範囲ならば構わないが」
「…」
スウェンの真剣な表情にソルは食事の手を一時止める。スウェンは一度固く唇を噛みしめ、一音一音確かめるように言葉を紡ぐ。
「ソル様は…何者なのですか?」
「…何者か、か。どうしてそんな質問を?」
見知らぬ森に独りで住んでいるところを見れば当たり前と云えば当たり前の質問なのだがソル自身どう答えたらいいのか迷っていた。ソルは内心ドギマギしながら問い返す。
「僕は里を出った時東の方へと逃げて行ったんです。意識が朦朧とした中でもある目印のおかげで東の方角に進んでいたことは覚えています。里から東の方角にこんな森はないはずなんです」
「…」
「東の先に有る筈なのは…永久砂漠と呼ばれる不毛大地だったはず」
「…その永久砂漠であるはずの場所には森があるのがおかしいと?」
「ええ。それにこの森は異常です。けっして悪いという意味ではなく良いという意味でこの森はおかしいんです」
目線を下にして答えるスウェン。ソルはますます眉間にしわを寄せる。不快に思っているのではなくただ焦っているだけなのだが傍から見れば無表情の中に不機嫌さがでた表情になっている。
その表情を覗き見たスウェンは生きた心地がしない。初見の時同様重苦しい程の威圧が圧し掛かってくるのだから。
それでもスウェンはソルに問わなければならなかった。
「なぜこの森はおかしいのだと云うんだ?」
ソルは疑問に思ったことを聞き返して考える。自分から見れば多少木々が大きいくらいで異常があるとは思えない。
「この森は…“豊”すぎるんです」
「…?」
「こんなに瑞々しい草木や豊富な水、多種多様で元気な動物の姿…そんな森なんて僕は知りません。世界中探してもこんな豊かな森なんて存在しないでしょう。その森がなぜ永久砂漠のある場所に存在しているんですか?」
威圧を押しのけてスウェンは強い眼差しでソルに問う。
ソルは言葉に詰まった




