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平凡希望しかし現実苦し  作者: 澤木弘志
第一章 優しき愚者 ~朱ノ篇~
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方針決定

ソルはバーレシア王国の内情報が載った書籍を閉じて、机の上に肘をついて項垂れた。


(国王が急死し皇太子が行方不明なんてどこかの小説にでもある陰謀の始まりみたいじゃないか)


ソルは独り愚痴る。

急展開すぎたこともあるが何よりも胡散臭い状況に頭を悩ませた。


すぐに此方まで影響が出るとは考えにくいが、いずれ何らかの形でやってきそうでならない。

ソルはバーレシア直接の影響よりもスウェンの同胞、彼の地に住む獣人たちの影響が強いのではないかと考えた。

理由はスウェンのことだ。スウェンを保護しなければ近隣の国、というよりも外の世界などソルにとっては無関心であり影響のないものとして感じていただろう。

それが何の因果か獣人のスウェンを助けたことにより多少なりとも関心が向けられた。

まだスウェンの性格を把握してはいないが、同族の危機とあらば彼は何らかの行動に出るのではないかと推測している。

もちろんソルに遠慮して何の行動も取らないかもしれないし、ソルには秘密裏に動きこちらには影響が無い様にするかもしれない。


だが一度でも命を救った責任がある。だから最後まで面倒をみるのは義務だとソルは考えている。


そうなれば必然的に影響を受けることになり、その覚悟も必要になるのだ。

かといってソルに何か出来るとは思っていない。

能力があっても万人を救うとか、国という大きなものに立ち向かえるかと云えば答えはNOだ。

ソル本人はいたって普通であり平凡。何より平和な国しか知らないのだ。

しかも元女で生まれてこのかた争いらしい争いをしたこともない。人見知り気味で内気な性格上無理な話だ。


それでも救いたいと思う気持ちはある。

何が出来るかと言われればさほど多くないだろう。

出来ることと云えばこの地に住まわすことぐらいだろうか?

元々は不毛の砂漠地帯だったのだ、どこかの領土という訳ではない。もちろんそのことは情報で確認済みだ。

今は豊かな自然溢れる場所になっているし、なんだかんだと能力で新種改良した結果食料も豊富だ。

住むには最高の場所だろう。

広い森だ。自分一人では有り余るし住んでもらえるなら創った甲斐があるというもの。



(とりあえず方針としては住処追われたりしている者(獣人)が救いを求めてきたらこの森に住まわすということにしよう)


求めてこない限り行動には移さないと暗に告げているのはあまり厄介事を抱え込みたくないという思いと元来の人見知りが理由だ。

それに自ら行動を起こすという勇気もない。受け身な日本人らしい考え方だった。





ソルは書斎から出て、階段を下りる。

途中スウェンの様子を見ようと彼の部屋の前で止まると先ほどのうなされている声は聞こえない。

少しドアを開け中を覗きこむと静かに寝息を立てるスウェンを見つけた。

どうやら今度は熟睡出来ているらしい。

もう少し寝かせようと静かに部屋を後にする。


一階に下りて夕食の支度を始める。

時間は大体七時くらいだろうか。今からすると大体八時前には食べれるだろう。そのぐらいにスウェンを起こそうと思いながらソルは腕をまくり食糧庫の扉を開けた。


キッチンの奥にある小さな扉の中は約二畳ほどの食糧庫となっていた。

中は涼しく、手作りの調味料や野菜、穀物が置かれ一部はワインセラーのようにお酒が並んでいる。

入口近くにある小さな箱の中は氷で敷き詰められた冷凍庫になっている。

この食糧庫は初期の段階ではなかった部屋だ。

野菜や穀物が採れ保存する場所を確保するため室内に作ることになったのがこの場所だった。

別個で冷蔵庫を作ることも考えたが部屋を増やして直接食糧庫とした方が手間がかからないためそうなった。


ソルは食糧庫の中にある幾つかの野菜と昼間発酵させていたパン生地を取りだす。

パン生地は形を整えオーブンに入れ焼き上がるのを待つ。

その間、人参とブロッコリー、玉ねぎでコンソメスープを作り、作り置きの豆腐と野菜を炒めピリ辛風味で味付けをする。

出来上がり頃にパンを取りだすときつね色に焼き上がったパンが香ばしい香りを漂わせている。

食卓に並べて時間を確認すると大体予想どうりの時間だった。


階段を上がりスウェンの部屋を開ける。

眠っているスウェンの体を揺すって起こしてみた。



「スウェン、起きろ夕飯だ」



「ん…んう」


スウェンは目を擦りながら起き上がる。その時耳の羽毛がピクピクと動いているのを見て無性に触りたくなるソル。

変態行動を抑え込むためスウェンに背を向けて降りるように告げた後逃げるように部屋を出てゆく。



寝ぼけた目でソルの行動を見ていたスウェンは首をかしげながら乱れた衣服を整え部屋を出た。




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