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平凡希望しかし現実苦し  作者: 澤木弘志
序章
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姉妹神

昼寝をして気付いたらどこのデジャヴか真白い空間

なんなのこれ?



前回とは違って身体の感覚があって視線を下に移すと両手が見えて握ったり広げたりしてみる。

若干息苦しい違和感のようなものを感じたりはするが至って普通。

どうしたもんかと周りを見渡しても何の変化もなくただひたすら白い空間が広がっているだけだった。

早く目覚めないもんかとため息をついて瞬きをした。


すると目の前に白いゆったりとしたドレスを身に纏った妙齢の美女が姿を現した。


「は!?」


突然過ぎる。前振りを希望する。

呆然とその美女を見つめる。

優しげな雰囲気を持ち豊な白金の髪が足元まで伸びている。黄金色の瞳は穏やかな知性を帯びて私を見つめ返している。

まさしく女神のような美女だ。


≪はじめまして。わたくしはユハサメーヴェと申します。貴方に謝罪を申したくこのような場を設けました。突然の事で驚いてしまったでしょう。ごめんなさい≫


想像どうりの優しげで鈴なる声に無意識に胸が高鳴る。

いきなり膝を折り崇めたくなる感覚に襲われた。

首を振って気を確かにして問いかける。


「え、えっとはじめまして…あの、謝罪とは…?」


戸惑いがちに疑問をぶつける。

すると彼女は後ろを確認するように目線をずらす。

すると後ろから忌まわしき元凶の幼女がおずおずと姿を見せた。

最初に見た無駄に威厳を放っていた姿とはまるっきり違いどこか怯えているようにも見える。


≪貴方にはこの子のせいで多大な迷惑をかけてしまって≫


女神様は申し訳なさそうし私を見たあと幼女に対して少し憤りを感じさせながら言葉をつづけた。


≪この子は先走りやすくて人の話を聞こうとしないし、うまく伝えようとしないから貴方には突然のことで戸惑いや憤りを感じていますでしょう?管理外の世界の住人であった貴方を誤って死なせてしまった上まともな説明もないまま異界移転を行うなど…≫


≪ごめんなさい。私の監督不届きが原因で貴方に不快な思いと迷惑をおかけしたことを改めて謝罪します≫


女神様はゆっくりと頭を下げた。

後ろの幼女はおろおろとうろたえっぱなしである。心なしか涙目だし


「あの、とりあえず頭を上げていただけませんか?この状況にも追いついていない状態なもんで整理させてほしいんですけど…」


≪あぁ、そうでしたね。すみません。まずははじめから説明を行わなければなりませんでした。まずこの子、アルサノーヴェと私の関係を御伝いしなければなりませんね≫


苦笑い気味に女神様に話しかけると女神様は少し困ったような笑顔で語りだす。


≪私はこの子の姉になります。そして私たち姉妹は貴方が送られた異世界の神と呼ばれる存在なのです。アルサノーヴェは見た目同様好奇心が強く他の世界に度々覗いたりしていたのですが、貴方のいた世界に好奇心に負け干渉をしてしまいその影響で貴方を死なせてしまったのです≫


≪管轄、管理外の世界に干渉するのはご法度であり干渉のせいで死なせてしまった貴方を蘇らすこと叶わないため、世界の循環を保つため貴方の魂をこの世界に招いたのです。その対応と管理を罰としてこの子に任せてしまったことが何よりの間違いでした≫


女神様はため息交じりに落胆の表情を浮かべる。

その様子を見た幼女は慌てて女神様に取りすがった。


≪姉上!そのような…≫


≪貴女は黙っていなさい!≫


≪はい…≫


即言葉を遮断されたうえ怒られてしまった幼女は泣きだす一歩手前だ。若干可哀想に思えてしまうが同時にざまぁっと思ってしまった。やっぱり自業自得だよな。


≪…と云う訳でして、大雑把な対応のせいで本来ならば移転地も人里に近い場所になるはずだったのですが辺境の果てでその上生存するには適さない過酷な場所へ送ってしまって。後で気づいて近場に生存可能の場所を移動させたのですが力及ばず…≫


じゃぁあのオアシスは幼女ではなく女神様のおかげだったのか。幼女はハチャメチャな所に送っただけと…殴ってもいいかな…


「…ある程度は理解できました」


つまり全部幼女が悪いっと。


≪それと…他にも貴方に謝罪しなければならないことが…≫


それ以上にまだ何か!?

戦々恐々としながら女神様の言葉を待つ。


≪貴方の希望を聞かず勝手に容姿や能力をつけて転生させてしまい、その上付け加えた能力と既存の能力を無理に押し付けてしまったがゆえに…その…≫


言い淀む女神様。

その言葉の先が怖い。だからか、無意識に元凶を睨んでしまった。

睨まれた幼女はもう泣きだしている。睨んだ顔怖かったのかな?


≪一部身体的に不適合が発生してしまい、多少の改善は可能ですが完治には程遠く…≫


「はい?不適合??」


なんか障害でもあるのか?

身体を見渡し動かしてみても異変は感じられない


≪その…表情がですね。出にくいと云うか、表せないかと云うか…≫


「…つまり、無表情?」


≪…はい…≫



泣いてしまいそうだった。

なぜそこ!?とも思った。

確かに足が動かないとか腕が無いとかよりはずっといいかもしれない。

でもコミュニケーションはある意味絶望的だ。

なぜなら私は生来口下手で相手との交流に表情とかが大いに役立っていたのだ。

駄目だ。もう誰とも交流できない…そんな自信がある。嫌な自信だ…








≪貴方には本当にご迷惑ばかりかけて申し訳ありません。直接貴方にあらゆる改善を施したいのですが管理世界であるこの世界での制限もありそれも叶いません。ですから僅かばかりですが何かお詫びをさせて頂きたいのです。叶えられる範囲で何か要望はありませんか?≫


少しばかり絶望感を味わい、なんとか持ち直した私に女神様は要望を聞いてきた。

幼女と違って私に意見を聞いてくれる。もうそれだけで泣きそうだ。

にしても何をしてもらおう?

出来る範囲って何かな?そう思って尋ねると


≪そうですね。貴方本体に対することは基本できません。無理に施すと貴方の魂が傷つき存在自体が消滅してしまう恐れがあります。くわえ加護も同様に貴方に授けることも出来ないのです。これはこの世界に転生した時点で加護を与えているためそれ以上は魂が受け付けることが出来ないのです。それ以外であればなんとか叶えられるかと思います。最初は土地改善を申しようかと思ったのですがすでに自力でなされてしまった後ですので…≫


「そうですか…じゃぁ、情報とかを教えて頂くことは出来ますか?」


≪情報ですか?≫


「はい。もう引きこもることは決定なんですが、世界の常識や情報とかあればいつか何かあった時役立てるかなって」


≪なるほど。そうですね。世界の情報との事でしたので歴史や文化、動植物などについての詳細をお伝えしたので構わないですか?≫


「はい」


≪そうなりますと膨大な量になるかと思います。直接記憶に移された方が良いですか?≫


直接?あぁ物語なんかで良くある脳に刻み込むみたいなことか。

う~ん…それでもいいけど物に残す方がいいかな。記憶だと多すぎて整理つかなそうだし。

そう思っていたら女神様がある提案をしてくれた。


≪でしたら書籍に写すと云うのはいかがでしょう?貴方の造られた住居の書斎に白紙の本がたくさんありますしそちらに情報を映して時折御覧になったら良いと思いますよ≫


なるほど!それはいい案だ。これで白紙の本がなくなるな。

それなりに多いけど収まるのかな?


≪確かに収まりきることはできないので保留と云う形をとり新しく本を加工して頂ければ自動で情報を写させていただきます。また幾つかの情報には更新して書き足して内容も変化してゆきますので時折見直されて頂ければ。それに加えて劣化を防ぐ加護を加えておきますからどれだけ劣悪な環境下でも大丈夫ですよ≫


おぉ劣化を防ぐなんて嬉しい特典だ。これなら何年たっても読めるね。


≪他には何かございますか?≫


「…いえ、これだけで十分です」


本当にこれだけあればいい。他は能力で補えそうだし、これ以上はなんだか心苦しいし…


≪分かりました。これ以上貴方に施せることが出来ず申し訳ありません。貴方の今生に幸あらんことを祈っております≫


女神様は最後にもう一度頭を下げ謝罪した後優しく祈りの言葉をかけてくれた。

女神様の後ろで泣いていた幼女もこのとき初めて前に出て土下座ばりに頭を下げてきた。


≪本当に申し訳なかったのじゃ!!許してほしいのじゃ!!!!≫


…謝ってもらったし、何より見た目幼女が泣きながら謝罪されたら許さず負えないし。

まぁいいか。


「いいよ。許すよ」


私の言葉に幼女は勢いよく頭を上げ泣き顔から情けない笑顔を見せた。

見守っていた女神様も静かに頬笑みゆっくり二人は姿を消した。
















目が覚めるともう陽が落ち始めオレンジの光が辺りを照らし始めていた。

説明と謝罪をしてもらったからか心持ち穏やかだ。

あとで書斎に行って本を確認しなくちゃ…



ゆっくり上体を起こして窓に近寄る。

開け放たれた窓からは緩やかな風が室内に入り込む。

大きく空気を吸って沈む夕日を眺めた。






とりあえずご飯だな























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