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平凡希望しかし現実苦し  作者: 澤木弘志
序章
11/56

一晩明かしてみよう 4

偶然とかなりゆきとか、あと強制か…何はともあれ異世界に来てしまって怒涛のような一日が終わり二日目がやってくる。

もう何日も過ごしているような感覚だがまだ一日だ。

濃すぎるってもんじゃない。

生まれ育った世界を、生まれて二十数年慣れしたんだ自身の身体ともおさらばして、見知らぬ世界と新たな身体を勝手に押し付けられてソレで人間には身に余るほどの能力まで付いてきた。

この世界の常識を知らないからもしかしたらこの能力もさほど異常を期していないかもしれないが私からしたらとんでもないものだ。

それこそ化け物と呼んでもいいくらいの力。


この世界の事は分からない。何せまだ一日なうえ意思が通じるモノに出逢わぬ辺境ともいえる砂漠のど真ん中に放り込まれたのだ。何も知らないのも無理はないだろう。

この先、意思の通じる相手と出逢った時、その相手は私をどのような存在と認識してもらえるだろうか?


人だろうか?

化け物だろうか?


それとも神のようだと思うだろうか?



基になった主人公キャラは最終的に誤解から化け物と蔑まれ孤独のまま死んでいく最期だ。後に誤解が解け神聖化され神に列なる者とされたが、生前の最期は辛く悲しいものだ。

そのような人生を私も味わうだろか?

構想上とはいえ設定された能力よりも多大な力を有してしまった私としては誰にも逢わない方がこの先平和に過ごせる気がするんだ。

もちろん未来が見通せるわけでも予知出来るわけでもない。だから予想外の事がこの先をたくさんあることだろう。

もしかしたらこの水源樹林を出るかもしれない。

人と出逢い打ち解けるか、敵対されるか。

またはこのまま誰とも出逢わないかもしれない。

予想外の出来事の最たるものである異世界移転以上の事があるとは到底思えないがそれでも生活を激変させる何かは起こると頭の隅でも警戒していた方がいいだろうか。



一睡をせず考察に没頭していた私に鮮やかな光が差し込む。

淡い紺の色から薄く伸びた光の筋の向こうで太陽が顔を覗かせる。

朝日の光とはなんと清々しいものなのか。

あっちの世界では滅多に見ることのなかった朝日を浴びて私は無償に泣きたくなった。

故郷の風景、親しい友人、兄妹、両親の顔。

鮮やかにそれでも確実に薄くなるだろう過去の記憶。

懐かしさが朝日の中で湧き出てきた。

こんな未来を求めいていたわけでも、知っていたわけでもない。

それでもここで生きているという現実。


変えられぬものも確かにあるけれど私は私のままでここにいる。

ならそれを糧に生きてゆけばいい。








僅かに滲んだ目尻の水を乱暴にぬぐい、新たに決意を込めた。

生きてゆこうこの世界を。


世界は太陽の光に照らされた朝を迎えた。

変哲もない朝の陽ざしに陽気な鳥の鳴き声が鳴り響く。

それは砂漠であった頃には無かった新たな生命の息吹のようでもあった。










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