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もしかしたらの未来 ハイネス・ラディーン




 生まれて初めての異性とのお付き合いが、年下で、しかも完璧にリードされるとは。

 私は青の宮にある私室のベッドに突っ伏して、ジタバタと暴れる。

 それでもあまり埃が舞わないのは、この宮に勤めているメイドさん達が働き者だって証拠です。はい。

 いや、そうでなくて。

 今はメイドさん達の働きっぷりに現実逃避するんじゃなくて、ハイネス君のことだ。


 ガバッと起き上がって、枕を抱え込む。


 そもそも、お付き合いをしようっていう言葉はお互いになかった。

 だからなんとなく、曖昧な関係でいて、それが少し心地よかったものだから、つい…半年くらい、そのまま放置してたら、ハイネス君に怒られた。





「いつになったら決心してくれるんですかっ?本当は強引にでもさらって結婚して一緒に住みたいんですよ!」

「え、あ、ご、ごめん…なさい?」

「でもミャコがユリ様とまだ離れたくないっていうし、勉強しなくちゃいけないこともあるし、俺も付きっ切りで構ってあげられないからしょうがないと思って我慢してたけど…」


 出会った頃からあまり変わらない美少年顔のハイネス君は、グッと下唇を噛む。

 あぁ、そんなに噛むと血がでちゃうよ…。


「相変わらずジル様にはちょっかいだされるし、アッシュ様と親しくしているし、陛下には頭を撫でられてるし、シリウス様には血走った目で見つめられてるし…!」


 ちょっと待って!

 ジルは何かされる前に回し蹴りするようにしてるし、

 アッシュは悩み相談とかちゃんと聞いてくれるネイブ国の良心だから信頼してるし、

 王様は由梨さんの旦那さんだし、なんとなく妹みたいに扱われてるだけだし、

 シリウスは…たまに猫の姿になってあげないと、変な薬でも作りそうで怖いだけだよ!


 なんていう反論をグッと飲み込んで、私はジーッとハイネス君のアメジストの瞳を見つめる。

 見つめ続けると、ハイネス君は少したじろいで、口元を肉刺まめだらけの大きな手で覆う。


「な、なに…」

「ハイネス君、まだミヤコって呼べないんだね」

「そっ…それは…!……練習してるけど…ごめん、もう少し待って」

「うん、待つよ。だから、ハイネス君ももう少し待って?」


 ね、お願い?と上目づかいで小首を傾げながら付け足す。

 由梨さん直伝の小悪魔おねだりポーズ。

 私がこんなことして、なにがクるのか知らないけど、ハイネス君は真っ赤な顔を隠すように顔を俯かせて両手で覆う。そんなことしても耳が赤いよー。余計に恥ずかしがっちゃうから、言わないけど。

 そう、ここまではよかった。

 私が年上のして、ちゃんとリードしてた…はず!

 なのに!


 真っ赤な顔を見られないようになのか、ハイネス君は強引に私を抱き寄せる。

 ギュッと強い力で抱きしめられて、私よりも背が高いから、少しだけ首をかしげて、私の耳元に口を寄せた。


「じゃぁ、ミャコも覚悟していて。俺がちゃんと呼べるようになったら…ね」

「にゃっ、な!」

「…何日までならミャコを独り占めできるかな?」


 硬直した私の目元に軽く唇を落として、年下の彼は熱っぽい視線で私を見つめたまま嫣然と微笑む。

 彼を特別な異性として意識していたはずなのに、今まで以上に男を意識させる力と、声と、温もりと匂い。


「俺はジル様のように気まぐれじゃなくて執念深いし、アッシュ様のように優しくなくて意地悪もするけど、陛下よりもミャコを愛しているし、シリウス様よりも優しくなでてあげるから、覚悟して」


 そういって彼は私の部屋から出て行った。

 ついさっき。

 そう。ついさっきの出来事です。


 生々しくも、温もりや感触、匂いや耳にかかった吐息なんかも思い出して、抱え込んでいた枕にグリグリと顔を押しつける。

 ぎゃーーー!もーーー!

 なんで年下の美少年顔に翻弄されちゃうわけー!

 



「覚悟なんてできてるよ、ばか」


 小さくつぶやいた声は、枕に吸収された。


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