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臨死恋愛  作者: 叶狂
7/10

6:サム・メニー・エニー


——とある学校の遣罪使

「…なぁ、ミール。俺らどうすればいいと思う?」

「僕に聞かれたって…。どう思う?エレナ…?」

「わ、私に振らないでよ!!でも、取りあえずあの子の魂を探す意外にあるわけないでしょ?第一、私たちはあの子の行きそうなところぐらい予想はできるしね」

「確かに…あの子のことだからきっとあそこに…」

「とにかく行ってみようってことで、どこに行きゃいいんだ?」

『って、分かってなかったんかい!?』

と、いつものようなやり取りをしている3人組は早速“あそこ”に向かうことにした。



そして、場所は変わって旋定家の秋の部屋。

朝の日差しがカーテンの隙間から漏れる。その光で秋は目をさました。

隣を見ると、まだ実体化の解けていない癒弥の姿があるが、まだ寝ているようだった。

「ほんと、気持ち良さそうに寝てんなぁ。いっつも寝てばっかりだってのにまだ眠いとか言い出したりするから凄いんだよな」

ははっ、と一人笑っていた刹那。

ばんっ、と勢いよく扉が開け放たれて、妹と弟が部屋に飛び込んできて一言。

『秋兄ぃぃいいいい!!!早く起きないと遅刻っっっって、あぁぁあああ!!今日は珍しく起きてる!!!!』

と、驚くタイミングまで息ぴったりな双子は叫ぶ。

こいつらのシンクロ率ってハンパねぇな、と改めて思った。

「はいはい、今お兄ちゃんは起きましたから…耳元で叫ぶの止めてくれねぇか?」

秋はそう言い終わると、勢いよく毛布を癒弥にかぶせる。

ちょっと待て、この状況ある意味ヤバくないか!?もしもこいつらに癒弥のことがバレたら…

『いやぁぁああ!!秋兄の変態!!ママとパパとババに言いつけてやる!!!』

………ヤバい、ヤバすぎるぞ俺。

「え〜っと、さ、二人とも。お兄ちゃんと一緒に朝ご飯を食べようか」

「私さっき食べちゃったも〜んだ♪」

「僕ももう食べちゃった☆」

『ね?』

と、首を傾げる二人。

そんな微笑ましい二人をみて普通の人なら「仲がいいね」と思うだろう。しかし、秋は今ほどこの二人を恨んだことはなかった。あれ?なんか泣きそうになってきた。

「ほら、どっちにしろ朝やってるアニメみないとダメだろ?」

『あっ!忘れてたぁ!!』

その一言で二人はトテトテと走ってゆく。

「はぁ〜、マジで疲れる」

なんか朝から結構疲れた。しかし、今日も学校はあるため休むことすら出来ないのだ。

嗚呼、休む暇すら与えられないなんて…なんて残酷な運命なんだろう。

取りあえず座って一休み。精神を落ち着かせて…。

「うぁっ…!?」

何かが耳をぺろりとなめる感覚があり、変な声が出た。

後ろを振り向くと案の定、癒弥がニヤニヤと笑っていた。

今のでもっと疲れが…あぁ、もういいや。

秋は疲れきった顔で居間へと向かった。





——in 学校

秋は教室に入ると、窓側の前から3列目の席に座った。

この窓側の席というのは、昼下がりに丁度温かい日差しがあたってとても気持ちいのだ。

そして、秋以外には見えていない癒弥も幽霊のくせにその温かい日差しにあたって堂々と昼寝をしている。

「HEY!!あっき〜、おはよう☆今日もいい天気だな」

朝からテンションの高い吉本は、ただ疲れるだけの存在なので無視をする。

「おはよ、秋」

と、次に話しかけてきたのは朝からテンションの高い馬鹿ではなく、まともな変態だった。

「嗚呼、おはよ」

「ってちょっと!!俺は無視!?無視ですか!?」

「なんか今日はいつも以上に疲れきった顔してるけど大丈夫?」

「朝から色々とあってな…」

「ねぇ、ホントに無視なの!?俺が悪かった、だから無視しな…」

『黙れ』

「………」

煩い野郎は始末したところで本題に戻ろう。

「まさか、彼女と添い寝して、朝になって秋を起こしにきた妹ちゃんと弟君にバレそうになったとか?」

「がはっ、げほっっ、ちょ、お前いきなり何言い出すんだよ!?」

まさかこいつ、超能力者か何かだったりするんじゃ…。

「いやぁさ、昨日徹夜してまで頑張ってたエロゲーでそんなハラハラどきどきシーンがあってぇ〜、それでさ、」

やっぱ、変態馬鹿だった。

「ちゃんと聞いてる〜?」

「聞いてる聞いてるー」

もう今日はずっと寝とこうかな〜なんて思い始めてきた。

だって、こいつらと話してたら…疲れる。

という結論が出たところで、秋は寝る体勢に入り始める。

そうとも知らずに田中は話を続けるが、一切聞こうとはしない。

そして、時間はどんどん過ぎていって、気付いた時には既に放課後になっていた。

「んぁ?そんなに長いこと寝てたのかよ…。ま、どうせサボリなんていつものことだからいいか」

なんて適当な考えで無理矢理片付ける。

教室を見回すと、見知らぬ3人組が何やら盛り上がっていた。

あんな奴このクラスにいたっけ?

ま、そんなことどうでもいいか。

「あっ!やっと起きたんだな!!おはよう」

「へっ?いや、あの……おはよう?……ってか、そうじゃなくて。誰で…」

が、秋が言い終える前にまた別の声が、

「旋定君でいい?私たち今日この学校に転校してきたばっかりなの。よろしくね?」

そして手を差し出してくるが、また他の声が言ってくる。

「初めまして。僕、ミール。あ、呼び捨てでもかまわないから…」

ミールと名乗った気の弱そうな男子生徒はぺこりと頭を下げる。

しかし、そんな態度に気を悪くしたのか、手を差し出していた女子生徒が怒鳴りつける。

「あんた、そんな態度だからなめられんのよ。男だったらもっと堂々としなさいよね!?」

それに続けて、もう一人の男子生徒が、

「そうそう、俺みたいに身も心も堂々としてれば…」

「あんたは堂々とし過ぎなのよ○○○(ピ——)」

「っな!?それなら、そんなこと堂々と言えるお前の方は●●●(バキュンッ)だな」

「何よ!?あんたなんてどうせ×××は*****の######なんでしょ?」

『…………』

内容は敢えて言わないことにしておくが、この二人のやり取りは凄まじかった。

そして、そんな凄まじいやり取りに付いて行ける人間など、この二人意外にはこの教室にいなかった。


〜10分後〜

「自己紹介がまだだったわね。私はエレナ。別に呼び捨てでもかまわないわ」

「俺はユキ。ユキ様と呼んでもかまわないぞ?」

「いや、遠慮しとくわ…。え〜っと、ミールとエレナとユキね」

全員外人なのか?

ミールは金髪のショートヘアに碧眼の少年で。

エレナは銀髪ののロングヘアに焔のような緋眼の少女。

そして、ユキは、少し伸びたオレンジの髪に碧眼の少年。

皆アジア人特有の黒・茶髪ではないのだ。

ふと窓の外を見ると、もう真っ暗になっていた。

「やばっ!俺そろそろ帰るわ。それじゃ」

そう言って秋は教室を出て行った。


「ねぇ、見えた?」

「嗚呼、やっぱり予想は外れてなかったな」

「でも、どうやって連れて行くの?」

「それを今から考えるんじゃない!」

彼らが帰った後、そんな会話が繰り広げられていたことを二人は知らない。



——とある空間での限界

「くそっ!!」

サウスはそう言ってSE画面を殴りつける。

もう少し、もう少しのところだと言うのに…

予想していたものより副作用の進行状況が早かったのだ。

思っていたものよりも副作用の進行状況が早かったのだ。

手、足、身体の全ての触覚が消えてしまった。

これでもう、誰の温もりも感じることは出来ない。

だが、そんなことは予想の範囲内。

予想の範囲外、それは、進行のスピード。

たった1週間しか経っていないというのに全ての触覚が消えた。ということは、次の一週間で感情が無くなり、そのまた次の一週間で…精神の崩壊が始まる。

その可能性は非常に高かった。

まだダメなんだ、時間が足りない、どうすれば…

そこで、一つの方法が思い浮かんだ。

「時の抵抗《アール・デ・オルト》」

感覚は消えたままだが、これなら3ヶ月は持つ。

そして再び画面へと向かった。




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