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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第89話:太陽の玉座、傲慢なる金色の救済

お読みいただきありがとうございます。


黄金の騎士に導かれ、ついにエルドラドの最深部「太陽の玉座」へと辿り着いたくるる

そこで彼を待っていたのは、自らを金へと変えながらも、狂気的な微笑みを浮かべる黄金の王でした。


なぜ、一国の王が自らの民を金に変えることを許したのか。

その口から語られたのは、「救済」という言葉に隠された、人類へのあまりにも残酷な背信。


水曜日の最終更新、物語の核心が暴かれます。

 黄金の騎士に先導され、くるるたちが辿り着いたのは、エルドラドの街を一望できる巨大な塔の頂上、通称「太陽の玉座」であった。そこは床から天井までが、陽光を反射する純金で埋め尽くされ、あまりの眩しさにリナは目を開けていることすら困難なほどだった。だが、その光り輝く空間の正中線に座る「王」の姿を見た瞬間、カザンは槍を強く握り直し、枢の表情はかつてないほど険しくなった。


「……よく来たな、東の聖鍼師よ。……我が名はミダス。……この黄金の都の主であり、……人類を『永遠』へと導く、神に選ばれし医師でもある」


 玉座に座るミダス王は、その肉体の半分が、すでに美しい黄金の結晶と化していた。右腕は指先まで動かぬ金細工のようになり、左足も玉座に根を張るように固定されている。だが、剥き出しになった左目の瞳には、知性と狂気が混じり合った、禍々しいまでの魔力の光が宿っていた。


「……ミダス王。……あなたは、自分の国が今、どのような惨状にあるか理解しているのですか。……民は黄金に変わり、……街には絶望の溜息が満ちている。……これを『救済』と呼ぶのであれば、……あなたの眼は、……もはや医学を志す者のそれではない」


 枢の静かな告発に対し、ミダスは喉を鳴らして不敵に笑った。その動きに合わせ、彼の肌に浮き出た金の紋様が、キィキィと不気味な金属音を立てる。


「……惨状だと? ……滑稽なことを。……枢君、君は人が死ぬ瞬間を見たことがあるかね? ……老い、病み、腐り果て、無価値な土に還る。……それがこれまでの人類の運命だった。……だが、私の『黄金病』はどうだ? ……民は永遠の価値を持つ金へと昇華され、……その肉体は不朽の芸術品となる。……死を超越した存在……。……それこそが、我ら『蛇のスネーク・スケイル』が辿り着いた、究極の治療なのだよ」


 ミダスが左手を掲げると、玉座の周囲に設置された魔導管が脈動を始めた。街中の黄金の像(民)から吸い上げられた「生命の残響」が、この玉座へと集約され、ミダスの肉体を維持するための魔力へと変換されていく。


「……それは治療ではありません。……ただの『資源加工』です。……あなたは民を、自分一人が永遠に生きるための、電池として消費しているに過ぎない。……ヘイズ博士は、まだ自身の『神の医学』に、人類の進化という大義を求めていた。……だが、あなたにあるのは、……ただの醜い独占欲だ」


「……黙れ! ……ヘイズのような臆病者と一緒にしてもらっては困るな! ……彼は命を繋ぐことに固執したが、私は命を『価値』に変えることに成功した。……見てみろ、この輝きを! ……世界中の王たちが、私のこの黄金を求め、列をなしている。……私は病を輸出することで、この世の全ての富を支配するのだ!」


 ミダスの狂った咆哮と共に、玉座の間全体が激しい黄金の振動に包まれた。壁から突き出した黄金の触手が、蛇のようにうねりながら枢たちを囲い込む。その先端からは、先ほどサロメが使っていたものよりも、遥かに高密度の「金化ウイルス」が霧となって噴き出していた。


「……カザン、リナ! 私の後ろに! ……ミダス王、……あなたの経絡は、……もはや黄金の重みに耐えきれず、……心臓の鼓動さえも止まりかけている。……その無理な循環、……私が今ここで、断ち切って差し上げます!」


 枢は往診バッグから、かつてないほど重厚な「玄武げんぶの鉛鍼」を取り出した。金の魔力は「柔らかい導体」を好むが、この鉛の鍼は、魔力の流れを物理的に遮断し、停滞させる性質を持つ。


「……聖鍼流、制裁術――『不容ふようの鉄槌』!」


 枢は黄金の触手を最小限の動きで回避しながら、ミダスの腹部、肋骨のすぐ下にある**『不容ふよう』**のツボに向けて、鉛鍼を電光石火の速さで打ち込んだ。


 ツボとしての『不容』は、胃の経絡に属し、その名の通り「(過剰なものを)受け容れない」という意味を持つ場所だ。暴飲暴食や過剰なエネルギーの摂取によって膨れ上がった気を抑え、強制的に「排出」へと向かわせる要穴である。


「……ぐ、……あ……、なんだ……、この……不快な感覚は……!? ……私の、……私の黄金の循環が……逆流していく……!?」


「……不容は、傲慢な欲望を押し戻す門。……ミダス王、……あなたが飲み込んできた数万の民の怨嗟を、……その腐りかけた胃袋で、……すべて受け止めるがいい!」


 鉛鍼が深々と突き刺さった瞬間、ミダスの右半身の黄金化が、ボロボロと崩れるように剥がれ落ち始めた。彼が維持していた「偽りの永遠」が、枢の放った一刺しによって、ただの「死にゆく老人の肉体」という現実へと引き戻されていく。


「……おのれ……、おのれぇぇ! ……サロメ! 騎士団! ……この鍼師を、……この場で金に変えろ! ……一欠片も残さず、……砕け散る金貨にしてしまえ!」


 ミダスの叫びに応じるように、周囲の影から、仮面の医師たちと黄金の騎士たちが一斉に姿を現した。

 ついに始まった、エルドラドの支配者たちとの全面対決。

 枢の鍼は、黄金に彩られた「人類の墓標」を、再び温かな命へと戻すことができるのか。


 聖鍼師の怒りが、黄金の都の静寂を切り裂いていく。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


ついにエルドラドの黒幕、ミダス王と対峙したくるるさん。

「命を金に変える」という、狂った救済論を掲げるミダスに対し、枢さんは医者としての、そして一人の人間としての誇りを懸けて立ち向かいました。


今回登場した**『不容ふよう』**。

みぞおちの近くにあるこのツボは、食べ過ぎや胃もたれに効くことで知られていますが、枢さんはこれを「過剰な欲望を受け付けない」ための拒絶のスイッチとして用いました。


しかし、ミダスの号令により、蛇の秤の精鋭たちが一斉に牙を剥きます。

カザン、リナとの共闘、そして「黄金病」の治療法は見つかるのか……!?


次回、第90話は明日3月5日(木)08:00に更新予定です!


包囲網を突破せよ!

枢が放つ、黄金の殻を内側から破壊する「震動の鍼」が、玉座の間を揺らします。


「ミダス王の理屈、最悪だけどキャラ立ってる……!」

「不容のツボ、名前の使い方が格好いい!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをよろしくお願いします!

明日の朝も、どうぞお見逃しなく!

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