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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第80話:不滅の絆、聖鍼の脈動

お読みいただきありがとうございます!


宿敵ヘイズ博士の「百会」を射抜いたくるる

しかし、数百年分の魔力を蓄積した怪物の反撃は、帝都宮殿そのものを崩壊させるほどの衝撃を伴っていました。


絶体絶命の窮地で、リナとカザンが自らの限界を超えた援護を見せます。

仲間の想いを背負い、聖鍼師の最後の一撃が、ヘイズの「心臓」へと放たれます。


月曜日、夕方の更新です。

魂が震える共闘の瞬間を、どうぞお楽しみください!

 玉座の間が、内側から爆発するかのような衝撃に包まれた。頭頂部の『百会』を貫かれたヘイズ博士の肉体は、もはや人間の形状を保つことすら困難になりつつあった。彼の背中からは、奪った人々の怨嗟が具現化したような、数千本の黒い魔力触手が噴き出し、狂ったように周囲の柱や壁を粉砕していく。


「……認めん、……認めんぞ、枢君! ……私は、神の座に最も近い男だ! ……たかが鍼師ごときが、私の数百年を否定するなど、あってはならないのだぁぁぁ!」


 ヘイズの絶叫と共に、空間そのものが赤黒い霧に侵食され、くるるたちの視界を奪う。その霧に触れた大理石が瞬時に腐食していくのを見て、カザンが叫びながら前に出た。


「……枢! ……ここは俺が引き受ける! ……この化け物の触手ども、俺の魂ごと叩き斬ってくれるわ! ……ぬぉぉぉぉぉぉ!」


 カザンは魔族としての生命力を限界まで燃焼させ、その肉体から黄金の闘気を放った。巨大な槍を旋回させ、迫り来る魔力触手を一本、また一本と、凄まじい力で弾き飛ばしていく。だが、数千本に及ぶ攻撃はカザンの肉体を容赦なく傷つけ、その屈強な鎧を赤く染めていく。


「……カザンさん! ……枢さん、行ってください! ……この霧の浄化とカザンさんの治療は、私が死んでもやり遂げます! ……だから、あいつの……あの悲しい怪物の心臓を、止めてあげてください!」


 リナが杖を天に掲げ、これまでの人生で培ってきた全魔力を「聖域」として展開した。カザンを包む黄金の闘気と、リナの清浄な光が交差し、ヘイズの放つ死の霧を一時的に押し戻す。二人の、文字通り命を削った援護が、枢の前に唯一の「勝機」となる道を作り出した。


「……カザン、リナ。……預かった命、無駄にはしません。……ヘイズ博士。……あなたが自身の心臓へと繋げた、数千の経絡。……そのすべての苦しみ、私が今ここで、一本の鍼で引き受けましょう」


 枢は虹色の輝きを放つ「神鍼しんしん」を構え、ヘイズの触手と爆発的な魔力が渦巻く中心地へと、弾丸のような速度で突っ込んだ。

 彼の翡翠眼ひすいがんは、カオスと化したヘイズの肉体の中で、唯一、異様に脈動する一点を捉えていた。


 それは、数万人の命を吸い上げ、同時に自身を維持するために、ヘイズが最も強固な魔導装甲で守り固めた「擬似心臓」。その中枢にある、本来なら人間が持つはずの慈悲を司るべき場所――**『膻中だんちゅう』**であった。


「……そこだ! ……人体の正中央、心の気を司る最重要拠点! ……ヘイズ博士。……あなたが忘れてしまった、一人の人間としての痛みを……思い出させて差し上げます!」


 ヘイズが慌てて防御の術式を編み直すが、枢は空中で自身の経絡を加速させ、物理的な重力を無視した軌道でその懐へと滑り込んだ。

 ガキィィィィィィィン!!


 神鍼とヘイズの魔導障壁が激突し、凄まじい火花が枢の視界を白く染める。だが、枢は怯まなかった。彼の背後には、カザンの叫びがあり、リナの祈りがあり、そしてこの都で彼を待つ数千の患者たちの想いがあった。


「……聖鍼流、真実術――『膻中の開花オープン・ハート』!」


 枢が自身の全霊の気を鍼に込めると、虹色の光がヘイズの胸元にある黒い術式を一点突破で貫通した。

 ズブッ、という、確かな感触。

 神鍼が、ヘイズの胸の中央……**『膻中』**へと、深々と突き刺さった。


 ツボとしての『膻中』は、胸骨の真上に位置し、呼吸器の疾患だけでなく、精神的なストレスや鬱屈した感情を解き放つ「心の門」とされる。そこに枢の「極限の浄化」を伴う気が流し込まれた瞬間、ヘイズの中に渦巻いていた数百年分の他者の思念が、怒涛の勢いで浄化され、彼自身の魂を揺さぶり始めた。


「……あ、……あが、……あぁぁぁぁぁっ!! ……熱い、……熱すぎる……! ……なんだ、この……涙は……? ……私は、ただ、……完璧を……追い求めて……」


 ヘイズの瞳から、それまでの狂気が抜け落ち、代わりに老いた一人の人間の、あまりにも深い後悔と孤独の色が浮かび上がった。神鍼から放出される翡翠色の光が、ヘイズの肉体を内側から優しく包み込み、歪んだ魔導回路を一本ずつ、丁寧に解きほぐしていく。


「……ヘイズ博士。……医学とは、人を神にするための手段ではありません。……人が、人として健やかに生き、最期の瞬間まで尊厳を保つためにあるのです。……あなたは、あまりに長く、自分一人の『健康』という名の病に、囚われすぎていた」


 枢の声は、崩壊する玉座の間の中で、どこまでも静かに、そして暖かく響いた。

 ヘイズの背中から伸びていた醜い触手が砂のように崩れ落ち、彼の肉体は急激に「等身大の老人」の姿へと縮んでいく。


 ドサリ、とヘイズが膝をついた。

 その胸には、まだ枢の神鍼が突き刺さったまま、穏やかな虹色の光を放っている。

「……見事だよ、……枢君。……私の、……数百年かけて作った、……『偽りの人体』が、……君の一本に、……負けるとはな……」


 ヘイズは満足げに、そして安らかな微笑を浮かべながら、ゆっくりと目を閉じた。

 宮殿全体を揺らしていた不気味な震動が止まり、窓から差し込む夕焼けの光が、埃の舞う玉座の間を美しく照らし出した。


 だが、その時。

 倒れたヘイズの背後の影から、さらにどす黒い「何か」が、最後のががきのように鎌首をもたげた。

「……フフ、……まだ終わらんぞ。……主人が消えても、……この都に蓄積された『膿』は、……私が残さず、食らい尽くしてやる……」


 物語は、本当の最終決着へ。

 ヘイズ博士をも利用していた「帝都の闇そのもの」が、ついにその正体を現す。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


ついに宿敵ヘイズ博士の心臓(膻中)を射抜いたくるるさん。カザンさん、リナさんとの熱い連携、そしてヘイズの中にある「人間としての心」を呼び覚ます一撃……。

ですが、物語はここで終わりではないようです。帝都の繁栄に隠された、さらなる「真の黒幕」とは……?


今回登場した**『膻中だんちゅう』**。

胸の真ん中にあるこのツボは、ストレスやイライラを解消し、心を落ち着かせる「気の海」とも呼ばれます。ヘイズ博士という、あまりにも肥大化しすぎたエゴを沈めるには、ここを突くしかなかったのですね。


次回、第81話は本日ラスト、**【21:00】**に更新予定です!


「三人の共闘に涙が出た……!」

「ヘイズの最期の笑顔が、なんだか切ない……」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをお願いします!

今日の最終更新も、どうぞお見逃しなく!

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