第8話:首が回らない暗殺者は、恋……ではなく『寝違え』に悶える
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宣伝なしでこれほど多くの方に読んでいただけるとは、作者としてこれ以上の喜びはありません。
第8話は、いよいよ魔族の女性副隊長が登場。
クールな彼女の弱点は、まさかの「枕」でした。
「……ザドゥ、本当にここなのか? 人間の男に、我ら魔族の体が理解できるとは思えんが」
翌晩、王宮の裏庭。ザドゥが連れてきたのは、銀髪をポニーテールにまとめた、鋭い目付きの美女だった。
魔王軍遊撃隊副隊長、ヘルガ。
しかし、その凛々しい姿とは裏腹に、彼女の首は不自然に右側に傾いたまま固定されている。
「ヘルガ、失礼だぞ。……枢殿、連れてきた。こいつの首をなんとかしてやってくれ」
「……診ましょう。そこの石に座ってください」
枢は【翡翠眼】を静かに発動させる。
彼女の頚椎から肩にかけて、魔力の流れが完全に渋滞し、筋肉が岩のように硬直していた。
「これは……ひどいですね。単なる寝違えではありません。長時間の潜伏と、過度の緊張。そして何より、枕が合っていませんね?」
「ま、枕だと……!? 我ら魔族の戦士に、そんな軟弱なものは必要ない! 私はいつも、冷たい岩の上で寝ている!」
「それが原因です」
枢は即座に断言し、懐から一本の銀鍼を取り出した。昨夜ザドゥからもらった『月光銀草』を加工して、急ぎ試作した一品だ。
「少し、響きますよ」
「なっ、いきなり何を――っ!? ぁ、が、ああああああああっ!?」
首の付け根にあるツボ『天柱』に、銀鍼が吸い込まれるように刺さる。
ヘルガの全身に、雷が打たれたような衝撃が走った。
しかし、その直後。
「……あ、れ? 回る……首が、動くぞ……!」
ヘルガは恐る恐る、首を左右に振った。
ピキリとした痛みは消え、視界まで明るくなったような感覚。
「お見事。……枢殿、貴殿は一体何者なのだ。魔族の魔力経路を、これほど正確に捉えるとは……」
頬を赤らめ、驚愕の表情で自分を見つめるヘルガに、枢は無造作に「あるもの」を差し出した。
「治療は終わりです。……あと、これ。私の古いマントを丸めて作ったものです。今夜からはこれを枕にして寝なさい。岩の上で寝るのは、今日限りで卒業することです」
「……あ、ありが、とう……」
最強の暗殺者が、人間の男から贈られた「枕」を宝物のように抱え、顔を真っ赤にして立ち去っていった。
ついに魔族の副隊長まで攻略(物理的な治療)してしまった枢。
どうやらヘルガは、腕前だけでなく、枢の「無自覚な優しさ」にも中てられてしまったようです。
これで魔王軍の遊撃隊に、大きな貸しができましたね。
「ヘルガ様、チョロ可愛い!」
「自分も枕を新調したくなった……」
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次回は、いよいよ王女様との「再会」編が動き出します。
お楽しみに!




