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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第71話:不浄ならざる盟約、決戦の調合

お読みいただきありがとうございます。


地脈の心臓を浄化したくるるでしたが、それこそがヘイズ博士の狡猾な罠でした。

清浄な気を強奪され続ける魔族の里。


絶望が広がる中、枢はこれまでの「往診」ですら予行演習に過ぎなかったと思い知らされます。

それでも、聖鍼師の眼は死んでいませんでした。


本日最後の更新となります。

魔族の誇りと、一人の男の覚悟が交差する夜を、どうぞ見届けてください。

 地脈の心臓部から地上へと戻ったくるるの背後で、魔導回路がかつてないほどの輝きを放ち、純化された大地のエネルギーを帝都へと運び去っていく。ヘイズ博士の嘲笑が、耳の奥にこびりついて離れない。善意で治した結果が、さらなる悪の肥やしになる。その理不尽な事実に、聖女リナは杖を握る手を震わせ、カザンたち戦士は己の無力さに唇を噛んでいた。


 しかし、枢だけは、吹き荒れる魔力の余波の中で、一点を見つめたまま動かなかった。その翡翠眼ひすいがんは絶望に濁ることなく、むしろ暗闇の中でより深く、静かな光を宿している。


「……枢さん、どうしましょう。……私たちのしたことが、あんな奴の助けになるなんて……」


「……リナ、顔を上げなさい。……医者の仕事は、病を治すだけではありません。……薬の副作用を予測し、その反動をも利用して、真の根治へと導く。……ヘイズ博士の『計算』が完璧だというのなら、私はその『計算式』そのものを組み替えるまでです」


 枢は往診バッグから、里の地下で採取したばかりの「浄化された結晶の破片」と、魔族の里にのみ自生する極寒の薬草「氷影草ひょうえいそう」を取り出した。彼はそれらを掌の上で転がし、自身の気を注ぎ込み始める。


「……長老。……そしてカザン。……あなたたちの血の中には、数百年にわたって蓄積されてきた『汚染への抗体』が眠っています。……私はこれから、その抗体とこの里の純粋な地脈エネルギーを掛け合わせ、ヘイズの魔導回路を内側から食い破る『猛毒の処方箋』を精製します」


 ゼノスが驚きに目を見開く。

「……我らの血を、薬に……? だが、それは帝都の民をも傷つける毒になるのではないか?」


「……いいえ。……この薬が効くのは、他者の地脈を奪い、不自然に回路を拡張した『感染者』……すなわち、ヘイズ博士とその直属の強化兵たちだけです。……健康な者にとっては、ただの温かい気付け薬に過ぎません」


 枢の指先で、翡翠色の光と薬草の冷気が混ざり合い、小さな、しかし密度の高い光の球へと凝縮されていく。枢はそれを、自身の最も鋭い金鍼の先端へと塗り込んだ。


「……人体において、外からの異物を排除し、生命力を守り抜く最後の砦。……それは足の内側にある**『三陰交さんいんこう』**です。……三つの経絡が交わるこの場所を、この里の意思を込めた鍼で貫けば、奪われた気は奪い返される。……いいえ、ヘイズの体に流れるすべての気が、彼自身を拒絶し始めるでしょう」


 人体の『三陰交』は、冷えや血の巡りだけでなく、ホルモンバランスや自己免疫を司る、女性にとっても男性にとっても欠かせない要穴だ。枢はこれを「地脈の防衛システム」として応用し、奪われたエネルギーを逆に「ヘイズを内部から破壊する武器」へと転換しようとしていたのだ。


「……カザン。……この鍼は、私がヘイズに直接打ち込みます。……ですが、そこに至るまでの道は、私一人の力では切り拓けません。……あなたたちの誇りを、私に貸してくれませんか」


 枢の言葉に、カザンは迷うことなく、その場に片膝をついた。

「……聖鍼師殿。……いや、我が友よ。……誇りなど、最初からあなたに預けている。……我が槍、我が命、すべてをあなたに捧げよう。……魔族が帝国の犬としてではなく、一人の戦士として死ねるのなら、これ以上の誉れはない!」


 カザンの叫びに呼応するように、里の戦士たちが一斉に槍を掲げ、地鳴りのような咆哮を上げた。その声は、帝都へと続く夜の荒野を震わせ、闇を切り裂いていった。

 枢は完成した「決戦の鍼」を往診バッグに収め、初代皇帝のマントを力強く翻した。

「……リナ、出発です。……夜通し走り、明日の夜明けと共に、帝都の正門へ到達します。……診察料は高くつきますよ、ヘイズ博士」


 リナは涙を拭い、満面の笑みで頷いた。

「はいっ! ……どこまでも、お供します、枢さん!」


 魔族の里を発つ枢の背後には、かつての敵であったはずの魔族たちが、最強の友軍として隊列を組んでいた。絶望を希望へと書き換え、復讐を往診へと変えた聖鍼師。その一歩は、数百年動かなかった歴史の歯車を、今、決定的に回し始めた。


 第2部、最大の山場を経て、物語はついに帝都へと舞台を戻す。

 待ち受けるのは、人智を超えた神の力か、それとも――。

本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

土日の連続更新祭、初日の締めくくりはいかがでしたでしょうか。


敵の強奪を逆手に取り、魔族の里全員の意思を込めた「最強の処方箋」を完成させたくるるさん。これまでの旅で得たすべての知識と絆が、この一本の鍼に凝縮されています。


今回登場した**『三陰交さんいんこう』**。

「三つの経絡が交わる」という名の通り、足にある非常に重要なツボです。健康維持には欠かせない場所ですが、枢さんはここを「生命の防衛拠点」として活用しました。


さあ、いよいよ明日は日曜日。

本日と同じく、以下のスケジュールで残り6回の連続更新を行います!


【3月1日(日):08:00 / 10:00 / 12:00 / 15:00 / 18:00 / 21:00】


明日の朝、帝都の門の前に立つ枢と魔族たちの勇姿を、ぜひご覧ください。


「枢さんの反撃の狼煙にワクワクが止まらない!」

「魔族たちとの共闘、最高に熱い!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをよろしくお願いします!

明日の朝8時、またこの場所でお会いしましょう!

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