表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/271

第68話:天焦がす鉄の雨、聖鍼の防壁

お読みいただきありがとうございます!


帝国の精鋭ガリアスを一刺しで沈めたくるる

しかし、空を埋め尽くす魔導艦隊は、里ごと地脈を焼き払わんと無慈悲な砲門を開きます。


一本の鍼が、巨大な戦艦の理を上書きする。

聖鍼師が見せる「神域の治療」、その真髄をお楽しみください!

 上空を埋め尽くした帝国魔導艦隊の影が、浄化されたばかりの魔族の里を暗く塗りつぶしていく。先遣隊の副団長ガリアスがくるるの鍼に屈したことは、旗艦へと即座に伝わったのだろう。雲海を割って姿を現した主兵装の砲口が、一斉に不気味な赤紫色の光を放ち始めた。それは地脈のエネルギーを強引に変換し、物質を分子レベルで崩壊させる「焦土砲」のチャージだった。


「枢さん、空が……! あの数の砲撃をまともに受けたら、里どころかこの山脈そのものが消えてしまいます!」

 リナが悲鳴に近い声を上げ、聖女の杖を握りしめる。彼女が展開しようとする聖なる結界では、艦隊全体の総火力を受け止めるにはあまりに心許ない。カザンたち魔族の戦士も、空を睨みつけながら槍を構えるが、その表情には隠しきれない絶望が滲んでいた。肉体を持つ者が抗える規模を、帝国の暴力は疾うに超えている。


 だが、枢は動じなかった。彼はただ静かに、往診バッグの最も深い区画から、鈍い銀色とも、深い青ともつかぬ不思議な光沢を放つ「太鍼」を取り出した。それは初代皇帝から受け継いだ遺産の一つであり、人体の治療ではなく、世界の理を整えるために作られたという伝説の鍼だった。


「……リナ、カザン。……そして里の皆さん。……動かずに、私の背後にいなさい。……今からこの大地の『気』を一時的に借りて、巨大な防護壁を形成します」


「大地の気を借りる……? 枢さん、それは禁忌の術では……!」


「……いいえ、リナ。……私は鍼師です。……詰まった気を流し、足りない場所へ補う。……これはただの『大規模な補法ほほう』に過ぎません」


 枢は太鍼を逆手に持ち、己の全神経を研ぎ澄ませた。翡翠眼ひすいがんが捉えるのは、空にある無数の砲口ではなく、自らの足元を流れる地脈の巨大な激流だ。先ほど浄化したばかりの里の「百会ひゃくえ」を通じて、大地のエネルギーが力強く拍動している。枢はそのエネルギーの奔流の中に、里全体を守護するための「仮想の経絡」を描き出した。


「……里の表層、地脈が皮膚と交わる一点。……ここを大地の**『曲池きょくち』**と定めます」


 枢が狙いを定めたのは、里を囲む山々の裾野が交差する、地形上の結節点だった。人体の『曲池』は肘の曲がり角にあり、熱を鎮め、免疫力を高める万能のツボとされる。枢は大地の経絡において、ここを刺激することで、帝国の放つ破壊的な熱量を相殺しようと考えたのだ。


「……聖鍼流、広域往診――『大地の息吹・金剛抱擁こんごうほうよう』!」


 枢が太鍼を地面へと一気に突き立てた。

 ドォォォォォォォン!!

 大地がかつてない咆哮を上げ、枢の周囲から翡翠色の光が噴き出した。その光は瞬く間に里全体を覆う巨大なドーム状の障壁へと姿を変えていく。それと同時に、空の艦隊が「焦土砲」を一斉に放った。


 赤紫色の破壊光線が、雨のように光のドームへと降り注ぐ。衝突の瞬間、鼓膜を劈くような轟音が響き、衝撃波で周囲の木々がなぎ倒された。だが、枢が展開した翡翠の壁は、傷一つ負わない。それどころか、帝国の放った破壊的なエネルギーを『曲池』のツボを通じて地脈へと受け流し、逆に浄化のエネルギーへと変換して里を潤し始めたのだ。


「ば、馬鹿な……! 艦隊の一斉掃射を、たった一人の人間が受け止めたというのか!?」

 上空から通信機を通じて聞こえてくる帝国士官の悲鳴。


「……驚くことはありません。……あなたは熱いお湯を浴びせましたが、私はそれを適切な温度で排水口へ流しただけです。……ですが、治療を拒んで暴力を振るう患者には、少しばかりの『痛み』も必要ですね」


 枢は鍼を抜くと、今度は空に向けてその先端を向けた。

「……リナ、気を私に預けて。……今度は、あの上空で淀んでいる『不自然な気』を散らします」


「はいっ!」

 リナが枢の肩に手を置き、全魔力を注ぎ込む。枢はその純粋な魔力を鍼の先端に凝縮させ、上空の艦隊が形成している魔導的な「陣形」の急所を捉えた。


「……空の**『太陽たいよう』**。……そこが、あなたの陣の泣き所です」


 ツボとしての『太陽』は眉尻の横にあり、頭痛を鎮め、視界を明瞭にする場所だ。だが枢が指したのは、艦隊の魔力通信網が重なり合い、最も不安定になっている空間の歪みだった。


 枢が鍼を振るうと、翡翠の閃光が矢のように空へと突き刺さった。

 パリン、という何かが割れるような涼やかな音が響いた直後。

 上空の魔導艦たちが、まるで見えない糸を切られた人形のように、互いに激突し始めた。魔力通信が遮断され、制御を失った艦隊が次々と墜落していく。


「ヒィッ! 制御不能だ! 全艦、退避せよ、退避――!」


 大気を震わせていた艦隊の駆動音が遠ざかり、再び里に静寂が戻る。枢は静かに深く息を吐き、膝をついた。これほどの大規模な治療は、いくら彼といえど精神的な消耗が激しい。だが、その瞳には依然として、患者を救わんとする医者の光が宿っていた。


「……枢さん、大丈夫ですか!? 無茶しすぎです!」

 リナが駆け寄り、枢の体を支える。

「……ええ。……少し、肩が凝りましたね。……ですが、これでヘイズも理解したはずです。……『薬(暴力)』でこの里を治すことはできないということを」


 カザンや里の者たちが、言葉を失って枢を見つめている。彼らにとって、枢はもはや単なる恩人ではなく、運命を共にすべき「神」そのものとして映っていた。魔族の誇り高い戦士たちが、一斉に地面に頭を伏せ、沈黙の誓いを捧げる。


 だが、枢は知っていた。ヘイズ博士の本番は、これからだということを。

 帝都から放たれる、さらなる巨大な「病」の気配。枢は遠く霞む白亜の都を見据え、次の往診の準備を始めた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


帝国艦隊の猛攻を、大地のツボを活用して防ぎ切ったくるるさん。

いかがでしたでしょうか。


今回登場した**『曲池きょくち』と『太陽たいよう』**。

本来は人体の熱を下げたり、頭をスッキリさせたりするツボですが、枢さんの手にかかれば「都市規模の熱線防御」や「敵艦隊の通信攪乱」にまで応用されてしまいます。


次回、第69話は本日**【15:00】**に更新!

墜落した艦から現れた、ヘイズ博士が送り込んだ「最悪の刺客」とは。

おやつ時の更新、どうぞお見逃しなく!


「枢さんのスケールがデカすぎて鳥肌が立った!」

「地脈のツボという発想が新しすぎる!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをお願いします!

土日の怒涛の更新祭、次は15時にお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ