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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第63話:不浄の盟約、翡翠の浄化

お読みいただきありがとうございます!


魔族の戦士カザンすらも、一本の金鍼で心服させたくるる

ついに辿り着いた里の最奥。そこで待ち受けていたのは、魔族を束ねる長老・ゼノスでした。


人間への深い不信と、数百年続く「大地の病」。

絶望に沈む魔族の里で、枢が提示するのは「救済」か、それとも――。


1,800文字超でおくる、聖鍼師の真骨頂。

魔族の誇りさえも治療の糧にする、衝撃の展開をどうぞお楽しみください!

 カザンに導かれ、くるるとリナが足を踏み入れたのは、里の最奥に鎮座する巨大な氷晶の聖域だった。

 中心には、この地の魔力の源であるはずの「守護結晶」がそびえ立っている。


 だが、その輝きは禍々しい黒ずんだ血管のような紋様に覆われ、周囲には腐敗した魔力の臭気が漂っていた。

 人体のがんが転移し、全身の血を腐らせていくような、惨烈な光景だ。


「……よく来たな、聖鍼師。カザンを救ったその腕、見事ではあった。……だが、その若さで『世界の病』を診るとは、傲慢が過ぎるのではないか」

 結晶の影から、一人の老魔族が姿を現した。


 里の長、ゼノス。

 彼が放つ覇気は、先ほどの戦士たちとは比べものにならないほど冷徹で、重い。

 ゼノスの視線は、枢が羽織っている「初代皇帝の赤いマント」に注がれた。


「……そのマント、忌々しい帝国の象徴よ。……知っているか? この地の正穴せいけつが汚れたのは、数百年前、お前たちが崇める初代皇帝が我らと交わした『不浄の盟約』のせいなのだ」


「……盟約、ですか」

 枢の声に動揺はない。ただ、翡翠眼ひすいがんで静かにゼノスの体内の気の流れを観察している。


「……そうだ。帝国は繁栄の代償として、大地の毒素をすべてこの魔族の地に流し込んだ。……我らは、貴様ら人間の平和を守るための『生きた濾過器』に過ぎん。……これを治すだと? 滑稽な。世界を壊した張本人の末裔が、救世主を気取るか!」


 ゼノスの咆哮と共に、周囲の結晶が共鳴し、黒い魔力が触手のように枢へと襲いかかる。

「枢さん、危ないっ!」

 リナが叫ぶが、枢は避けることすらしない。


「……なるほど。……道理で、この地の気が『逆上』しているわけです。……長老、あなたは里を代表して、そのすべての毒を自らの体に引き受けてきましたね?」


 枢は一歩踏み出し、襲いかかる魔力の触手を、素手で……正確には、指先に集中させた気の膜で弾き飛ばした。

 その光景に、カザンや周囲の戦士たちが息を呑む。


「な……!? 物理攻撃ではない、長老の魔力そのものを手で払っただと……!?」


「……長老。あなたの左胸、心臓のすぐ上にある**『紫宮しきゅう』**。……そこが黒くいぶっている。……ここは、天の気を受け入れ、全身のバランスを司る神聖な門です」


 枢は往診バッグから、かつてないほど長く、神聖な輝きを放つ「特大の金鍼」を取り出した。

「……そこが詰まっているから、あなたの言葉は呪いに満ち、あなたの体は内側から腐り続けている。……治療しましょう。魔族の誇りも、世界の歪みも、すべてまとめて」


「……笑わせるな! 人間に何ができる!」

 ゼノスが杖を振るい、猛烈な吹雪を巻き起こす。視界が白に染まり、極低温の風がリナたちの体温を奪う。


 だが、その吹雪を切り裂いて、枢が肉薄した。

「……リナ、言ったはずです。……『ツボの声』を聴けと」


 枢の金鍼が、吹雪の渦中、ゼノスの紫宮へと吸い込まれるように突き立てられた。

 それだけではない。枢はもう片方の手で、汚染された守護結晶の根元――大地の気の噴出口にある**『神門しんもん』**に相当する一点を、同時に撃ち抜いた。


「……紫宮開放、神門連動! ……溜まった膿を、本来あるべき大地へと還しなさい!」


 キィィィィィィィィン!!

 氷のドーム全体を揺るがすような、清澄な高音が響き渡った。


 瞬間、ゼノスの体から、そして巨大な結晶から、どす黒い霧が噴水のように空へと吹き上がった。

 それは凄まじい悪臭を放ちながら、枢の翡翠色の気によって瞬時に浄化され、雪の結晶へと変わっていく。


「……ぁ、……あぁ……っ。……なんだ、この、温かさは……」

 ゼノスの膝から力が抜け、その場に崩れ落ちた。

 しかし、その表情からは先ほどまでの毒々しさが消え、瞳には数百年ぶりに澄んだ光が宿っていた。


「……詰まっていただけですよ、長老。……あなたは、背負い込みすぎていただけだ」

 枢は金鍼を拭い、何事もなかったかのように立ち上がる。


 周囲を見渡せば、黒ずんでいた守護結晶が、今はまばゆいばかりの純白の輝きを放ち、里全体を優しく照らしていた。


「……信じられん。……数世代にわたって、我ら最高の呪術師たちが束になっても触れることすらできなかった『汚染』を……あのアリのような人間が、たった二刺しで……」

 カザンが槍を落とし、その場に跪く。


 他の戦士たちも、もはや枢を敵とは見ていなかった。

 そこにあるのは、人種を超えた圧倒的な「畏怖」と、魂の底からの「感謝」だった。


「……枢さん、すごいです……。空気が、こんなに綺麗になるなんて……」

 リナが瞳を輝かせて枢の手を取る。


「……まだ、入り口ですよ、リナ。……長老。……あなたが言った『不浄の盟約』。……その真実を、今度は私に詳しく診せて(話して)もらえますか?」


 枢の静かな、しかし抗いがたい重圧を伴った言葉に、長老ゼノスは深く、深く頭を下げた。


 第2部・中盤戦『不浄の盟約編』。

 聖鍼師の「往診」は、ついに世界の歴史という名の病巣にまで到達しようとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


魔族の長老、そして里の源である守護結晶を一度に「往診」してしまったくるるさん。

人間の常識を遥か超えたその神技に、魔族たちがひれ伏すシーンは、書いていてもスカッとしました!


今回登場した**『紫宮しきゅう』。

胸の真ん中にあり、呼吸器だけでなく、精神的な「詰まり」を取り除くのにも非常に効果的なツボです。

さらに地脈の『神門しんもん』**を連動させることで、里全体の毒素を一気に排出させるという、まさに「世界の医者」にしかできない荒業を披露してくれました。


浄化された光の中で、語られる真実とは……?


「枢さんの無双、かっこよすぎる!」

「魔族が驚愕して跪く流れが最高!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをお願いします!

皆さんの星一つが、枢さんの金鍼をさらに輝かせます!


次回、第64話は本日**2月27日 金曜日【18:00】**に更新予定。

夕食時の更新も、どうぞお見逃しなく!

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