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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第八章:南海灼熱諸島と炎の熱邪(ねつじゃ)】

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第617話「氷結洞窟の浄化!胸やけ・吐き気と内関の降逆」

背部輸穴の名穴『腎兪』の刺鍼によって町民たちの極寒腰痛を完治させ、残党「陰爪」を打ち破った往診チーム。しかし、寒氷鎮の命の綱である上流水源「氷結鍾乳洞」には、陰爪が投げ込んだ残余金毒の廃液が色濃く残されたままでした。水脈の汚染を根本から浄化すべく、氷結洞窟の奥深くへと足を踏み入れた一行を待ち受けていたのは、水面に漂う金毒の重苦しい不快臭と、密閉された洞窟内に充満する強烈な「金毒胃逆気こんどくいぎゃくき」でした。激しい胸やけ、吐き気、そして留まることのない胃の激痛に苦しむチーム! 枢先生の冷静なる刺鍼と東洋医学の智慧が、逆流する胃気に挑みます!

 寒氷鎮の北端に位置する「氷結鍾乳洞」の入口には、ひんやりとした不気味な冷気が立ち込め、鍾乳石から滴り落ちる水滴の音が重く響いていた。


 「ここが町の上流水源か……。外の景色は綺麗だが、中からは鼻を刺すような金毒特有の腐食臭が漂ってきやがるぜ……」

ガストンが戦斧を固く握り直し、洞窟の暗がりを鋭い目つきで見据える。


 「ええ……。この奥にある地下水脈の源流を浄化しない限り、町のみんなが安心して水を飲むことはできません。行きましょう、枢先生!」

ネネが弓を手にして先頭に立ち、往診チームは松明の光を頼りに鍾乳洞の奥深くと進んでいった。


鍾乳洞の最深部に達すると、そこには透き通っているはずの地下水脈が、どろりとした黄金色の濁りとともに渦を巻いていた。

金毒廃液が地下水と反応し、大量の有毒ガス「金毒胃逆気こんどくいぎゃくき」となって洞窟全体に充満していたのだ。


そのガスを一息吸い込んだ瞬間――往診チーム全員の胸元とみぞおちに、まるで焼けた鉄片を突っ込まれたかのような劇的な不快感が走った!


「おぇっ……!? げ、胃の中から酸っぱいものが逆流してくる……ッ! 胸が焼けつくように痛くて……吐き気が止まらねぇ……ッ!」

ガストンが喉元を押さえ、込み上げる強烈な吐き気に身をよじってその場に蹲った。


「くっ……! みぞおちが固く絞り上げられるみたいに痛いわ……ッ! 気持ち悪くて……立っていられない……ッ!」

ネネもまた青ざめた顔で胸元を叩き、激しい嘔吐感に襲われて膝をつく。


「……皆さん、ハンカチで口元を覆い、なるべく浅く息をしてください……! これは金毒の濁気が胃の正常な気の流れ(降流)を妨げ、逆流を引き起こした『胃気上逆いきじょうぎゃく心胃不和しんいふわ』です!」


くるるがすばやくガストンとネネのみぞおち(中脘・巨闕)に手を当てる。

胃から胸元にかけての気が激しく上突き、脈を診ると弦滑(げんかつ・気機の滞りと痰湿の滞りを示す緊張した脈)を呈していた。


「東洋医学において『胃の気は下に向かって降りる(胃主降濁)』のが正常な生理現象です! しかし、強い毒気や精神的ストレス、冷えなどが胃を直撃すると、胃の気が下に向かわず上に暴走して逆流を始めます。これが**『激しい吐き気、嘔吐、胸やけ、みぞおちの激痛、ウップと酸っぱい水が上がってくる、胸の苦しさ』**を引き起こす原因なのです! すぐに上逆した気を下に鎮めなければ、自律神経が乱れて全身の疲弊に繋がります!」


「ヒッヒッヒ! 愚かな医者どもが、自ら毒の壺に入ってくるとはなッ!」


濁った水脈の影から、銀爪会が放った巨大な魔獣「金毒大蛇こんどくおおおろち」と、それを操る残党兵が現れた!


「この洞窟の濁気は我が大蛇の毒気と混ざり合い、人間の胃腸を根こそぎ破壊する! 吐瀉物に塗れて苦しみ抜いて死ぬがいいッ!」

残党兵の合図とともに、金毒大蛇が巨躯をくねらせ、毒液の吐息を吹き散らしながら突進してくる!


「うぅ……っ! 気持ち悪くて……斧に力が入らねぇ……ッ! 立ち上がろうとすると……胃がひっくり返りそうだ……ッ!」

ガストンが胸の焼けつくような不快感と吐き気に耐え兼ね、戦斧を支えにするのが精一杯であった。


「……相棒! 腕の『胸と胃を鎮める名穴』を叩けッ! 吐き気が収まれば……あの巨大トカゲなど一瞬で叩き斬れるッ!」

隠密・コクが自らの胸の圧迫感に耐えながら、短剣を投擲して大蛇の毒液を間一髪で防ぎ止める!


「任せてください、哭さん! 心包経の名穴を刺激し、逆流する胃気を一気に下へと引き降ろします!」

枢の手が往診鞄から取り出したのは、胸中の滞りを滑らかに開通させる「降逆和胃こうぎゃくわい寛胸理気かんきょうりき純銀細鍼」であった!


「ハク、リナ! 胃の収縮を和らげ、吐き気と胸やけをスッと鎮める『生姜しょうが』と『竹茹ちくじょ』の降逆止吐アロマを、全員の手首へ集中照射しなさい!」

「了解です枢先生! 降逆止吐アロマ、手首へ全開照射ッ!!」


甘く爽やかな生薬と生姜の香りが手首から鼻腔へと抜け、胸元に溜まっていた重苦しい吐き気がすーっと解け始める!


「心包の気よ、上逆する胃気を鎮め、胸中の平穏を取り戻したまえッ! 手の厥陰心包経の絡穴・八脈交会穴……解放ッ!!」

シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!


枢の手から放たれた銀鍼が、苦しむガストン、ネネ、哭、ハク、リナ、そして自らの**「手首の横紋(手のひら側のシワ)の中央から、肘に向かって指幅3本分(2寸)上がった、2本の筋(橈側手根屈筋腱と長掌筋腱)の間」へ、寸分の狂いもなく的確に打ち込まれた!

打ち込まれたのは、八脈交会穴の一つであり、胸やけ、吐き気、胃痛、動悸、精神的ストレスを即座に鎮める東洋医学至高の心胃特効穴――『内関ないかん』!


ジュワァァァァァァッ!!!!!


「――つ……あぁぁぁぁぁぁぁッ!?!? 喉まで込み上げていた激しい吐き気と胸やけが……すーっとお腹の底へ引き降ろされて消えていくぞ……ッ!」

ガストンが胸元を押さえていた手を離し、スッキリとした表情で勢いよく立ち上がった!


「みぞおちの激痛と胃のムカムカが完全に消えたわ! 胸がすーっと軽くなって、息がスムーズに吸える……ッ!」

ネネが胸元を撫で下ろし、力強く弓を引き絞る!


「『内関』は、手の厥陰心包経てのけついんしんほうけいに所属する絡穴らくけつであり、陰維脈いんいみゃくに通じる『八脈交会穴はちみゃくこうかいけつ』です! 東洋医学において『胸・胃は内関に求めよ』**と称され、胃気上逆による吐き気、嘔吐、胸やけ、逆流性食道炎、胃痛、車酔い、ストレスによる動悸や不安を即座に緩和する、自律神経と胃腸を整える絶対の降逆名穴なのです!」


枢が力強く指を突き出す!


「な……何だとぉぉぉッ!? 毒気による激しい吐き気と胸やけが、手首のツボ一つで完全に鎮められたというのかぁぁぁッ!?」

残党兵が絶望に顔を歪める。


「ガストンさん、ネネさん! スッキリとしたその身体で、大蛇を倒し水脈を浄化しましょう!」


「おうよッ! 胸のつかえが取れて気分最高だぜぇぇぇッ! 毒大蛇ごと、一気に吹き飛べぇぇぇッ!」

ガストンが戦斧を豪快に一閃させ、黄金の気を爆発させて躍り出た!


「豪力・絆の太刀割り――降逆爆砕断ッ!!!!」


ドカァァァァァァァンッ!!!!!!!!


ガストンの一撃が金毒大蛇を一網打尽に打ち砕き、洞窟の壁面を貫いて綺麗な湧き水を水脈へと流し込んだ!

濁っていた水脈が一瞬にして透き通るような清流へと戻り、充満していた毒気が吹き散らされたのだった。


水脈の浄化に成功した往診チーム。しかし、白銀霊峰の最深部には、さらなる東洋医学の謎と試練が待ち受けていたのだった――!

 第617話をお読みいただき、ありがとうございました!


金毒廃液の濁気によって激しい吐き気、胸やけ、みぞおちの激痛(胃気上逆)に襲われたガストンさんたちを、枢先生が『内関ないかん』の刺鍼で見事に救い出し、水脈の浄化を果たす熱い展開をお届けいたしました。


 さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの激しい吐き気や胸やけを解消した「胃気上逆・心胃不和(胃の気が逆流して吐き気や胸やけを起こす病態)」の病理に基づき、日常で「胸やけや胃もたれがする、吐き気やウップと胃酸が上がってくる、乗り物酔い(車酔い・船酔い)がする、緊張やストレスで胃が痛む・動悸がする時」に、上逆した気をスッと下に鎮めてお腹と胸を楽にしてくれる絶対の名穴をご紹介します。


 今回登場した『内関ないかん』は、手のひらを上にした時にできる手首の横紋(一番手首に近いシワ)の中央から、肘に向かって指幅3本分(人差し指・中指・薬指の幅)上がった位置で、中央に通る2本の太いスジの間の凹みにあります。


 東洋医学において『内関』は、胸や胃、心のトラブルを解消する万能の交会穴です。自律神経の乱れを整え、胃の逆流運動を正常な下向きの動きに戻してくれるため、吐き気止めやストレス緩和の特効穴として世界中で広く使われています。


 ケアする場合は、反対側の親指の腹を『内関』に当て、2本の筋の間を挟み込むようにして痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと押します。これを息をゆっくり吐きながら左右5回ずつ試してみてください!

胸のつかえや吐き気がスーッと収まり、気持ちがとても落ち着きますよ!


 次なる第618話は、本日**8月15日(土曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!


白銀霊峰の裏側に広がる「沈黙の谷」! 往診チームを待ち受ける新たな患者とは――!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!

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