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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第61話:境界の雪、異形の患者

お読みいただきありがとうございます!


第2部・帝都編はここから未知の領域へ。

「世界を往診する」という、鍼師としてこれ以上ないほど不敵で、そして壮大な覚悟を胸に、くるるは帝都を離れました。


辿り着いたのは、北の境界線。

そこで二人が目にしたのは、魔導の汚染によって変り果てた大地と、雪の中に倒れていた「異形の少女」でした。


「これは国の病ではない……世界そのものの淀みだ」


語られるのは、師匠から受け継いだ禁忌の記憶。

1,900文字超の圧倒的熱量でおくる、第2部・新展開の幕開け。

聖鍼師の銀鍼が、世界の運命を塗り替える瞬間を、どうぞお見逃しなく!

 帝都ガレリアから北へ数日。

 かつては肥沃な大地だったという『断絶の山脈』の麓は、今や季節外れの猛吹雪と、ヘイズ博士が遺した魔導兵器の排熱が混ざり合い、視界を遮る不気味な白霧に包まれていた。


「……くるる様。……空気が、なんだかピリピリします。……息を吸うだけで、喉が焼けるみたいで……」

 リナがマフラーに顔を埋め、震えながら後ろをついてくる。


「……当然です。ここは帝国の魔導汚染と、魔族領から漏れ出す濃密な魔力が真っ向から衝突している場所。……気の流れが極限まで乱れ、雷のように弾けているのです。……リナ、先ほど教えた通り**『外関がいかん』**を温め、自身の経絡を守りなさい」


 枢は、自身の肩に掛けた「初代皇帝の赤いマント」をたなびかせ、一歩ずつ雪を踏みしめる。

 彼の翡翠眼ひすいがんには、地表を流れるはずの「地脈」が、まるで血管壁にこびりついた汚れのように黒く濁り、苦しげに脈打っているのが見えていた。


 その時、かつて師匠から授かった、ある「禁忌の教え」が枢の脳裏をよぎった。

『枢よ、ゆめゆめ忘れるな。……人体にツボがあるように、この大地にも、生命力が噴出する門がある。……聖域の中心に触れてはならぬ穴、**地脈の「正穴せいけつ」**があり、そこが不浄の気に冒されれば、それは一国の終わりではない。世界そのものが死に至る病だ』


「……師匠。……あなたが言っていたのは、このことだったのですか」

 枢の独白は、冷たい北風にかき消された。

 帝都の腐敗も、この境界の荒廃も、すべては「世界の正穴」が詰まり、気の循環が滞っていることから来る合併症に過ぎないのだ。


 瓦礫の山を越え、結界の杭が打ち込まれた境界線に差し掛かったその時、枢の鼻が微かな「血の臭い」を捉えた。


「……リナ、伏せなさい。……患者がいます」

「えっ……患者? こんな雪の中に?」


 枢が雪を掻き分けた先に横たわっていたのは、灰色の肌と、額から小さな角を生やした「魔族の少女」だった。

 彼女の全身からは、青黒い魔力の火花がバチバチと音を立てて漏れ出し、周囲の雪を不気味なすす色に変色させている。


「……魔族の子!? 枢様、危ないです! 魔族に触れれば、人間は魔力酔いで死ぬって教典にも……」

「……黙りなさい、リナ。……苦しんでいる者がいれば、種族を問わず診察するのが、我が一門の鉄則です」


 枢は躊躇なく少女の元へ膝をつき、その凍てつくほど冷たい手首を掴んだ。

 脈は驚くほど速く、不規則だ。魔族特有の強力な魔力が、出口を失って彼女の小さな肉体を内側から焼き切ろうとしている。


「……なるほど。……これは単なる魔力の中毒ではありません。……大地の経絡が詰まったことで、その地に住む彼女たちの気までが逆流を起こしている。……リナ、これは対症療法では間に合いません」


 枢は往診バッグから、翡翠の輝きを宿した銀鍼を抜き放った。

「……これは国の病ではない。……この少女も、そして帝都の混乱も、すべては世界そのものの淀みが引き起こした『症状』に過ぎない。……今の世界は、末期の病に侵されているのですよ」


 枢は少女の背中、脊椎の上にある**『霊台れいだい』**へと、一気に鍼を打ち込んだ。

 霊台は、心身の熱を鎮め、過剰なエネルギーを解放する要所。枢の清浄な「気」が注ぎ込まれると、少女の全身を覆っていた青黒い火花が、霧散するように消えていく。


「……熱が……引いていく……。……どうして……にんげんが……わたしたちを……」

 少女が微かに目を開き、驚愕の表情で枢を見上げた。


「……人間ではありません。……通りすがりの鍼師はりしです」

 枢は立ち上がり、北の空にそびえる、地脈の源流と思わしき巨大な黒雲の渦を見据えた。


 ヘイズの逃亡。初代皇帝の哀しき末路。そして目の前の魔族の少女。

 バラバラだった点と点が、今、一つの「世界の病理」として枢の中で繋がった。


「……リナ、決まりました。……私はこれまで、目の前の患者を救うことだけを考えてきました。……ですが、この大地そのものが病んでいるのなら、小手先の往診では何も変わらない」


 枢は、皇帝のマントを翻し、翡翠色の瞳に烈火のような意志を宿した。

「……誰かがやらねばならないのなら、私がやりましょう。……たとえ相手がこの世界のことわりであろうとも、私の鍼で穿てぬ病はありません」


 枢は一歩、魔族領の深淵へと足を踏み出した。

「……覚悟を決めなさい、リナ。……ならば私は、この世界を往診なおして差し上げましょう」


 第2部・中盤戦『不浄の盟約編』。

 聖鍼師の覚悟が、世界の運命を塗り替えるための第一歩を、雪原に深く刻み込んだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


第2部・後半戦がいよいよスタートしました!

「世界を往診する」というくるるさんの壮大な決意。ここから物語のスケールは、一気に「国」から「世界」へと広がっていきます。


今回登場した**『霊台れいだい』は、背中の中心にあり、心の熱を鎮めたり、激しい咳や呼吸困難を和らげるのに非常に効果的なツボです。

また、師匠の言葉として登場した地脈の『正穴せいけつ』**。これが、これから枢さんが目指すべき「世界の核心」の名前です。


魔族の少女との出会いが、枢さんをどんな運命へ導くのか。


「枢さんの覚悟、格好よすぎて鳥肌が立ちました!」

「『世界を往診する』ってセリフ、ブクマ確定です!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをお願いします!


次回、第62話は**【2月27日 金曜日 8:00】**に更新予定。

魔族の集落へ。枢の鍼が、誇り高き魔族の戦士たちをも驚愕させる!?

新章・魔族領編、どうぞお楽しみに!

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