第6話:魔王軍の刺客は、重度の『四十肩』に悩まされていた
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第6話は、魔王軍の刺客と枢の「静かなる対決」です。
刃を交えるよりも先に、枢が「翡翠眼」で見つけたものとは……?
「……動くな。貴様が、王女の呪いを解いた『聖鍼師』か」
王宮の裏庭、夕闇に紛れて現れたのは、漆黒の装束に身を包んだ男だった。
背中には一振りの湾刀。放たれる殺気は鋭く、並の衛兵ならその場にへたり込むほどだろう。
「……王女の呪い、ですか。あれは単なる気の滞りですよ。それより」
連城枢は、手元の鍼ケースを拭きながら、顔も上げずに答えた。
彼の【翡翠眼】には、男の全身を巡る魔力――「気」の流れが透けて見えている。
「あなた。ずいぶんと右肩が、お辛そうですね」
ピクリ、と刺客の眉が動いた。
「何を……戯言を」
「剣を構える際、無意識に右肩が三センチ上がっています。気が肩関節の周囲で完全に渋滞を起こしている。……いわゆる『四十肩』、いえ、魔族の寿命からすれば『四百肩』といったところでしょうか」
「貴様、私を侮辱するか……死ね!」
刺客が目にも止まらぬ速さで湾刀を抜き放つ。
しかし。
「――っ!?」
剣が振り下ろされる直前、刺客の右肩に激痛が走った。
関節がロックされたように動かない。そのわずかな隙に、枢は最短距離で踏み込んでいた。
「強引に動かせば、腱板が断裂しますよ。……大人しくしなさい」
枢の指先が、男の肩甲骨の上角にあるツボ、『天髎』を正確に捉えた。
魔力を一点に集中させた、鋭く、深い刺激。
「が……あ、あああああっ!?」
悲鳴を上げて崩れ落ちる刺客。
だが、その直後だった。
「…………え?」
刺客は目を見開いた。
何百年もの間、重い鎖で繋がれているようだった右肩が、嘘のように軽い。
どんよりと澱んでいた魔力の流れが、堰を切ったように指先まで勢いよく駆け巡る。
「腕が……軽い。まるで、自分の腕ではないようだ……」
「姿勢が悪いんですよ。毎日そんな重い刀を振り回していれば、気も滞ります。暗殺の前に、まずはストレッチを覚えるべきですね」
枢は呆れたように息を吐くと、呆然と自らの手を見つめる刺客に、一本の鍼を差し出した。
「それは、私が特別に精錬した鍼です。……また肩が回らなくなったら、ここへ来なさい。ただし、次は治療費をいただきますよ」
魔王軍の暗殺者は、もはや戦う理由を忘れ、子供のように何度も肩を回していた。
ついに魔族さえも、枢の「聖鍼」の虜(?)になってしまいました。
肩が軽くなった刺客は、任務を忘れて何を語り出すのか……。
本日も5話更新予定です!
「四十肩、他人事じゃない……」
「枢のクールな説教が好き!」
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