第583話「絶対絶陰の祭壇!百会の回陽救逆刺」
『中脘』と『関元』への温熱刺鍼、そして『人参湯』と『大建中湯』の蒸気によって、教皇ゼノの放った「脾胃虚寒(腹中の凍結)」を完全に撃破した枢先生率いる往診チーム。後がないゼノは、氷結教皇庁の最深部『絶対絶陰の祭壇』へと退き、ガルフレイド全土から汲み上げた無数の氷の怨念と寒邪を自らの肉体に吸い上げ、巨大な「絶陰の氷魔皇」へと異形化します。ゼノが放つのは、人間の体内からすべての熱と命の灯火(命門の火)を瞬時に消し去る極限の病理「陽気暴脱」! 全員が意識を失いかける絶体絶命の危機の中、枢先生が解き放つのは、百穴の王『百会』と救急蘇生の奇穴『水溝』による奇跡の回陽救逆刺でした!
大聖堂のさらに奥、氷の螺旋階段を下りきった先には、空間全体が濃密な紫黒色の冷気と不気味な氷の結晶で埋め尽くされた『絶対絶陰の祭壇』が広がっていた。
祭壇の中央には、ガルフレイド全土の土脈・水脈から吸い上げられた「寒邪の泥流」が渦を巻き、その中心で教皇ゼノが杖を天にかざして高笑いを上げていた。
「――クックック……来よったな、愚かな東方の医者どもめ! だがもう遅い! 我はこの祭壇を通じ、ガルフレイドすべての生き物の命の熱を回収し尽くしたのだ!」
ゼノの言葉と共に、泥流から溢れ出した紫黒色の冷気が一気に彼の肉体へと収束していく。
バキバキバキバキッ!!
ゼノの皮膚は漆黒の氷の鎧へと変化し、背中から無数の氷の棘が噴出し、巨躯を誇る「絶陰の氷魔皇」へと異形化を遂げた!
「これが我が完成形……! 絶陰の絶対領域へ入るが良い! 喰らえ……『陽気暴脱・絶命冷獄』ッ!」
ゼノが巨腕を振るった瞬間、大気が瞬時に絶対零度以下へと暴落し、光さえ凍りつくような不気味な黒い冷気波が往診チーム全体を飲み込んだ!
バシィィィィィィンッ!!!!
「ぐぁぁぁぁぁぁぁッ!?!? あ、暖かい感覚が……頭の中から……全身から消えていく……ッ!」
ガストンが戦斧を手放し、目を見開いたままその場に崩れ落ちた。
「 clinical に見て……や……やべぇ……ッ。身体が冷たいんじゃない……『生きている感覚』そのものが……消えていきやがる……ッ!」
哭の視界が急速に黒く染まり、膝から崩れ落ちて微動だにしなくなる。
「枢……先生……私……意識が……」
ネネがすり鉢を落とし、ハクとリナ、ガイルも次々と白目を剥いて意識を失い、祭壇の冷たい黒氷の上へと倒れ伏した。
全員の脈拍はお米の粒ほどに小さく微弱になり(微細脈)、肌は死人のように蒼白く、体温は急速に奪われていく。
「……これが……『陽気暴脱』……! 体内の原熱(陽気)が限界を超えて漏れ出し、生命そのものの灯火が消えかける極限のショック状態……!」
枢自身も激しい悪寒と強烈な眩暈に襲われ、視界が途切れ途切れになる。
だが、彼の胸の奥で燃える「すべての患者を救う」という揺るぎない志(正気)だけは、どんな絶対零度の寒邪であっても凍らせることはできなかった。
「……諦めません……! どんなに深くて暗い絶望の淵であっても……頭頂から天の気を取り込み、精神と生命の軸を繋ぎ止めれば……人間は必ず蘇ることができます!」
枢は激しく震える手で往診鞄の秘密の区画を開き、黄金の輝きを解き放つ特注の極長聖鍼『回陽救逆鍼』を引き抜いた!
彼が狙うのは、体内のすべての陽気が交差し、脳と精神(神明)を目覚めさせる全身の頂点――『百会』!
そして、救急蘇生の最重要穴であり、気を一瞬で覚醒させる人の中心――『水溝(すいこう・人中)』!
「ハク……リナ……! 意識の深層へ届きなさい! 陽気を一瞬で爆発的に蘇らせる奇跡の回陽救逆処方――『四逆湯』と『参附湯』の最高濃度温熱蒸気を……全員の顔面と頭頂へ浸透させなさい!」
枢の声が潜在意識に届いたのか、倒れていたハクとリナの指先がかすかに動き、調合大釜から黄金色の高熱蒸気が噴出! 一行の頭部と顔面を包み込んでいく!
「ガストンさん……哭……目を覚ましなさいッ!! 天の陽気よ……集いなさいッ!」
シュッ――!!
枢は自らの限界を超えた集中力で跳躍し、ガストンの頭頂部の中心――『百会』へ向けて、まっすぐに聖鍼を打ち込んだ!
続いて、鼻の下と上唇の間にある『水溝』へ、鋭い救急の旋転刺激を加える!
ドクゥゥゥゥゥンッ!!!!
「――ッ!?!? ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!? 頭のてっぺんから……太陽の光が脳ミソに突き刺さったみたいだぁぁぁッ!?」
ガストンが目を大きく見開き、ガバッと跳び起きた!
彼の蒼白だった顔面に一瞬で真っ赤な血色が蘇り、全身からメラメラと燃え上がるような熱気が噴出する!
「息ができるッ! 意識がハッキリ戻ったぞ! 枢先生の鍼が……死の淵から俺を引き戻してくれたんだッ!」
ガストンが豪快に叫ぶ!
「『百会』は百の経絡が交わる陽気の頂点! そして『水溝』は気を一瞬で開竅(かいきょう・覚醒)させる蘇生の要穴! 陽気が脱失しかけた極限状態でも、この二穴を正しく刺激すれば、体内の原熱を頭頂から全身へ一気に駆け巡らせることができるのです!」
枢は間髪入れず、哭、ネネ、ガイル、ハク、リナの『百会』と『水溝』へも奇跡の回陽救逆刺を繰り出していく!
「はッ……!? 覚醒だ相棒……! 頭の中の霧が一瞬で晴れて、全身の細胞が怒涛勢いで蘇りやがるッ!」
哭が短剣を握り直し、鋭い眼光でゼノを睨みつけた!
ネネもハクもリナもガイルも、全員が完全に意識を取り戻し、体温と生命力を完全に復活させたのだ!
「な……何だとぉぉぉぉッ!? 我が『陽気暴脱』の絶対冷獄を……頭の穴二つへの刺激だけで破ったというのかぁぁぁッ!?」
絶陰の氷魔皇と化したゼノが、天地を揺るがすほどの激震と驚愕の悲鳴を上げた!
「 clinical に見て、相棒の救急刺の前に、お前の「死の冷気」なんて通用しねえんだよッ! 全員、一気に行くぜッ!」
哭の合図と共に、往診チーム全員が立ち上がり、ゼノへ向けて武器と薬湯を構えた!
「ゼノ……! 次の旋律で、あなたの中に残る寒邪の病根を完全に浄化します!」
枢が静かに誇り高く長鍼を掲げ、黄金の気が大聖堂の暗闇を眩しく照らし出す。
寒邪の教皇・ゼノとの最終決戦――その真の決着の時が、ついに訪れようとしていた!
第583話をお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、絶対絶陰の祭壇にて、異形化した寒邪の教皇・ゼノが解き放った生命の熱を完全に奪い去る極限の病理「陽気暴脱(ショック・意識障害・生命機能停止の危機)」に対し、枢先生が百穴の王『百会』と蘇生の要穴『水溝』への回陽救逆刺、そして『四逆湯』『参附湯』の温熱蒸気によって劇的に意識と生命力を蘇らせる、息をのむ救命劇をお届けいたしました!
さて、今回は作中でガストンさんや哭たちが危機に瀕し、枢先生が速やかに解決した「陽気暴脱・気ぜつ・頭重感・冷えによる激しい眩暈や意識の低下」の病理に基づき、「冬場の激しい冷え込みや極度の疲労、ストレスによって頭が重くてボーッとする、立ちくらみや眩暈がする、気力が湧かず意識が遠のくような感覚がある時、頭の働きを一瞬でシャキッと覚醒させたい時」に、天の陽気を頭頂から取り込んで全身の自律神経とエネルギーを劇的に引き揚げてくれる最高峰の覚醒・蘇生名穴をお届けします。
今回ご紹介するのは、頭頂部の中心にある、すべての陽気が集まる百穴の王『百会』です。
場所は、**頭のてっぺんにあり、「左右の耳の一番高い場所を結んだライン」と「顔の鼻筋からの中心線」が交差する頭頂部のちょうど中央(押すと少し凹みがあり、脳の奥にズーンと抜ける心地よい響きがあるところ)」**にあります。
東洋医学において『百会』は、体を通る無数の経絡(特に陽気を通す督脈)が集結する「陽の頂点」です。冷えや疲労、激しいストレスで体内の気や陽気が低下すると、この『百会』の周辺はブヨブヨと柔らかくなったり、逆にカチコチに硬くなって頭部の血流が途絶えます。ここを適切に刺激することで、作中の枢先生が聖鍼『百会』を打ったように、頭頂から一気に温かな陽気が脳と全身へと駆け巡り、濁った意識や重だるい頭を一瞬でクリアにして全身の気力を蘇らせてくれます。
ケアする場合は、両手の施術指(中指や人差し指)を重ねて『百会』に当て、頭の中心に向かって垂直にじわーっと優しく5秒間押し込むのを5回ほど繰り返してみてください。また、仕事や勉強中の集中力低下や冷えによる眩暈の際、ここをゆっくり押すだけでも、ゼノの絶命冷獄を打ち破った枢先生のように、頭がシャキッと冴え渡り、全身に活力に満ちた健やかな身体を取り戻すことができますよ。
次なる第584話は、本日**7月29日(水曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております。
教皇ゼノとの最終決戦決着! 東方寒冷大陸『ガルフレイド』に奇跡の春が訪れる大フィナーレ! どうぞお楽しみに!




