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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第56話:白銀の塔、擬似神経の罠

お読みいただきありがとうございます!


地下の外科医ベルンから託された、戦慄のカルテ。

初代皇帝を「生ける廃墟」として弄ぶ帝国の禁忌を止めるため、くるるはついに帝都の中枢『中央白銀塔』へと足を踏み入れます。


立ちふさがるのは、痛覚を失い、全身を機械化した帝国の「魔導機甲兵」。

鉄の皮膚と擬似神経を持つ彼らを、聖鍼師はどう「診察」するのか。


曲池、手三里……鋼鉄を貫く翡翠の輝き。

1,900文字超の特大ボリュームで描く、潜入と激闘の記録。

お帰りの電車や、一日の終わりのひとときに、ぜひお楽しみください!

 帝都ガレリアの空を突き刺すようにそびえ立つ『中央白銀塔』。

 その壁面は、常に流動する液体魔導金属で覆われ、物理的な衝撃を無効化する強力な結界を放っている。黄金の軍事医官証を持つくるるであっても、最上階のヘイズ博士の執務室へと至るには、幾重にも重なる「防疫」という名の検問を突破しなければならなかった。


「……リナ、ここからは空気がさらに冷たくなります。……気を、胸の**『膻中だんちゅう』**に集めて、外部の邪気に魂を曝さぬよう意識しなさい」

「は、はい……。なんだか、ここ、建物なのに生きてるみたいで気持ち悪いです……」


 リナの直感は正しかった。塔の内部に張り巡らされた魔導配線は、まるで巨大な生物の血管のように脈動し、侵入者の生体エネルギーを常に監視している。

 二人がエレベーターホールの前まで差し掛かったその時、天井から三体の影が音もなく舞い降りた。


 それは、帝都中央病院が極秘裏に開発した防衛ユニット――『魔導機甲兵マギ・ソルジャー』。

 かつて人間だったその肉体は、四肢を鋼鉄の駆動部に置き換えられ、顔の半分は真鍮製のバイザーに覆われている。彼らには感情もなく、ただプログラムされた命令に従う「動く手術道具」だ。


「……目標、未登録の生体反応を確認。……排除プロセスを開始する」

 機甲兵の腕部が変形し、高周波を纏った魔導ブレードが展開される。


「……やれやれ。……痛みを感じぬよう神経を麻痺させ、魔力で無理やり肉体を駆動させているのですか。……あまりに乱暴な処置だ。……そんな『無理』をさせれば、魂が悲鳴を上げますよ」


 枢は一歩も引かず、往診バッグから、ひときわ太く、剛性に優れた**『天雷剛金鍼てんらいごうきんしん』**を抜き放った。


「……まずは、その過剰な出力を支えている擬似的な『腕の節』を止めます。……肘の外側、魔力と物質が交差する要、『曲池きょくち』!」


 枢の体から翡翠の気が爆発的に溢れ出し、目にも止まらぬ速さで先頭の機甲兵の肘へと鍼が突き刺さった。

 曲池は、本来は清熱や関節の動きを整えるツボだが、枢の気が打ち込まれることで、機甲兵の腕部回路に激しい「気のショート」を引き起こした。


「ギ、ガッ……!? 右腕……出力……喪失……」

 鋼鉄の腕が力なく垂れ下がる。しかし、後続の二体が、仲間の故障を無視して左右から同時に斬りかかってきた。


「……無駄です。……気の流れを無視した機械の動きは、私には止まって見えます。……前腕の外側、筋肉と魔導繊維が密着する急所、『手三里てさんり』!」


 枢は流れるような動作で二人の機甲兵の手首付近へと鍼を滑り込ませた。

 手三里は、胃腸の調子を整えるだけでなく、上肢の麻痺や痛みを取り除く要穴。だが、それを逆用して「特定の信号」を遮断すれば、いかに強固な擬似神経といえども、その伝達は完全に沈黙する。


「……動かないでしょう? ……無理に動かそうとすれば、あなたのその高価な魔導基板が焼き切れますよ」


 枢の言葉通り、機甲兵たちは武器を構えたまま石像のように固まった。バイザーの奥で赤く光る眼が、理解不能なエラーコードを吐き出している。


「……あなた方の主、ヘイズ博士に伝えなさい。……患者の苦痛を取り除くのが医者の仕事。……ならば、この塔そのものが抱える『歪み』も、私が根こそぎ摘出してあげると」


 枢が鍼を引き抜くと、機甲兵たちはその場に膝をつき、スリープモードへと強制移行した。

 枢は彼らを一瞥することなく、重厚な白銀の扉へと手をかける。


「……さて、行きましょうか。……この先にいる『初代皇帝』。……彼が流しているのは、涙か、それともただの冷却水か……。……この目で診断させてもらいます」


 扉が開かれた先には、巨大な吹き抜けの空間が広がっていた。

 その中央、無数のチューブに繋がれ、琥珀色の液体に満たされたカプセルの中に、一人の男が浮いていた。


 三百年前にこの国を建国した英雄。

 しかし今、そこにいるのは、全身を機械のパーツで継ぎ接ぎにされ、絶え間ない魔力の脈動にその身を震わせる、悲しき「人形」だった。


「……これは……ひどい……」

 後ろに控えていたリナが、あまりの惨状に息を呑み、口元を両手で覆った。


「……ええ。……これほど不衛生な寝室は、世界中を探しても他にないでしょう」

 枢の翡翠色の瞳が、怒りと哀れみを込めて、静かに燃え上がった。


 ついに辿り着いた、帝都の心臓。

 そこで枢を待っていたのは、白衣を纏い、狂気的な笑みを浮かべた男――ヘイズ博士だった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


ついに中央白銀塔の内部へ!

痛覚を奪われた機甲兵たちですら、くるるさんの前では「診察待ちの患者」に過ぎませんでした。機械と肉体が混ざり合った存在でも、そこに「気の流れ」がある限り、聖鍼師の鍼は届きます。


今回登場した『曲池きょくち』は、肘を曲げた時にできるシワの端にあるツボ。熱を逃がしたり、免疫力を高めたりする万能の場所です。

そして『手三里てさんり』は、曲池から指三本分ほど手首側にあり、肩こりや腕のだるさ、さらには胃腸の疲れにも効く、現代の戦士デスクワーカーにとっても欠かせない名穴です。

腕が疲れている時にぐっと押すと、ツーンとした心地よい刺激がありますよ。


さて、カプセルの中で眠る「初代皇帝」。その無残な姿を前に、枢さんの怒りが爆発します。


「機甲兵をツボで黙らせるシーン、スタイリッシュで格好いい!」

「ついにヘイズ博士と対峙……! どんな問答が始まるのか楽しみ!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをお願いします!


次回、第57話は本日**【21:00】**に更新予定。

狂気の医師・ヘイズとの舌戦。そして、初代皇帝の「真の病」が判明する!?

水曜日の夜の締めくくりも、どうぞお見逃しなく!

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