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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第六章:過労の覇権と再生の経絡】

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第558話「命門の烈火と、氷結の融解」

ギガワークス本営が敷いた絶対零度の結界『黒岩の連峰』。その中心へ哭の影の移動で飛び込み、黄金の長鍼を突き刺した枢先生。すべてを停止させ、命の熱量を奪い去る『凍血の番人』たちの寒冷防衛陣に対し、体内の奥底に眠る生命の灯火「命門の火」を呼び覚ます、極限の「温陽融解おんようゆうかい」の結末を描写いたします。

 黄金の長鍼が黒岩の石床を貫いた瞬間、突き刺した一点を中心に、まばゆい琥珀色の光が同心円状に広がっていった。


 「無駄な抵抗を。我が本営の凍結術式は、絶対零度。あらゆる熱の分子運動を停止させる。そこへいかなる火を灯そうとも、一瞬で凍りつく運命にある」


 『凍血の番人』の隊長が、氷の結晶で覆われた仮面の下から、冷徹な声を響かせる。

彼の言葉通り、枢が放った黄金の光に対し、番人たちの盾から噴き出す黒い吹雪が襲いかかり、光の輪を漆黒の氷で覆い尽くそうとした。枢の白い医療着の裾はすでにバリバリと凍りつき、彼の吐き出す息は白を通り越して、凍結した霧となって地面に落ちていく。


 しかし、枢の表情に焦りはなかった。彼の白銀の瞳は、表面の氷ではなく、そのさらに奥深く――黒岩の大地の底にある「凍りついた龍穴の核」をじっと見つめていた。


 (東洋医学において、強い寒邪によって傷つけられた身体を救うのは、外から与える一時的な炎(熱)ではありません。五臓六腑の最深部、生命の門に宿る『腎陽じんよう』――人間が生まれながらに持っている、自らを発熱させる根本の火を呼び覚まさねば、本当の融解は訪れないのです)


 「……燃えなさい、ハザリアの大地が、ディルムンドの泉が記憶していた……生命の本源なる灯火よ!」


 枢が両手に全神経を集中させ、長鍼の柄を親指で小刻みに震わせる。東洋医学における高度な手技の一つ――『焼山火しょうざんか』。気の導入と振動によって、経絡の奥底から爆発的な熱を生み出す神業の刺鍼法であった。


 ドクン!!


 その瞬間、大地の底から、まるで火山の脈動のような重低音の地鳴りが響き渡った。

番人たちが張り巡らせていた黒い氷の結界のヒビから、冷たい水ではなく、黄金色の「超高熱の気の波動」が間欠泉のように噴き出し始めたのだ。それは外から加えられた火ではなく、大地そのものが自らの自己免疫を爆発させ、内側から寒邪を押し返そうとする『命門の火』の顕現であった。


 「な……に……!? 術式の温度が、急上昇している……!? 凍結回路が、内側から溶かされていく……!」


 番人の隊長が、初めてその冷徹な声に明らかな動揺を走らせた。

彼らが構える氷の大盾が、枢の足元から広がる圧倒的な温熱の波動に触れた瞬間、ジュウジュウと凄まじい水蒸気を上げてドロドロに融解し始めたのだ。


 「 clinical に見て、あんたたちの氷点下の世界は、もう完全に春を迎えたみたいだぜ」


 枢の背後に控えていた哭が、影の中からしなやかに飛び出した。

大地が温もりを取り戻したことで、寒邪によって凝固しかけていた彼の影の経絡もまた、完全にその俊敏さを取り戻していた。哭は融解してバランスを崩した番人たちの隙間を風のようにすり抜け、彼らの鎧の継ぎ目――体温を強引に奪い去っていた魔導冷却装置の核を、短剣の柄で正確に粉砕していく。


 「ガッ……あ、温かい……? 身体が……」


 冷却装置を壊され、枢の温陽の気を浴びた番人たちの顔に、何年ぶりかも分からぬ本物の人間の血色が戻っていく。青白く凍りついていた皮膚が本来の温かさを取り戻し、彼らは痛覚と人間としての感覚を奪われていた長い悪夢から目覚めたように、その場に崩れ落ちて深い涙を流した。


 「バルト隊長、ガストンさん! 今です!」


 馬車から身を乗り出したハクが叫ぶ。


 「おうよ! 身体が芯から温まってきたぜ! 野郎ども、先生が開いてくれたこの温かい一本道を、一気に突き進むぞ!」


 ガストンが凍結から完全に解き放たれた足で地面を蹴り、戦斧を大きく振り回しながら防衛陣の残党を蹴散らしていく。バルト率いるハザリアの防人たちも、大地の温かい気の支援を受け、盾を並べて一気に前進を再開した。


 絶対零度を誇ったギガワークスの『黒岩の連峰』防衛陣形は、聖鍼師の放った内なる命の火によって、文字通り影も形もなく融解し、ただの心地よい温風の吹く山道へと変貌したのである。


 「……はぁ、はぁ……」


 すべての番人たちが無力化され、地脈の凍結が完全に解除された瞬間、枢は長鍼を握ったまま、その場に膝を突いた。

限界を超えた『焼山火』の手技による陽気の消耗は激しく、彼の白い医療着は大量の汗で濡れそぼっていた。


 「枢先生!」


 ハクとリナが真っ先に駆け寄り、枢の身体を支える。リナはすぐに往診鞄から、冷え切った身体を内側から温め補気する『人参養栄湯にんじんようえいとう』の丸薬を取り出し、枢の口へと含ませた。


 「ありがとうございます、二人とも……。ですが、これで本営へと続く最大の関門は突破しました。ギガワークスの『過労の覇権』の心臓部は、もう目の前です」


 枢は薬を飲み干し、ハクたちの手を借りてゆっくりと立ち上がった。その白銀の瞳は、山脈の向こう側にそびえ立つ、ギガワークス本営の巨大な黒いタワーを、しっかりと捉えていた。


 「さあ、行こうぜ、相棒。 clinical に見て、本営のトップの奴らは今頃、自分たちの敷いた氷の陣が溶かされて、お漏らしするほど震えてるはずだからな」


 哭が不敵に笑い、馬車の扉を開ける。

凍てつく寒邪の呪縛を乗り越え、人間の本源なる温もりを証明した往診チーム。彼らは再び馬車へと乗り込み、新大陸を病ませる諸悪の根源、ギガワークス本営への最終決戦の路へと、力強く馬を走らせるのだった。

 第558話をお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、すべてを凍結させる『寒邪』の呪縛に対し、枢先生が東洋医学の秘技『焼山火』を駆使し、大地と人間の奥底に眠る「命門の火(自己発熱力)」を呼び覚まして内側から完全に融解させる、劇的な温陽おんようの決着をお届けいたしました。外からの力に頼るのではなく、自らの内なる生命力を燃え上がらせることで、いかなる過酷な環境(邪気)も打ち破ることができるという、東洋医学の究極の真理を感じていただければ幸いです。


 さて、今回は作中の枢先生たちが「急激な極寒や、冷徹な寒邪の侵入によって経絡が凍りつき、手足が氷のように冷え切って胃腸の動きが完全に停止し、激しい腹痛や下痢、あるいは体力の低下に襲われた時」に、お腹の底から爆発的な温熱(陽気)を巡らせて全身を瞬時に温め、消化吸収能力を劇的に蘇らせてくれるお腹の超重要穴をお届けします。


 今回ご紹介するのは、おへその下にある、体内のエネルギー(気)が最も集まる要所『関元かんげん』、別名『丹田たんでん』です。

場所は、お腹側にあり、おへその中心から真下に指幅4本分(人差し指から小指まで)下がったところにあります。


東洋医学において、ここは「任脈にんみゃく」の上にあり、生命力の根本である『原気げんき』が蓄えられる、人間にとって最も重要なエネルギーの貯蔵庫です。強い冷えや過労によって身体が動かなくなる時は、この『関元』の火力が完全に弱まっています。ここを適切に刺激し温めることで、作中の枢先生が黄金の長鍼で大地の熱を呼び覚ましたように、お腹の底から強力な熱(脾腎の陽気)が湧き上がり、冷え切った手足や胃腸の強張りを一気に解きほぐし、全身に豊かな活力を満たすことができます。


ケアする場合は、両手のひらを重ねてツボに当て、時計回りに円を描くように優しく、じんわりとお腹の奥が温かくなるまで20回ほどさすり込んでみてください。衣服の上から使い捨てカイロや温熱シートでこの部分を日常的に温めるだけでも効果は絶大で、黒岩の連峰の寒邪を打ち破った枢先生たちのように、腹の底から途切れない確かな温もりと絶対的な免疫力を身体に取り戻すことができますよ。


 次なる第559話は、明日**7月17日(金曜日)の【12:00】**に更新を予定しております。ついにギガワークス本営へと到達する枢先生たちを待ち受ける、組織の最高権力者とは!? どうぞお楽しみに!

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