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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第54話:黄金の回廊、鉄屑の街

お読みいただきありがとうございます!


ついに帝都ガレリアへと足を踏み入れたくるるとリナ。

黄金に輝く大通りの煌びやかさとは裏腹に、路地裏には魔導技術の進歩から切り捨てられた人々が喘いでいました。


「救える命」を平然と見捨てる帝都の医療体制。

そして、自らを「選ばれし者」と称するエリート医師たちの傲慢。

聖鍼師の怒りが、静かに、しかし烈火のごとく燃え上がります。


雲門、太淵……そして傲慢な鼻柱を叩き折る「指圧」。

1,800文字超の特大ボリュームで描く、帝都編の本格始動。

通学・通勤のお供に、ぜひ最後までお楽しみください!

 帝都ガレリアの門をくぐった先には、アイアンロックとは比較にならない「文明の暴力」が広がっていた。

 空を走る磁気浮上式の魔導列車が銀色の尾を引いて走り去り、街路には夜になっても消えることのない、魔石を用いた街灯が太陽のような輝きを放っている。行き交う貴族たちは、過剰なまでの魔力防護を施された絹のドレスを纏い、最新式の自動歩行補助具アシストをカチカチと鳴らしながら、優雅に談笑していた。


「……眩しすぎて、経絡けいらくの脈動が見えにくいですね。……リナ、目を細めて歩きなさい。この不自然な光の過剰な刺激は、脳の**『攅竹さんちく』**を疲れさせ、自律神経を狂わせます」

「はい……。でも、枢さん、あっちを見てください。あんなにキラキラしてるのに、路地裏には……」


 リナが指差した先。黄金色に輝く大通りのすぐ脇にある、光の届かない狭い路地。そこには、煤に汚れ、ボロ布を纏った人々が、地面に座り込んで力なく咳き込んでいた。華やかな表通りを歩く人々は、彼らをまるで「動く鉄屑」かのように見向きもせず、時には忌々しげに裾を払って通り過ぎていく。


「……帝都の光が強いほど、その影は深くなる。……ヘイズ博士が目指す『完璧な世界』の正体がこれですか」


 くるるが路地裏へ一歩足を踏み入れると、一人の老婆が、激しい呼吸困難に陥り、紫色の顔をして倒れていた。その首元には、帝都の富裕層が身につける「清浄魔導具」の壊れかけた安物が、逆に毒素を撒き散らすように異音を立てて火花を散らしている。


「……どきなさい。……今、その重い・・・を外してあげます」

 枢は老婆の首から呪いのように絡みついていた魔導具を無造作に剥ぎ取ると、往診バッグから、翡翠の輝きを宿した銀鍼を抜き放った。


「まずは、胸に溜まった濁った気を散らす。……鎖骨の下、肺の気が集まる大門、『雲門うんもん』!」

 枢の鍼が老婆の胸元を正確に貫くと、滞っていた気の流れが一気に解放され、ヒューヒューという鳴り止まなかった喘鳴が、スッと静まった。


「さらに、血行を促進し、冷えた内臓を温める。……手首の横紋上、親指の付け根にある**『太淵たいえん』**!」

 太淵は「脈のみゃくのえ」と呼ばれる、全身の血流と血管の状態を司る名穴。枢が翡翠の気を込めると、老婆の冷え切っていた手足に、みるみるうちに赤みが戻っていく。


「……あ……あぁ……。楽だ……。神様、ありがとうございます……」

「神ではありません。……通りすがりの鍼師です」


 枢が老婆を抱え起こしたその時、路地の入口に数人の男たちが現れた。彼らは「白銀のガウン」を羽織り、胸には帝都中央病院の紋章――蛇と歯車を組み合わせた歪なマークを刻んでいる。


「……何をしている、そこの不審者。……許可なくスラムの者に医療行為を行うことは、帝都医療独占法に違反する。……没収だ、その不潔な鉄の棒を」


 現れたのは、帝都の「特権医師」たちだった。彼らは枢の鍼を見下し、老婆が今しがた救われたという事実すら、自分たちの管理外で行われた「不法行為」として忌み嫌っている。


「……不潔な鉄の棒、ですか。……あなたの手に握られているその魔導メスこそ、患者の生命力を削り取る、ただの暗殺道具に見えますがね」

 枢は冷然と言い放ち、自身の鍼を丁寧に拭った。


「貴様……! 言わせておけば! 我々はヘイズ博士から直接指導を受けた、選ばれし『科学的治療』の担い手だ! 貴様のような野蛮な土着信仰の徒とは、存在の格が違うのだ!」

 医師が魔導メスを起動させ、枢を威嚇する。青白い高周波の刃が走り、路地の壁を無残に焼き切った。


「……科学、ですか。……では、あなたのその震える指先、**『神門しんもん』**のツボが、自分の行っていることへの『恐怖』を隠しきれていないのは、どう説明するのですか?」


 枢は医師の目の前まで歩み寄ると、相手がメスを振るうよりも早く、その手首を掴み、鋭い指圧を加えた。

「あ、がっ……!? 腕が……動か、ない……!? 何をした!!」

「……心の気が乱れ、自分の信念を失えば、腕は石のように重くなる。……神門は心の安定を司る場所。……罪のない者を威圧するその心臓の動悸、私が止めてあげましょうか?」


 枢がさらに深く指をめり込ませると、医師は情けなく尻もちをつき、魔導メスは力なく地面に転がった。周囲の貧民たちが、枢の圧倒的な言葉と技に、感嘆の溜息を漏らす。


「……行きましょう、リナ。……ここには、治すべきものが山積みです。……まずは、この帝都の『喉元』まで、診察の手を広げるとしましょう」


 枢は老婆に一包の薬草を渡し、黄金の大通りを再び歩き始めた。

 彼の目指す先には、帝都の最上層にそびえ立つ、ヘイズ博士の待つ白い巨塔があった。そこでは、国家の英雄すらも「実験体」として扱われる、この世で最も不衛生なオペレーションが進行している。


「待ってろ、ヘイズ……。あなたの歪んだメスが届かぬ場所まで、私の鍼を届かせてあげますよ」


 枢の翡翠色の瞳は、権力に守られた塔の頂上を、静かに、しかし烈火のごとき意思で射抜いていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


帝都での活動がいよいよ始まりました。華やかな表通りの裏側に隠された、絶望的な格差と、冷酷なエリート医師たち。くるるさんの怒りが垣間見える回となりました。


今回登場した『雲門うんもん』は、鎖骨の下にある肺の重要なツボ。ここをほぐすと、深い呼吸ができるようになり、気持ちも前向きになるんですよ。

そして『太淵たいえん』は、全身の血流を整える「脈の王様」のような場所。冷え性や疲れが取れない時、ここを優しくマッサージするだけで体温が上がるのを感じられるはずです。

また、エリート医師の動きを止めた『神門しんもん』は、心臓の動悸や不安を鎮めるのに最適なツボ。現代社会のストレスに効く、私たちにとっても大切なメンテナンスポイントです。


ついに動き出した枢さんの帝都往診。ヘイズ博士との直接対決も、一歩ずつ近づいています。


「エリート医師をツボ押し一発で黙らせる枢さん、格好良すぎる!」

「帝都の光と影の描写、1,800文字以上のボリュームで没入感すごかった!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをお願いします!


次回、第55話は本日**【12:00】**に更新予定。

帝都の闇に潜む協力者、そして語られる「死せる皇帝」の真実。

お昼休みの更新もお見逃しなく!

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