表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/265

第52話:鋼の巨獣、経絡の断絶

お読みいただきありがとうございます!


異形の流民たちを救ったくるるの前に立ちはだかるのは、帝国の科学の粋を集めた魔導戦車『グラップネル』。

鉄の皮膚、鋼の神経を持つ巨大兵器に対し、枢が選んだのは「解体」という名の往診でした。

解谿、肩髃、大椎……戦車の「ツボ」を射抜く、驚天動地の聖鍼術!

第52話、鋼鉄を穿つ翡翠の光を見届けてください!

 地を這うような重低音と共に、霧を切り裂いて現れたのは、帝国の機甲技術の結晶――魔導多脚戦車『グラップネル』だった。

 六本の鋼鉄の脚がアスファルトを砕き、旋回する主砲が、くるると背後の流民たちを冷酷にロックオンする。


「ひっ……! 枢さん、逃げてください! あれは村一つを更地にする怪物です!」

 リナが悲鳴を上げるが、枢は往診バッグから、ひときわ長く、黒い輝きを放つ鍼――**『剛震黒金鍼ごうしんこくきんしん』**を抜き放った。


「……逃げる? いいえ。これほど巨大な『関節痛』を抱えた患者を放っておくほど、私は冷酷ではありませんよ」

 枢の翡翠眼ひすいがんには、戦車の装甲など映っていない。見えているのは、魔導炉から各駆動部へと流れる「魔力の神経系」の歪みだけだ。


『目標確認。……排除する』

 戦車のスピーカーから合成音声が響き、主砲が火を噴こうとした瞬間。

 枢は「地を這うような低い姿勢」で爆発的に加速した。


「ガシャンッ!!」

 戦車の脚が枢を踏み潰そうと振り下ろされる。だが、枢はその巨大な鋼鉄の足首にある、動力伝達の接合部――人体の**『解谿かいけい』**に相当する部位へと、黒い鍼を深々と突き立てた。


「…… 解谿は足首の動きを司る要。……鉄の塊だろうと、動くための『理』がある限り、そこには必ず『ツボ』が存在します」


 枢が鍼に翡翠の気を流し込む。

 瞬間、戦車の右前脚が、まるで脱力したかのように折れ曲がり、巨大な巨体がバランスを崩して傾いだ。



『警告。右初脚の同調率がゼロ。……自動修復を開始……』

「修復? させませんよ。……次は、その肥大化した『肩』です。……魔導炉の出力を分散させる分岐点、**『肩髃けんぐう』**の回路を遮断します!」


 枢は傾いた車体を駆け上がり、砲塔の付け根にあるエネルギーパイプの束へと、二本の鍼を同時に刺入した。

 ここは、戦車にとっての「肩のツボ」。

 枢がツボを突くたびに、戦車の駆動音は悲鳴のような高音へと変わり、砲塔はあらぬ方向を向いて回転を止めた。


「……仕上げです。……この巨体の、一番の弱点。……神経が集約される首筋の裏、**『大椎だいつい』**の基盤を壊します!」


 枢は戦車の最上部、ハッチの隙間から露出している制御装置へ肉薄した。

 『大椎』は全身の陽気が集まり、中枢を司る場所。戦車においては、人工知能と魔導炉を繋ぐ「脊髄」にあたる。


「聖鍼術、解体奥義――『神経断絶シナプス・ブレイク』!!」


 枢が全身の力を込め、黒い鍼を制御盤の中央へと叩き込んだ。

 バチバチッ、と激しい紫色の火花が飛び散り、戦車の六本の脚が同時に痙攣を起こす。


『システム……強制終了……。……私は……健やか……に……』

 最期の合成音声と共に、巨大な魔導戦車は、まるで深い眠りについたかのように、その場にどっしりと沈み込み、二度と動かなくなった。


 静寂が訪れる。

 あとに残されたのは、完全に沈黙した鋼鉄の巨獣と、それを見上げる呆然とした流民たち。


「……ふぅ。……やはり、鉄の患者は手応え(・・・)がありすぎますね。……指先が少し痺れました」

 枢は鍼を丁寧に拭い、往診バッグへと戻した。


「……す、すごい……。戦車を……たった三本の針で、眠らせちゃった……」

 リナの言葉に、救われた流民の一人が、よろよろと枢の前に歩み寄り、その手を取った。


「……あんた、あんたは神様か……? 兵器を壊すんじゃなく、苦しみから解放したみたいだ……」

「……神ではありませんよ。……ただの、旅の鍼灸師です」


 枢はそう言って微笑むが、その視線は沈黙した戦車のハッチへと向けられた。

 中から這い出してきたのは、恐怖に顔を歪めた帝国の操縦士。


「……さて。……あなたの『心』も、かなり歪んでいるようですね。……たっぷりとお話を伺いましょうか。……帝都で待つヘイズ博士についてね」


 枢の翡翠色の瞳が、冷たく、そして鋭く、逃げ場のない操縦士を射抜いた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


枢さん、ついに戦車まで眠らせてしまいました。

今回登場した『解谿』は、実際にも足首の痛みや胃腸の不調に効くツボですが、今回は戦車の「足首」として狙われましたね(笑)。

そして『肩髃』や『大椎』は、肩こりや自律神経に効く、私たち現代人にとっても大切なメンテナンスポイントです。


ついに捕らえた帝国の操縦士。彼が語る「帝都の闇」とは……?


「戦車の関節を外すなんて、発想が聖鍼師すぎる!」

「枢さんのドSな診察(尋問)が始まりそうでワクワクする!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをお願いします!


次回、第53話は本日**【21:00】**に更新予定。

帝都の深淵、そしてヘイズ博士が隠蔽する「真の患者」が明らかに!?

火曜日の締めくくりも、どうぞお見逃しなく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ