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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第49話:翡翠の輝き、アイアンロックの夜明け

お読みいただきありがとうございます!


月曜(祝)ブースト、ラストを飾る第49話。

街全域に及ぶ黒幕ヘイズの呪い。絶体絶命のアイアンロック。

くるるが選んだのは、己の限界を超えた「街全体の同時診察」でした。

天池、完骨……翡翠の光が街を包み込むとき、奇跡が舞い降ります。

1,800文字近い特大ボリューム、聖鍼師の真の力を見届けてください!

 アイアンロックの街が、悲鳴と金属音に包まれていた。

 黒幕ヘイズ博士が放った強制起動信号により、人々の体内に埋め込まれた魔導チップが暴走し、街全体がドス黒い魔力の霧に覆われようとしている。


「……くるる様、顔色が……! もう止めてください、これ以上は!」

 背後で枢の背中に鍼を立てたリナが、震える声で叫ぶ。

 枢の翡翠色の瞳は、今や限界を超えた気の出力により、眩い光を放っていた。彼の足元の石床は、大地から汲み上げる膨大なエネルギーに耐えきれず、クモの巣状にひび割れている。


「……リナ、手を離さないでください。……私が、この街の『心音』を聴き届けるまで」


 枢の意識は、自身のツボ**『霊台れいだい』**を通じて、数万人の市民一人ひとりの経絡へと接続されていた。

 赤ん坊の泣き声、老人の荒い呼吸、兵士たちの恐怖。それらすべてが、歪んだ魔導チップという「異物」によってかき乱されている。


(……見えました。……数万の不協和音を統べる、唯一の『濁り』が)


 枢は、大地のツボ**『湧泉ゆうせん』**から吸い上げた純粋なエネルギーを、一気に街の四方へと解き放った。

「カシム将軍! 今です、鐘を鳴らしなさい!!」


 ガーン、ガーンと、街に四つある巨大な鐘楼が、一斉に重厚な音を奏でる。

 その震動が、枢の放った翡翠の気と共鳴し、物理的な音波を超えた「浄化の波」となって街を駆け抜けた。


「……まずは、心臓への負担を和らげる。……全市民の左胸、第四肋間、**『天池てんち』**を開放します!」


 枢が虚空に向かって、見えない鍼を打つかのように指を弾く。

 街中で胸を押さえて倒れていた人々が、同時に深い呼吸を取り戻した。天池は心の外壁を守るツボ。そこに枢の気が届くことで、魔導チップの毒が心臓に届くのを未然に防いだのだ。


「次に……脳を焼く狂気を鎮める。……耳の後ろの骨の窪み、『完骨かんこつ』!」


 翡翠の光が街の隅々まで浸透していく。

 『完骨』は頭部の血流を整え、精神の暴走を抑える要。チップの干渉を受けて錯乱しかけていた兵士たちが、まるで魔法が解けたかのように正気を取り戻していく。


『……馬鹿な! 私の計算では、個別の処置など不可能なはずだ! 数万人の経絡を同時に、それも正確なツボを射抜いて制御するなど、人間の仕業ではないぞ!』

 モニターの中で、ヘイズ博士が初めて余裕を失い、顔を歪ませる。


「……ヘイズ。……あなたの『計算』には、人間が持つ『生きたいという本能』が含まれていない。……私はただ、彼らの本能をほんの少し、ツボを通じて後押ししたに過ぎません」


 枢の体から、黄金色に近い翡翠の光が爆発的に膨れ上がった。

 それは、街全体を飲み込もうとしていた黒い霧を、一瞬で消し飛ばす圧倒的な「輝き」。


「聖鍼術、広域奥義――『万象回生ばんしょうかいせい』!!」


 街全体が翡翠の光に包まれ、次の瞬間、静寂が訪れた。

 人々は立ち上がり、互いの無事を確認し合う。魔導チップは無力化され、アイアンロックを支配していた重苦しい油の臭いさえも、どこか清々しい初夏の風へと変わっていた。


「……はぁ、はぁ……。やれやれ。……やはり、街一つの往診は……さすがに肩が凝りますね」

 枢は力なく膝をつき、リナに支えられながら、満足げに微笑んだ。


「枢様……! 凄いです、街が……街が笑っています!」

「……ええ。ですが、これは対症療法に過ぎない。……ヘイズ、聴こえていますか?」


 枢は、ノイズまじりのモニターを見据えた。

「……あなたの医療ミス、私がすべて修正してあげましょう。……あなたの待つ帝都まで、必ず『往診』に伺いますよ」


『……ククク、楽しみだ。……だが枢殿。君が今救ったその街の下には、もっと古い『病』が眠っている。……帝国の歴史そのものが、一つの巨大な腫瘍であることに、君はまだ気づいていない』

 モニターが真っ暗に消える。


 カシム将軍が、枢の前に跪いた。

「……聖鍼師・枢殿。貴殿は、今日、帝国の救世主となった。……だがヘイズの言葉は真実だ。帝都には、我ら武人でも手が出せない、闇の派閥がいくつも存在する」


「……構いませんよ。……どこへ行こうと、不衛生なものがあれば掃除し、歪んだツボがあれば貫くだけです」


 枢は往診バッグを抱え直し、夜明けの光が差し込み始めた街を見つめた。

 リナが隣で、誇らしげに胸を張る。

 

 アイアンロックの危機は去った。

 だが、この勝利は、帝国全土を巻き込む巨大な「大手術」の序章に過ぎない。

 聖鍼師の銀鍼が、次に貫くのは帝都の心臓か、それともこの世界の成り立ちそのものか。


 翡翠の瞳は、すでに地平線の先、さらなる闇が渦巻く帝都の空を、静かに、そして鋭く見据えていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


月曜日の6回更新ブースト、いかがでしたでしょうか。

枢さん、ついに街一つを丸ごと救ってしまいました……!

今回登場した『完骨』は、耳の後ろにあり、自律神経や不眠にも効く現代人にもお勧めのツボ。そして『天池』は、心の疲れを取り除いてくれる場所です。


これにてアイアンロックの危機は去りましたが、物語はいよいよ帝国の深淵へと進んでいきます。


「枢さんの『万象回生』、浄化の映像が頭に浮かんで感動しました!」

「ヘイズとの直接対決が待ち遠しい!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをお願いします!

皆様の応援のおかげで、当初150話の予定だった本作も、300話、500話と長く愛される作品にしていけそうです!


明日からはいよいよ「帝都潜入編」がスタート!

火曜日の更新(08:00予定)も、どうぞお見逃しなく!

よい夜をお過ごしください!

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