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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第47話:深淵の鼓動、魔導炉を診察せよ

お読みいただきありがとうございます!


聖鍼師の往診対象は、ついに「国家の心臓」へ。

暴走する超魔導動力炉。アイアンロック壊滅まで、残り時間はわずか。

魔法も科学も通用しないエネルギーの濁流を、くるるの銀鍼はどう導くのか。

巨骨、大椎、膻中……巨大機械を「診察」する枢の神技が炸裂します。

1,700文字超、手に汗握る決死の往診をお楽しみください!

 「鋼鉄の墓場」と呼ばれた野戦病院のさらに下。カシム将軍に導かれ、くるるが降り立ったのは、重厚な防壁に囲まれた帝国の最深部――『超魔導動力炉・ガレリアコア』の制御室だった。


 そこは、巨大なガラス越しに見下ろす、数階建てのビルに匹敵する巨大な円筒形の装置が鎮座する空間だ。装置の内部では、禍々しいほどの青白い魔力が渦巻き、重低音の振動が床を通じて枢の足の裏を絶え間なく揺らしている。


「……不愉快ですね。この街全体の気が濁っていた原因は、やはりこれですか」

 枢は翡翠眼ひすいがんを細め、ガラスの向こう側を凝視した。彼の目には、魔導炉が吐き出すエネルギーが、まるで猛毒の毛細血管のように周囲の空間へと侵食していく様が見えていた。


「枢殿、驚くのはまだ早い。……この炉を管理していた主任技師たちが、次々と原因不明の昏睡状態に陥っているのだ。……中には、肉体が透け始めた者すらいる」

 カシム将軍の声は重い。


「……当然でしょう。これほど高密度の不純な魔力を浴び続ければ、人間の経絡は『物質としての形』を保てなくなります。……いわば、存在そのものの、激しい拒絶反応アレルギーです」


 その時、制御室に警報が鳴り響いた。

「閣下! 第三冷却系統が沈黙! 魔導炉の圧力が限界値を突破します! このままではアイアンロック全域が吹き飛ぶぞ!!」

 技師たちが血相を変えて叫ぶ。


「……リナ、ここで待っていなさい」

「えっ、枢さん!? どこへ行くんですか!」

「……決まっているでしょう。……往診ですよ。……この『鉄の患者』が、酷い熱を出して暴れているようですから」


 枢は止める憲兵たちを翡翠の気の波動で退けると、防護隔壁を強引に開き、魔力放射が吹き荒れる炉の内部へと足を踏み入れた。

 一瞬で防護服が焼き切れるほどの魔力。だが、枢はその全身のツボに自身の気を巡らせ、薄い翡翠の膜を張ることで、その猛毒を無効化していた。


(……見えました。この炉の『ツボ』が)


 枢は宙に浮く鉄骨を軽やかに跳び、魔導炉の基部へと肉薄する。

 彼が狙ったのは、エネルギーがもっとも激しく循環している三箇所のジョイント部だった。


「人体の『病』も、機械の『暴走』も、理屈は同じ。……詰まりを取り、流れを整える。……まずは、魔力の逆流を止める関所、**『巨骨ここつ』**に相当するこのバルブ!」


 枢は往診バッグから、熱伝導率を極限まで高めた金鍼――**『金剛導鍼こんごうどうしん』**を抜き、超高温のパイプへと突き立てた。

 巨骨は鎖骨の外端にあるツボであり、気の衝突を和らげる要衝。枢の気がパイプを通じて炉の深部へと届き、激しい振動がピタリと止まる。


「次に……溜まりすぎた熱を逃がす排熱孔。……背中の正中線、第七頸椎の下にある**『大椎だいつい』**の役割を、この放熱板に担わせます!」


 枢は二本目の鍼を、火花を散らす制御基板へと叩き込んだ。大椎は「陽の気が集まる場所」であり、高熱を引かせるための特効穴だ。枢の鍼が刺さった瞬間、オーバーヒートを起こしていた計器類が、一気に正常値へと戻っていく。


「そして最後……。乱れた『しん』を鎮める、炉の核心部――『膻中だんちゅう』!」


 枢は魔導炉の心臓部、激しく脈動するクリスタルの直前まで歩み寄った。

 そこには、長年の過負荷によって黒いすすがこびりつき、気の流れが完全に捩じ切れた「しこり」があった。


「聖鍼術、極致――『天命開通てんめいかいつう』!」


 枢が最後の一刺しを、クリスタルの亀裂へと送り込む。

 純白に近い翡翠の光が、魔導炉の内部を隅々まで洗い流していく。不純な魔力が浄化され、青白かった光が、穏やかな太陽のような黄金色へと変化していった。


 静寂。

 あれほど街を揺らしていた重低音が消え、代わりに心地よい、生命の鼓動のような振動だけが制御室に残された。


「……ふぅ。……やれやれ、これほど巨大な患者は初めてですよ。……おかげで、鍼が一本、焼き切れてしまいました」

 枢は煤だらけになった手で、折れた金鍼を見つめ、苦笑した。


 制御室に戻った枢を、カシム将軍と技師たちが、神を見るかのような眼差しで迎えた。

「……信じられん。……最新の冷却魔導具でも抑えられなかった炉の暴走を……たった三本の針で、完全に『手懐けた』というのか……」


「……勘違いしないでください。……私は修理をしたのではありません。……この炉が、自分自身の力で安定できるように『整えた』だけです。……人も、機械も、本来は健やかであろうとする力を持っているのですよ」


 枢はそう言って、リナが差し出したタオルで顔を拭った。

 だが、その翡翠眼は、魔導炉の奥底に、人の手によって意図的に植え付けられた「黒い呪印」が焼き付いているのを見逃さなかった。


(……これは事故ではない。……何者かが、この炉を暴走させ、街ごと『処分』しようとした……?)


 帝国の発展を支える技術の裏側でうごめく、巨大な陰謀。

 枢の往診は、もはや医学の域を超え、国家の闇を暴く戦いへと変貌していく。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


枢さん、ついに人間どころか「発電所」まで治しちゃいましたね。

今回登場した『大椎』は、風邪の引き始めにドライヤーやカイロで温めると、一気に免疫が上がって熱が引く、非常に実用的なツボなんですよ。


そして、魔導炉の底に見つかった不気味な印……。

帝国の闇は、私たちが想像するよりもずっと根深いようです。


「機械を『手懐けた』ってセリフ、枢さんらしくて最高!」

「500話まで続いてほしい! もっと色んなものを往診して!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをお願いします!

当初150話の予定でしたが、皆様の応援があれば300話、500話と、枢さんの往診カバンが空になるまで続けます!


次回、第48話は本日**【18:00】**に更新予定。

動力炉の闇。そこから繋がる「帝国最高顧問」の影とは。

夕方の更新も、どうぞお見逃しなく!

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