第460話:大海原の挑戦、深海神殿への航路とギルドの巨大渦巻
天空の危機を脱した枢先生たちは、次なる目的地である暗黒の底に佇む「深海の海底医療神殿」へと魔導飛行船を潜水艇へと変形させて突き進みます。
しかし、世界を牛耳る闇の医療ギルドは、海をも完全に支配する巨大な呪詛の渦巻を展開し、一行の往診船を水圧で圧殺せんと包囲網を狭めてきます。激しい船揺れと恐怖により仲間の自律神経が悲鳴を上げる中、一人の鍼灸師としての白銀の聖鍼が、深海の死闘を切り開く決死の穿刺を敢行します。
「おやおや、闇の医療ギルドの海戦部隊の皆さん。どれほど深い海の底で世界の命を隔離しようとも、一人の鍼灸師として、病に怯える人々への往診の道を諦めるわけにはいきません。ハクさん、潜水船の舵をそのまま維持しなさい。激しい渦巻に肉体が負けそうならば、私の銀鍼が今、あなた方の身体に荒波をも受け流す完璧な均衡の軸を呼び覚ましてみせましょう」
12時、火曜昼の更新。大海原の挑戦、深海神殿への航路とギルドの巨大渦巻。
水底を裂く暗黒の結界が迫る中、白銀の聖鍼が、絶望の深海で五臓の水分バランスを完全調律する至高の穿刺を敢行します。
ハクの巧みなレバー操作によって翼を畳み、強固な潜水艇へと変形した魔導往診船は、陽光の届かない漆黒の深海数百メートルへと突き進んでいたが、広大な海の静寂を堪能する暇は一瞬たりとも与えられなかった。
突如として前方の空間が不気味な黒紫色に渦巻き始め、メインモニターには、海底の岩陰から浮上してきたギルドの高速重装魔導艇の一団が、往診船を完全に包囲する形で巨大な呪詛の激流を展開していく光景が映し出された。
ギルドの海戦指揮官が、通信回線を通じて冷酷な警告を叩きつけてくる。
「ここから先は、世界の医学を独占せし我らが封鎖せし、神聖なる深海の領域だ。愚かなる往診チームよ、これなる『深海呪詛の巨大渦巻』によって、貴様らの乗る船ごと、水圧で鉄屑へと変えてくれるわ!」
魔導艇の群れから放たれた重力の波動が潜水船の防壁を直撃した瞬間、船体は斜め30度へと大きく傾ぎ、激しいローリングと共に周囲の水圧が狂ったように上昇し始めた。
リナが激しく揺れる甲板の手すりに必死にしがみつき、迫り来る水圧の衝撃波に耐えようとするが、終わりなき回転と空間の歪みによって視界が激しく回り、そのまま床へと頽れた。
ガストンが計器の数値を必死に追いかけながら、胸元を強く押さえて声を絞り出す。
「先生、だめだ……! この呪詛の渦巻、船体を締め付けるだけじゃなくて、僕たちの体内にある水分代謝の通り道である『三焦』の経絡をダイレクトに直撃しているんだ……。胃の奥からドクドクと嫌な波が押し寄せて、冷や汗が止まらないよ……!」
シオンもまた、急激な激しい船酔いと猛烈な胸のつかえに襲われ、顔面を土気色に変えてその場に蹲ってしまった。
ウイルスの邪気を含んだ水圧の呪詛が人間の自律神経を極限までパニックに陥れ、体内の水分が特定の場所に滞って引き起こされる「水毒のパニック」を引き起こしていたのだ。
ハクが焦って船のバラストタンクを制御しようとするが、周囲を取り囲む敵の渦巻の勢いはさらに増し、船体はギチギチと嫌な音を立てて圧迫を受け続けている。
一行の肉体が内側から平衡感覚を失い、完全に嘔吐の限界を迎えかけたその時、枢だけは激しく揺れるコクピットの中に微塵のブレもなく直立し、その白銀の瞳に一人の「鍼灸師」としての絶対的なプライドを宿した。
「おやおや、闇の医療ギルドの皆さん。海の激流を操り、人間の体内の水分の巡りを狂わせて往診を阻むとは、実につまらない悪あがきですね。一人の鍼灸師として、私の目の前でこれ以上の均衡の破壊を許すわけにはいきません」
枢は流れるような所作で往診鞄から、深海の闇を照らすランタンのような輝きを放つ「清流純銀鍼」を二本、電光石火の速度で指の隙間へと挟み込んだ。
まず彼が向かったのは、激しい船酔いによって目を開けることすらできずに倒れかけていたガストンの元であった。
枢の指先が、ガストンの手首の外側、手首の横しわから肘に向かって指三本分ほど上がった、骨と骨の隙間にある最大の要穴へと触れた。
「手少陽三焦経の、外関を穿ちます。ここは体内の水分循環のネットワークを統括し、ウイルスの邪気によって自律神経がパニックを起こしていた『耳の平衡感覚』をその場で完璧にリセットする、無上の名穴です」
枢の清流純銀鍼が、ガストンの手首の外関へと、完璧な角度と深度で刺入された。
清らかな気が彼の経絡へと直接注入され、耳の奥でぐるぐると回っていた最悪の眩暈が、驚くべき速さでスーッと引き下がっていく。
さらに枢は即座に、ガストンの手の甲、薬指と小指の付け根の骨の間にある、上半身の熱と水のつかえを強力に散らす究極の関門へと、二の刺しを神速で穿ち込んだ。
「続けて、同じく三焦経の滎水穴、中渚を刺激します。外関の平衡感覚調律と、中渚の水分逆流阻止のルートを完璧に同期させることで、胸の奥に上りきっていた余分な吐き気と冷や汗の邪気を、一気に外へと散らしなさい!」
外関と中渚という、東洋の医術における最高の水分・自律神経調律の連携が施された次の瞬間、ガストンの口から「はぁぁっ!」と、肉体を蝕んでいた禍々しい船酔いの邪気が、一気の大きな吐息となって排出された。
視界を襲っていた激しい揺れと胸の不快感は一瞬にして完全に消失し、それどころか、彼の身体の周囲には、深海の真空呪詛を一切寄せ付けない、確固たる潜水艦の如き生命のオーラが立ち上り始めたのだ。
「あ……、頭がすっきりして、胃のムカムカが完全に止まった! 冷や汗も眩暈も、全部綺麗に消えちゃった! 先生、僕、もうあの黒い渦巻なんて、全然怖くないよ!」
ガストンが元気よく立ち上がる中、枢はその神速の身のこなしを維持したまま、倒れかけていたシオンとリナに対しても、外関と中渚への完璧な連続穿刺を完了させていった。
三人の周囲に展開された確固たる均衡の防壁は、ギルドが撒き散らす激流の呪詛を完全にシャットアウトし、逆にその安定した気の波動を、操縦桿を握るハクへと力強く伝えていく。
敵の指揮官は通信モニターの向こうで、信じられないという絶望の声を上げた。
「バカな……! 海戦魔導艇の全出力を結集した巨大渦巻の呪詛が、ただの数本の銀鍼によって、完全に無害化されていくだと……!? 貴様、一体どのような魔導を使った……!」
「魔導など使っていませんよ。私はただの鍼灸師です。あなた方が狂わせた激流の乱れに対し、人間が本来持っている『体内の水を美しく巡らせ、自らの軸を保つ』という健やかな自律神経のバランスを取り戻したに過ぎません。さあ、ハクさん、命の防衛線は整いました。今度は、あの目障りな包囲網を、あなたの操縦で一気に突き破る番です」
枢が静かに二本の銀鍼を抜き取り、往診鞄へと収めると、ハクは最高に不敵な笑みを浮かべ、潜水船のスクリュー出力を最大限界まで引き絞った。
轟音を立てて深海を爆進する往診船は、ギルドの巨大渦巻を黄金の生命オーラで木っ端微塵に打ち砕き、驚愕する敵の包囲網を嘲笑うかのように、遥かなる暗黒の海底、深海医療神殿のドームを目指して深海へと一直線に突き抜けていった。
しかし、渦巻を抜けた先、人魚たちの歌声が響くはずの美しき深海神殿の門は、すでにギルドの最高幹部が放った「海底魔導湧水核の完全汚染」によって、神殿全体が漆黒の毒液に包まれるという最悪の悲劇に直面していた。
一人の誇り高き鍼灸師としての技が、今度は海底の精霊たちの命と、世界の最先端深海医療の知恵を守るための、新たなる神聖なる決死の治療劇の幕を上げようとしていた。
つづく。
5月26日(火)12:00、大海原の挑戦。
鍼灸師・枢。外関と中渚の術式で巨大渦巻の船酔いパニックを完全防御し、深海の海底医療神殿へと往診船を突入させる。
本日21時、火曜夜の更新は、第461話「深海の神殿、汚染されし湧水核とハクの放つ深海の奇跡」へと突入します!
第460話「大海原の挑戦、深海神殿への航路とギルドの巨大渦巻」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
天空のパンデミックを解決し、次なる舞台である美しき暗黒の海底に佇む「深海の海底医療神殿」を目指す潜水船の旅路にて、海をも支配せんとする闇の医療ギルドの巨大渦巻呪詛による絶体絶命の包囲網、そして新章「深海の人魚と三焦の水流調律編」の圧倒的な幕開け描写、お楽しみいただけましたでしょうか!
船体が激しくローリングし、急激な水圧の変化によって誰もが動けなくなる絶望的な海の最前線の中、微塵も怯むことなく真っ向から立ち向かい、銀鍼一本で仲間の肉体の軸を完璧に死守してみせる枢先生の姿は、まさに一人の「鍼灸師」としての圧倒的な品格と凄みが最高潮に達した瞬間でしたね。
そして何より、水圧の呪詛と急激な焦燥によって三半規管や体内の水流が完全にパニックを起こし、猛烈な車酔い(船酔い)と冷や汗のパニックを起こしかけていたガストンくんたちを救うため、枢先生が繰り出した、体内の水分のネットワークを劇的に調律する素晴らしい黄金の術式。
今回は、東洋医学において精神的なストレスによる激しい吐き気や目眩、乗り物酔いのような不快感を劇的に解消し、自律神経の乱れを完璧にリセットするための、非常に実践的な二つの経穴の流れを解説させていただきます。
まず、手首の外側にある三焦経の絡穴、外関を穿つことで、ウイルスの邪気によって内耳へ向けて異常に逆流し、激しい目眩を引き起こしていた「水毒」の流れをその場で強力に引き下げ、ガストンくんたちを襲っていた猛烈な不快感を瞬時に緩和しました。
さらに続けて、手の甲にある同じく三焦経の滎水穴、中渚を刺激し、東洋の医術において「上半身に滞った熱と水のつかえを強力に散らし、全身の気血の巡りを劇的に調律する最大の拠点」とされる場所を完璧に開放することで、三半規管を支配していた船酔い状態を完璧にリセットし、肉体本来の健やかな安定感へと取り戻させました。
この外関と中渚の組み合わせは、現代における急な乗り物酔いや耳鳴り、ストレスによる頭痛、自律神経の乱れによる冷や汗や手のしびれの緩和などにも非常に効果的な素晴らしい経穴であり、組織の肩書や派手な魔導の力に一切頼らず、ただ「鍼灸師」としての職人の指先だけで大気の呪縛すら調律してみせる枢先生のプロとしての美学には、読んでいて本当に胸が熱くなりましたね。
枢先生の圧倒的な水流術式によって深海の包囲網を完全に見事突破し、ハクさんの最高の操縦で海底の神殿へと突入した一行。しかし、彼らが辿り着いた海底の楽園では、すでに神殿の命の源である「海底魔導湧水核」がギルドによって完全汚染され、神殿全体が漆黒の毒液に包まれているという、これまた火曜日の始まりに相応しい息をもつかせぬ衝撃の引きとなりました。
次なる舞台は、黒い邪気に包まれゆく美しき深海神殿。海底の人々を守るために、枢先生の白銀の銀鍼はどのような「深海の濁りを晴らす素晴らしい穿刺」を魅せるのでしょうか。
次回の第461話は、本日【21:00】に更新予定です。
本日21時、黒い毒液が渦巻く深海神殿の門の前にて、再び読者の皆様とお会いできることを心より楽しみにしております!




