第46話:鋼鉄の野戦病院、絶望を貫く銀鍼
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帝国将軍に案内された先は、魔導科学の犠牲者が集う「鋼鉄の墓場」でした。
暴走する魔導デバイス、廃人と化した兵士たち。
科学も魔法も匙を投げた絶望を前に、枢の銀鍼が閃きます。
天柱、百会、神門……聖鍼術が証明する「人体の底力」。
1,600文字超でお送りする第46話、どうぞお楽しみください!
将軍カシムに連れられて枢が足を踏み入れたのは、アイアンロックの街外れに位置する、巨大な円形施設だった。
そこは「病院」と呼ぶにはあまりにも殺風景で、冷たい鉄の匂いと、機械の油、そして隠しきれない死の臭気が漂っていた。
「……ここは、帝国軍・第零医療研究所。通称『鋼鉄の墓場』だ」
カシムの言葉通り、そこには魔導義手や魔導義足の適合に失敗し、全身を魔力の暴走によって焼き切られた兵士たちが、無残に並べられていた。
「枢様……これは、あまりにも……」
リナが絶句し、枢の背中に隠れる。
ある兵士は、義足から逆流した魔力によって下半身の経絡が完全に壊死し、ある兵士は、脳に直接埋め込まれた魔導チップの過負荷で、廃人のように空を仰いでいる。
「……帝国の最新医学は、肉体を『部品』としてしか見ていない。……合わなければ捨て、壊れれば無理やり繋ぎ合わせる。……その結果がこれですか」
枢の翡翠眼が、部屋全体を包む「淀んだ黒い気」を捉える。
「笑ってくれても構わん。だが、我ら軍部にとっても彼らは駒ではない。……枢殿、お主の技で、この『部品』と化した男たちを、もう一度『人間』に戻せるか?」
その時、施設の奥で凄まじい爆発音と悲鳴が響いた。
「離せ! 俺を殺せ! 脳が、脳が焼けるんだぁぁぁっ!!」
拘束台に縛り付けられた一人の若き兵士が、頭部に埋め込まれた魔導デバイスから紫色の電弧を放ち、暴走していた。
「……どきなさい。……今、その不衛生なノイズを止めてあげます」
枢は往診バッグから、ひときわ細く、しなやかな銀鍼――**『透脳鍼』**を抜き放った。
白衣の軍医たちが「触るな! 魔法障壁を破らなければ死ぬぞ!」と叫ぶが、枢は歩みを止めない。
彼は兵士の暴れる頭部を、左手の一振りで固定した。
「まずは、脳への過剰な血流を抑えます。……首の後ろ、髪の生え際にある**『風府』。そしてその両脇の『天柱』**!」
枢の二本の銀鍼が、正確に急所を貫いた。
『天柱』は文字通り「天を支える柱」。脳へと続く気の流れの要衝だ。そこを枢が適確に封じることで、暴走していた魔力の供給路が遮断される。
「次に……脳の熱を逃がし、精神を安定させる。……頭頂部の中心、百の気が集まる**『百会』**!」
枢は兵士の頭頂部に、垂直に銀鍼を刺入した。
瞬間、施設内に響き渡っていた絶叫が止まった。
兵士の目から焦点が戻り、荒れ狂っていた魔力の放電が、霧が晴れるように消えていく。
「な……!? デバイスの制御プログラムが……完全に沈黙しただと!?」
軍医たちが計器を二度見する。
「沈黙させたのではありません。……脳の熱(炎症)を下げ、彼自身の『自己治癒力』を魔導デバイスより優先させただけです。……人体の計算能力は、あなたの作った鉄屑よりも遥かに優れている」
枢はさらに、兵士の手首にある**『神門』**に鍼を軽く触れさせた。
「……神門は心の気を整える場所。……もう大丈夫ですよ。……あなたの『魂』は、まだ壊れていません」
若き兵士は、溢れる涙を拭いもせず、震える声で呟いた。
「……あ……あぁ……。音が……静かだ……。俺は、俺に戻れたんだ……」
その光景を見ていたカシム将軍が、重く、力強い拍手を送った。
「……見事だ。……魔法でも科学でもなく、たった数本の針が、帝国の『絶望』を貫いたか」
だが、枢の表情は依然として険しい。
彼は施設のさらに奥、巨大な「魔導動力炉」が脈打つ地下階を見つめていた。
「……将軍。個人の治療は終わりましたが、この施設の『病根』はもっと深い。……この建物の地下にあるあの動力源、あれが周辺の経絡をすべて歪めている。……次に行うのは、この施設の『大手術』ですね」
枢の不敵な笑みが、鉄の壁に反射する。
聖鍼師の往診は、ついに帝国の巨大軍事施設そのものを標的に定めた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
枢さん、ついに脳に埋め込まれた機械の暴走まで抑え込んでしまいましたね。
今回登場した『天柱』や『百会』は、実際にも頭痛や肩こり、そして自律神経を整えるのに非常に効果的な、現代人にも必須のツボなんですよ。
そして、施設の地下に眠る「病根」とは一体……。
「枢さんの言葉一つ一つが、傷ついた兵士たちの救いになっている……!」
「機械を『鉄屑』と言い切るの、最高にスカッとする!」
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次回、第47話は本日**【15:00】**に更新予定。
地下動力炉への潜入。そこには、魔導科学が隠蔽した「禁忌の患者」が……!?
午後の更新も、どうぞお見逃しなく!




