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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第446話:支配の終焉、管理総督の冷徹なる宣告と枢の最終執刀

ガストンくんの天才的なハッキングによって街の暴走を止めた枢先生たちでしたが、安堵したのも束の間、天の病室のメインモニターに映し出されたのは、冷徹な仮面を被った黒幕「管理総督」の姿でした。

総督は、議長がシステムから離脱した今、ルミナリアの全住民の健康データを消去し、都市そのものを機能停止に追い込むという最悪の「廃棄宣告」を下したのです。


「おやおや、管理総督さん。仮面の奥にあるあなたの呼吸は、自らが創り上げた冷酷な論理に縛られ、ひどく浅く、哀れなほどに強張っていますよ。リナさん、ギル、これが私たちの最後の往診です。命を数字としてしか見られない哀れな支配者の心を、往診鍼師としての私の白銀の鍼で、今すぐ完治させて差し上げましょう」


18時、火曜夕方の定期更新。支配の終焉、管理総督の冷徹なる宣告と枢の最終執刀。

白銀の聖鍼が、偽りの都の最上層で、支配の鎖を断ち切る最後の穿刺を敢行します。

 都市の暴走を示す黒赤の光が消え去り、ようやく元の白銀の静寂を取り戻したはずの天の病室に、突如として不気味な警告音が鳴り響いた。

 空間の中央に浮かび上がった巨大なメインモニターには、顔全体を黒い金属の仮面で覆い、冷徹な軍服を纏った男――中央医療議会の裏の支配者である「管理総督」のシルエットが映し出されていた。

 総督は、ベッドの脇に立つ最高議長アルバートの健在な姿を見下ろすと、感情の起伏が一切ない、機械的な合成音声で冷酷に告げた。


「最高議長アルバート、および地下の不法侵入者たちよ。タワーの暴走を止めた程度で、我が中央医療議会の管理を脱したと思うのは傲慢だ。議長が地下の術式によってシステムから『切断』された時点で、この都市ルミナリアは存在価値を失った。これより、全住民の健康データおよび生命維持コードを強制消去し、都市全体の『物理的廃棄』を執行する」


 画面の奥で、巨大なカウントダウンのタイマーが作動し、残り時間が「三百秒」から一秒ずつ削られ始めた。

 もしこのタイマーがゼロになれば、地上の富豪たちだけでなく、地下街で懸命に生きる何万人もの人々の医療ネットワークが遮断され、街全体が文字通りの死の都へと変貌してしまう。


「総督、正気か! この街にはまだ、救える命が何万人も生きているんだぞ!」


 アルバートがモニターに向かって声を枯らして叫んだが、総督は仮面の奥で小さく冷笑した。


「命とは、システムを維持するためのただの変数に過ぎん。管理できない変数は、排除するのが我が医療議会の絶対論理だ。残り時間は五分。届かぬ場所から、その無力さを噛み締めて消え去るがいい」


 プツンと音を立てて通信が切断され、病室には赤く明滅するカウントダウンの数字だけが虚しく残された。

誰もが絶望の淵に立たされ、リナは恐怖と極限の緊張のせいで、呼吸が過呼吸のように激しく乱れ、短槍を握る手から力が抜けて床に膝をつきかけていた。

ガストンやシオンもまた、あまりにも巨大なシステムの終わりを前に、心臓が破裂せんばかりの動悸に襲われ、顔面を蒼白にしている。

しかし、一人の誇り高き往診鍼師としてのプライドを抱く枢は、その激しい動悸に苦しむリナの前に静かに膝をつくと、往診鞄から月光のように美しく輝く、最高純度の純銀鍼を二本、抜き放った。


「そこまでです、リナさん。大都会の未来という重圧に、あなたの健やかな心経が押し潰されかけています。まずは呼吸を私に合わせなさい。どれほど冷徹な宣告が下されようとも、命の重さを数字で測る愚者たちの経絡を、私の鍼術がすべて調律してみせますから」


 枢の指先が、過度の恐怖で激しく波打つリナの手首の内側、最も繊細な経穴へと優しく触れた。


「手少陰心経の、神門しんもんを穿ちます。高ぶりすぎた心の門を穏やかに開き、その胸に渦巻く恐怖の邪気を一気に大地の底へと排泄アースしましょう」


 枢の銀鍼が、リナの手首の横紋上、小指側のくぼみにある神門へと滑らかに刺入された。

白銀の気が彼女の心経へと流れ込んだ瞬間、破裂寸前だったリナの心臓の鼓動が、まるで春の陽だまりのような穏やかな律動を取り戻していった。

さらに枢は、彼女の胸の真ん中、両乳頭を結んだ線上にある、精神の安定を司る究極の経穴へと、二の刺しを神速で滑らせた。


「続けて、任脈の壇中だんちゅうを刺激します。ここはすべての気の集まる場所であり、急激なストレスやパニックによる胸のつかえを瞬時に解消し、本来の勇気を取り戻させる特効穴です。さあ、大きく息を吸いなさい」


 壇中への穿刺が完了した次の瞬間、リナの口から「ふはぁっ!」と、胸を締め付けていた黒い邪気が一気に吐き出された。

彼女の瞳には、先ほどまでの恐怖の涙ではなく、いつもの天真爛漫で力強い黄金の光が完全に復活していた。


「……すごい、先生! 胸の苦しさが、一瞬で消えちゃった。身体の奥から、ものすごい力が湧き上がってくる!」


「ガストン、シオン、ギル、あなた方もその胸のつかえを私の気で解放します。さあ、残り時間は三分。総督のいる最上層の制御室へ、往診へと向かいましょう」


 枢の言葉に、全員が力強く頷いた。

 リナは短槍を構えて先頭を走り、ギルは漆黒の黒鍼を両手に構え、シオンの錬金砂の防壁を伴って、制御室へと続く最後の防衛隔壁へと突撃した。

ガストンの的確なナビゲートにより、リナの槍術とギルの黒鍼が完璧な連携を魅せ、立ち塞がる自動防衛ゴーレムたちを一瞬にして粉砕していく。

残り時間が三十秒をきったその瞬間、一行はついに、巨大なメインサーバーが鎮座する最上層の「統括制御室」の扉を力ずくでこじ開けた。


 部屋の中央には、仮面を被った管理総督が、最後の実行キーに指をかけたままで立ち尽くしていた。

 リナが槍を突き出し、ギルが彼を取り囲む中、枢は一歩一歩、確かな足取りで総督へと近づいていった。


「そこまでです、管理総督さん。あなたの指先がそのキーを押す前に、あなたのその歪みきった経絡を、私が治療させていただきます」


「愚かな。我が仮面の奥にある論理は、貴様らのような未開の鍼術などで動かすことはできん」


「おやおや、まだ気づきませんか。その仮面の奥で、あなたの呼吸は通常の三分の一以下の深さしかありません。数字で世界を支配しようとするあまり、あなた自身が最も重度な『管理の呪い』という名の精神失調に侵されているのですよ。その頑なな仮面ごと、今すぐ解放して差し上げましょう」


 枢の白銀の瞳がぎらりと輝いた瞬間、彼の右手から放たれた翡翠の銀鍼が、総督が反応するよりも早く、その首筋の最も重要な経穴へと吸い込まれるように刺入された。

一人の往診鍼師としての、命を救うための最終執刀。

白銀の気が総督の全身へと駆け巡り、ルミナリアの歴史を裏で操っていた冷徹な支配者の肉体に、本当の命の鼓動が激しく打ち鳴らされようとしていた。


 つづく。


 5月19日(火)18:00、支配の終焉。

 往診鍼師・枢。神門と壇中の術式でリナを救い、管理総督への最終執刀を敢行する。

 21時、火曜最後の更新は、第447話「白銀の夜明け、新しき医療の風と往診鞄の旅立ち」へと突入します。

 第446話「支配の終焉、管理総督の冷徹なる宣告と枢の最終執刀」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


 都市全体の物理的廃棄という、管理総督が突きつけた最悪のカウントダウン。

 残り時間わずか五分という絶体絶命の緊張感の中、恐怖を乗り越えて最後の防衛線を突破していくリナさんやギルさんたちの絆の力は、まさに物語のクライマックスに相応しい大迫力の展開となりました。


 そして何より、過度なプレッシャーとパニックによって心臓が破裂しかけていたリナさんを救うため、一人の往診鍼師として枢先生が繰り出した、精神を劇的に鎮静させる素晴らしい連携術式。

 今回は、東洋医学において自律神経の乱れを整え、心の不安をその場で綺麗に洗い流す、非常に実践的な二つの経穴ツボの流れを解説させていただきます。


 まず、手首の内側にある心経の要、神門しんもんを穿つことで、急激な恐怖によって暴走していた心臓の動悸を穏やかな律動へと戻し、頭部に上りきっていた焦燥感を一気にアース(排熱)しました。

さらに続けて、胸の真ん中にある任脈の壇中だんちゅうを刺激し、体内のすべての「気」が交差する大元の滞りを開放することで、パニックによる急激な過呼吸や胸のつかえを瞬時に解消し、リナさんが本来持っている天真爛漫な勇気と高い身体能力を最大限に引き出しました。

この神門と壇中の組み合わせは、現代における急なプレゼン前の緊張や、精神的なストレスによる息苦しさなどにも非常に効果的な素晴らしい経穴であり、組織の枠に縛られない往診鍼師として、銀鍼一本で仲間の心を救い上げる枢先生のプロとしての美学が、見事に描写された瞬間でしたね。


総督への最終執刀を敢行し、白銀の気が制御室を満たす中、ルミナリアの街の運命、そして歪んだ管理医療の結末はどのような夜明けを迎えるのでしょうか。


 次回の第447話は、本日【21:00】に、本日最後を締めくくる夜の定期更新予定です。

一日の終わりを迎える静かな夜のひとときに、新章「医療都市編」の感動のグランドフィナーレを、ぜひその目で見届けてください。

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