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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第44話:鋼鉄の街、歪んだ経絡

お読みいただきありがとうございます!


本日より、待望の**【第二章:帝国編】**がスタートします!

舞台は鉄と黒煙の国、ガレリア帝国。

魔法と機械が交差するこの地で、くるるが出会ったのは、最新医学という名の「拷問」でした。

魔導義手の暴走を、一本の銀鍼が止める。

1,900文字超でお送りする新章開幕、ぜひお楽しみください!

 巨大な蒸気機関が吐き出す黒煙が、鉛色の空をさらに重く塗り潰している。

 王国を後にしたくるるが辿り着いたのは、軍事国家ガレリア帝国の辺境都市、アイアンロック。ここは魔法と機械を融合させた「魔導科学」の拠点であり、王国の穏やかな風土とは対極にある、鉄と油の臭いが充満する街だった。


「……ひどい空気ですね。街全体の『気』が、すすと鉄粉で目詰まりを起こしている」

 枢は鼻先をハンカチで押さえ、不快そうに眉を潜めた。

「でも、枢さん! 見てください、あの建物! 全部鉄でできてるんですよ!」

 後ろを付いてくる弟子のリナは、初めて見る帝国の光景に目を輝かせているが、枢の翡翠眼ひすいがんは、その華やかな工業発展の裏に潜む「病」を鋭く捉えていた。


 街を行き交う人々は、どこか顔色が悪い。特に、工場の作業員らしき男たちは、一様に肩を落とし、呼吸が浅い。

「……リナ。あそこのベンチに座っている男性を見てごらんなさい」

「え? あの、腕が機械(義手)の人ですか?」


 枢が指差した先には、鈍く光る魔導義手を装着した初老の男が、苦痛に顔を歪めてうずくまっていた。周囲には、白衣を着た帝国の「技師」たちが集まり、何やら計測器を義手に当てて議論している。


「出力が安定しません! 魔導回路に過負荷がかかっています!」

調整チューニングを上げろ! この男の神経をさらに魔力に同調させるんだ!」

「う、ぐああああぁっ!!」

 男が絶叫する。義手から発せられる青白い放電が、彼の生身の肩を焼き、肉体を内側から蝕んでいるのが、枢にははっきりと見えた。


「……止めなさい。それは治療ではなく、ただの拷問です」

 枢の声が、喧騒の中に冷たく響いた。

 白衣の技師たちが一斉に振り返る。

「なんだお前は? 我々は帝国の最新医学に基づき、この義手の適合率を上げている最中だ。部外者は去れ!」


「最新医学、ですか。……その男の肩にある**『肩髃けんぐう』と、首の付け根の『肩井けんせい』**。そこに流れる生体エネルギーの出口を、あなたの機械が完全に塞いでいる。……無理に魔力を流せば、心臓が焼き切れますよ」


「……ケンセイ? ケングウだと? わけのわからん単語を並べるな。いいから下がっていろ、この『野蛮な王国の男』め!」

 技師が枢を突き飛ばそうとした瞬間だった。


 男が激しく痙攣し、口から泡を吹いて倒れ込んだ。義手の魔導回路が暴走し、周囲に火花が飛び散る。

「し、心停止だ! 蘇生魔導具を持ってこい!!」

 慌てふためく技師たちを押し退け、枢が一歩前に出た。


「……どきなさい。手遅れになる前に、私が『調整』します」

 枢は往診バッグから、一本の太い銀鍼――**『雷吸鍼らいきゅうしん』**を抜き放った。

「な、何をする! 鉄の棒で刺してどうするつもりだ!」


「……機械を治すのはあなたの領分でしょう。ですが、機械に繋がった『人間』を治すのは、私の領分です」

 枢は迷いなく、男の義手の接合部、そのすぐ上にある鎖骨の窪み――**『欠盆けつぼん』**へと銀鍼を深々と突き立てた。


 ここは全身の気の通り道であり、特に帝国特有の「外部魔力」が体内に侵入する際の要衝だ。

「ハッ!!」

 枢が鍼に翡翠の気を流し込んだ瞬間、義手から溢れていた青白い放電が、まるで吸い込まれるように銀鍼へと収束していった。


「……な、なんだと!? 暴走した魔力が……消えた!?」

「消したのではありません。……逆流したエネルギーを、脇の下の**『極泉きょくせん』**から外へ逃がしただけです。極泉は心経の起点。ここを開放しなければ、彼は内側から爆発していた」


 さらに枢は、男の背中を軽く叩き、肩甲骨の間にある**『肺兪はいゆ』**というツボを鋭く突いた。

「ゴホッ、ガハッ……!!」

 男が大きく咳き込み、濁った魔力の残滓を吐き出す。直後、止まっていた心臓が力強く拍動を再開した。


「……あ……あぁ……。体が……軽い……。あの、焼けるような痛みが……ない……」

 男が信じられないといった様子で、自分の機械の指を動かす。先ほどまでぎこちなかった義手の動きが、まるで生身の腕であるかのように滑らかに連動していた。


「……馬鹿な。我々が数ヶ月かけて調整できなかった同調率が……たった一本の針で、完璧に……?」

 呆然と立ち尽くす技師たち。枢は彼らを見向きもせず、鍼を丁寧に拭いながらリナに言った。


「リナ。見なさい。……ここでは、人が機械に合わせようとして、自分自身の体の声を忘れている。……これは『病』の一種です。しかも、王国のパンデミックより根が深い」


 枢の翡翠眼は、街のさらに奥。空を突く巨大な黒い塔から放たれる、あまりにも歪な「魔導磁場」を捉えていた。

 帝国の発展を支えるその力が、人々の経絡を少しずつ、だが確実に壊滅させている。


「……さて。どうやら帝国での最初の患者は、この『国家そのもの』になりそうですね」

 枢は不敵な笑みを浮かべ、鉄の街の喧騒へと歩み出した。


 聖鍼師vs魔導科学。

 異世界の最先端医学を、東洋の神技が真っ向から粉砕する。

 第二章「帝国編」、ここに開幕。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


第二章スタートです!

帝国編では、これまでの「病気」とはまた違った、近代的な問題に枢さんが挑みます。

今回治療に使った『極泉』や『欠盆』は、実際の鍼灸でも腕の痺れや心身の緊張を解くのに非常に重宝されるツボなんですよ。


これから枢さんがどうやって帝国を「往診」していくのか……。


「帝国の技師たちを黙らせる枢さん、相変わらず格好いい!」

「機械までツボで制御しちゃうのか(笑)」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークで応援をお願いします!新章も全力で駆け抜けます!


次回、第45話は本日の**【10:00】**に更新予定。

帝国軍の憲兵が現れ、枢の技が「危険視」される!?

本日も、どうぞお見逃しなく!

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